エルフの国のわたし#11
さて、朝ごはん!
「朝ごはんはしっかり食べてね!」って須藤さんもいつも言ってたし!
いっぱい食べて林檎の樹さんにたっくさん魔力をあげなくっちゃ!
「ジーン、朝ごはん食べるからテーブルと椅子出しておいて!」
さてさて、創造で出すとして、メニューは何にしようかな……
ここはジーンと二人っきりで他の誰にも見られない。
なら、いいよね?
ジーンが出してくれたテーブルの上に「創造!和定食二人前!」
ほかほかご飯に、熱々の豆腐とネギのお味噌汁。
塩鮭の焼いたのに、優しい黄色のだし巻き玉子。
お野菜はほうれん草のお浸し!
おかかはたっぷりで!
あとあと朝食にはこれがなきゃ!
味付海苔!
「さ、ジーンも座って座って!あったかいうちに食べよ?」
あ、ジーンはお箸は使えない!
「創造!スプーンとフォーク!」
よし、これでジーンも食べられるね。
「初めて見る食事だがあちらのものか?」
「そうだよっ、いただきますっ」
手を合わせるのもそこそこに急いで箸をとった。
うー、久しぶりのお米だぁ。
白い湯気の立つご飯をぱくり。
柔らかい噛み心地、ふんわりほのかな甘さが広がって……そんなつもりはなかったけど、じわりと涙がにじんで慌ててぎゅっと目をつぶった。
浮かんでくるのは所長さんや須藤さん、職員さん達。
きゃあきゃあにぎやかな小さい子組に、それを席に着かせようと注意しているお兄さんにお姉さん……。
施設の食堂でみんなで食べた美味しいご飯……。
今になればわかる。
施設はちゃんとみりあのおうちだった。
パパとママはいないけれど、それでもあそこはみりあを温かく包んでくれる大切な場所だった。
ご飯と懐かしさを噛みしめながら、目を開ければジーンがお椀のお味噌汁をスプーンですくって飲んでいた。
「どお?」
「これは不思議な味がするな」
美味しくなかったかな?
「色々あるから好きなのだけ食べていいよ?」
ミアも次!だし巻き玉子!
須藤さんはめんつゆとちょっぴりの牛乳をいれていつもふわふわのを作ってくれた。「手抜きバージョンだけどね」って笑ってたっけ。
手抜きでも美味しいからみりあは大好きだった。
ミアを見てジーンもだし巻き玉子に手をつけた。
一口食べて目を見張ってる。
「美味しい?」
「あぁ、とても」
よかった!今度は少し口元が笑っているし、気に入ってもらえたみたい。
鮭の塩焼きもお浸しも美味しい!
久しぶりの和食を夢中で食べた。
ご飯の最後の一口を海苔でくるっと巻いてぱくり。
パリパリの海苔が口の中で砕けて、んーこれこれ!ってカンジ!
ジーンは海苔だけをパリパリむしゃむしゃしてる。
「これは何でできている?」
「んと、海苔っていう海藻だよ?それにお醤油とかで味をつけてあるの」
「海藻か……なければ創造しておくか……」
創造ろうと思うほど美味しかったってことかな?
「ジーンは普段はどんなご飯を食べてるの?」
「ん?私か?私の食事はこのようなものだな」
手を一振りしてテーブルに出してくれたのは、薄焼きパンに林檎に何種類かの木の実……
「え!?ほ、他には!?」
「大体このような物だな、果実と木の実は時々種類を換えたりはするが」
何でそんなことを聞く?と不思議そうな顔をしてるけど、あれだけなんて、絶対絶対栄養が足りてないよっ。
ファッションだけじゃなくて、ご飯も古代のままだったよ!!
「そんなんじゃダメだよっ、ミアが色々創造ってあげるよっ!」
えっと、えっと、白いふかふかパンにうさぎのシチューにクリームシチューに、さっき気に入ってくれただし巻き玉子も!
あ、栄養つけるならお肉だよね。
カツに唐揚げにハンバーグ!
あーーっでも創造ってもしまっておくところがないっ!?
「ジーン、ここって冷蔵庫ある?食べ物を冷やしてとっておく箱!……あっ、ダメだ冷蔵庫あっても電気がないっっ!」
いい思いつきだと思ったのに、とっておけないんじゃ全然ダメじゃん!!
「レイゾウコとやらはわからぬが、時間停止、状態保存付きの異空間倉庫なら創造ってあるぞ?」
え、何それ?
「冷蔵庫のかわりになるの?」
「そこへ入れておけば、入れた瞬間のそのままでいつでも取り出せる」
「なにそれスゴイ!じゃあ、熱々の物は熱々のまま?一緒に冷たい物を入れたらどうなるの?」
「入れた物はお互いに干渉しあわぬようになっておる故、どちらもそのままだ」
ふぇー!
スゴイ、スゴイ!
じゃあ、遠慮せずバンバン創造っちゃおう!
さっき思いついたの以外には……
伸びないなら麺類もいけるよね!
塩ラーメンにおうどんにパスタ!
野菜もいるね!
野菜炒めにシーザーサラダにオニオンサラダにポテトサラダ!
小松菜のお浸しにカボチャの煮物も!
甘いオヤツもいるよ!
クッキーにキャンディにプリンにゼリーにアイスクリームも!
「どんどんしまっていってね!創造!創造!創造!」
思いつくままにテーブルにじゃんじゃんお料理を出していく。
それはひゅんひゅんとジーンが二の腕にはめている、太い腕輪に吸い込まれていった。
よし、これだけあれば三食食べてもずいぶん持つはず!
「いい?今度からミアの出したご飯も食べてね?」
「それは構わぬが何故このようなことをする?」
「なんでって、あれだけじゃ病気になっちゃうよ!?いい?健康を気遣うのも家族の役目なんだからね!?」
腰に手を当てて、ふんすっと怒ってみせた。
「家族……故に……そうか」
にこにこ笑顔のジーンはまたぎゅむぎゅむとミアをハグしてきた。
ジーンのほっぺがミアの頭にくっついてて、
うれしい、うれしい、うれしい、ってジーンの気持ちがそこから伝わってくるようで、ミアはまたしばらくジーンの頭を撫で続けた。




