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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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エルフの国のわたし#9

ミアの叫び声を聞き付けて、何人もの神官さんや隊員さん、アトラスさんがお部屋に飛び込んできた。


「リデル様?リデル様?大丈夫ですか!?」

アトラスさんがリデルの側でかがみこんで声をかけている。


「あのね、よくわかんないけどいきなり倒れちゃったの!」

リデルどっか具合悪かったのかな……


「いきなりですかっ?」

「うん、ミアがリデルに聖石を渡したらすぐにそのままバッターンって後ろへ倒れちゃったのっ」


「えっ?聖石?」

「うん、リデル握ったまま倒れちゃってる」


ミアに言われてアトラスさんはリデルの手に視線を移した。


「ヒイィッ」

いつも穏やかなアトラスさんからひきつった声が出た。

周りの隊員さんや神官さんからも似たような声が聞こえた。


みんな真っ青になってる。


「こ、こ、こ、これは本物なんです!?」

「偽物があるの?お土産にちょうどいいと思って聖域で拾ってきたんだよ?」


「お土産!?……と、とにかくリデル様を寝かせる場所まで運ばねば……どなたかこの、せ、聖石をリデル様から外してくださいっ」

アトラスさんがみんなを見回すけれど、みんな青い顔で首を横に振るばかり。


だれもやらないの?

ならミアが取ってあげる。


「よいしょっと」

リデルの指はしっかり聖石を掴んでるから、なかなか外れない。


「あれ?」

指を掴んで離そうとするのに、離れない。

リデル本当に気絶してるの?

ものすごい力だよ?


「ほほほ……(わたくし)がかわりましょう」


ティティさんがリデルの指を3本まとめて掴んで「お離しなさいっ」って一喝したらリデルの体がピクリとして、やっと聖石はリデルの手から離れた。

「ほほほ……リデルヴィオンにしては根性をみせたこと。この子にも王家とはなんたるかが身に付いてきたのかしら。聖石を床に落とさなかったのは後で誉めてあげましょう」


聖石はバタバタと走ってきた神官さんが持ってきた、銀のトレーに乗せられたふかふかの小さなクッション上に置かれた。


「ふふっ、そうするとすごく高い宝石みたい」


「ほほほ……今この国で一番高い宝石ですわ」


ん?

聞き間違いかなぁ?

ミアがきょとんとしていたら、アトラスさんが「現存している聖石は国宝指定されておりまして、国王陛下が常にはめておられる指輪になっております。確か小指の先ほどの大きさでしたでしょうか?」と自分の小指の先をミアに見せてくる。


ティティさんも「その通りですわ」と微笑んでる。


小指の先の大きさのが国宝?

クッションに乗っているお土産はミアの握りこぶしぐらい……

アトラスさんの指先とクッションの上と思わず二度見した。

えーと、えーと、こんな時は……


「……めえぇ~?」


「ほほほ……“国の宝”ですわ、ほほほ……」


誤魔化されてくれなかった!

ミアの一番得意なモノマネだったのに!

ミアがヤギママのマネするとじぃじもゲーテおばさんもパパもママも「上手、上手!」って誉めてくれたのに!


「うぅ……ん」

「リデル様!」


あ、リデルが気がついた!


「私は……なぜ床に……?」


「急に倒れられたと聞きました」


「うわあぁあ!そうだ!せ、聖石!見たことのない大きさの聖石が!!!!」

急にガバリと起き上がったリデルが聖石を握りしめていた手をわきわきさせている。

「ほほほ……すでにあちらへと移してましてよ」


ティティさんがトレイを持つ神官さんを示すと、クッションに置かれた聖石を見て「あぁ、そちらにありましたか」とほっとしている。

でも、次の瞬間顔をしかめた。


「あいたた……頭がズキズキする」




激しく打ち付けた後頭部のたんこぶをアトラスさんに冷やしてもらいながら、リデルか恨みがましそうにミアを見る。


「ミアのせいでひどい目にあった……」


「ごめんってば!だってミア聖石がそんなに高いモノだって知らなかったんだもん……」


「高いからではない。聖石が国宝なのは過去幾度も聖石が王家、そしてエルフの国を救ってきたからなのだ」


「ふぇ?」


「これまで国にもたらされた幾つかの聖石は全て初代王オリジン・クローロンがお持ちになった物なのですわ」

「そうだ、長い歴史の中で王の命を救い、民を疫病から救いと、一つ、また一つと聖石はその力を使い果たし今や最後の一つとなってしまったが……」


リデルはお土産の聖石をキラキラした瞳で見つめている。


「ほほほ、聖石は神官と近衛に見張りを任せて、そろそろお休みなさい。部屋へ案内させましょう」


リデルが起きてほっとしたからか、急に眠たくなってきた。

ピュイトと手を繋いでもらって、神官さんの後をついてゆく。


案内されたのは、派手さはないけど清潔なお部屋。

白い壁と家具の焦げ茶色。

扉や家具には草花の彫刻がしてある。


ミアの肩掛けカバンは先にお部屋にきていて、テーブルの上に置かれていた。

ベッドは一つ。

今日はピュイトと別々のお部屋みたい。


「明日の朝、迎えにきますね」


「うん、わかった!」


あ、そうそう!


「クリーン!と、ピュイト大好き!」


昨日はミアが大好きって言ったら、ビックリして真っ赤になってたピュイトだけど今日はほんのちょっとほっぺが赤くなっただけだった。


「クリーン、ありがとうございます。しっかり寝て下さいね。おやすみなさい」

「おやすみなさい」


寝間着に着替えて、ろうそくを吹き消してベッドに潜り込む。


テーブルに置いたトートバッグから聖石の淡い光が少しだけ漏れている。


……リデルにあげたお土産より大きな聖石を3つも持ってるのはヒミツにしておいた方がいいよね?

ついでに聖石は聖域で拾い放題なのもヒミツだよね?


創造(クリエイト)”一人で試してみようかな。

生命が造れちゃうんだもん、◯◯になーれ!っていう魔法ぐらいできるよね?

トートバッグはミアにしか持ち上げられないし開けられないようになればいいし、トートバッグから光が漏れなければ皆には知られないよね。

「んと、ミア限定仕様の光の漏れないトートバッグ!」

ベッドからトートバッグに向かって魔力を込める。

そしたら漏れてた光は見えなくなったから、きっとミアしか持てないし開けられなくなったはず!


安心したら、一気に眠気が襲ってきた。


……今日はいっぱい色んなことあったなぁ……


パパ、ママ、おやすみなさい……





お盆最終日ですね。

猛暑に耐えている皆様へ「お盆玉」として、一話だけですけど更新しましたのでお楽しみ下さい。


感想やブクマやいいね、評価など本当にいつもうれしく思っています。

のんびり更新ですがこれからもよろしくお願いします(о´∀`о)

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