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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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エルフの国のわたし#7

「おいしーーっ」

フォークでプスリと刺したほかほかの一口サイズのミートボール。

お野菜を裏ごしした緑色のソースがとろっとかかっていてとっても美味しい!

ふわふわ柔らかくてジューシーで最高!

豚肉よりもあっさり、でも鶏肉でもなさそう。

何のお肉かな?



お行儀悪いってわかってても、ついほっぺをぱんぱんにしたくなっちゃう。

お口いっぱいの美味しい、幸せ!

これはもうお耳のぴこぴこを止めるなんて無理!

ムリったらムリ!!



馬車から降りたら「取り急ぎ厨房に一番近い応接室にテーブルの準備を致しました」とお付きの神官さんが案内してくれた。

神殿はとっても広いから、いつもお客様が食事する食堂までは遠いんだって。

ミアご飯食べられるならお外でも何でもいいよ!


席に座ったら次々と美味しそうなお料理が運ばれてきた。

メインはミートボールで、パンはスライスされて軽く焼かれて出てきた。

バターがココットの器にたっぷり!

パンのざらざらの表面に薄く塗りつけて、トロリと溶けたところを、パクり!

「おいしーっ」

他にも茹でたお野菜にナッツとお塩ががかかってるのとか、何でできてるのかよくわからない水色のちょっと酸っぱいスープとか色々。


リデルがお話の続きをしたそうにこっちを見てるけど、先代神子様が「もう少しお待ちなさい」と止めてくれたから、ミアはどんどん食べられる。


「ほほ……幼子の食事風景というのは心が和みます」


お行儀悪くならないようにしてたつもりだけど、すごくお腹が空いてたからがっついちゃってたかな?

……笑われちゃった。


先代神子様は銀のゴブレットにお酒を注いでもらって飲んでいる。

ミア達に出されてるお料理が盛り付けられているのも銀のお皿。

縁に繊細な彫りで模様が入っている。

えっと銀の食器は、確か大切なお客様に出したりするんだっけ。


一緒に食事をしているピュイトはあんまり食べていない。

「お腹すいてないの?」って聞いたら、「日中心配事がありすぎて、まだ胃が痛むのですよ」とちょっぴり恨めしそうな目で見られた。


ミアのせいだった!


「こ、このミートボール美味しいねっ、何のお肉だろう?」

ミートボールにソースを絡ませながら尋ねると「そちらはネズミでございます」と先代神子様のお付きの人が答えてくれた。


「……ネズミ」


「え、エルフの国では一般的に食べられている肉なのですっ。今日の料理はソースなどかかっていてむしろお客様用として手がかかっていますし」

ピュイトが焦って説明してくれる。


「畑ネズミは庶民から貴族まで、幅広く食べられている魔獣だ。麦畑の害獣駆除も兼ねている。むろんエルフの国にはもっと美味い肉もたくさんあるがな」

リデルがちらりとミアを見た。

先代神子さまもお付きの人もじっとミアを見ている。


ミア、食べたことあるお肉の種類が1つ増えた!


「麦を食べてるネズミかぁ、道理で美味しいと思った!イオさんが山で捕ってきてくれたネズミはもっと固くってパサパサで食べにくかったもん」


ソースをたっぷりつけたミートボールをぱくりとしたミアがそう言ったら「ミアはどこででも食事で困ることはなさそうだな」とリデルが呆れたように言った。


「ほほほ……!愛し子様はほんに愛らしゅうこざいますね。このように愛らしいのであれば神殿で私がお育てしたかったですわ」


トクンっと心臓が一度揺れる。

“私が育てたかった”それはミアの中のみりあが泣きそうになるほどうれしい言葉。

あの頃のみりあは「いつか里親になる人はこんな人がいいな」みたいなことをいつも想像してた……。

ミアにはそんな想像よりも、もっともっとステキなパパとママができたけどねっ。


鏡を見なくてもほっぺが熱くなって朱くなってるのがわかる。

「あ、あの、そんな風に言ってもらえてうれしい……です。でもミアにはもう大好きなパパとママがいるから……今日、ジーンにもそう言って娘になるのを断ってきたから……」

もじもじしながらそう伝えると、お部屋にいた全員が固まった。

あれ?

夕方にもこんなことあったような……?



「断った……?え、何をです?」

「娘になれと言われたのか!?」


「なれって言うか、そもそも娘みたいだった?みたいな?」


「みたいだったみたい!?とはどういうことだ!?」



「ほほほ……、そろそろデザートに致しましょう。話はそれからに。幼い女の子が食べると聞いて(くりや)番達が張り切っていましたのよ? ほほほ……」


デザートあるんだ!

やったあ!


先代神子様が合図をするとすぐに運ばれてきた。


銀の器はひんやり。

外側は桃みたいで真ん中がいちじくみたいにつぶつぶしてる果物が半分に切られて入ってる。

器の底にうっすら赤い水が見える。


「ピィーグのシロップ煮でございます」


赤いお水の正体はシロップだった!

果物と甘いシロップの香りがふんわりとする。


「愛し子様は長旅でお疲れなのではと、のど越しのよいものを用意したようです」

お付きの神官さんが教えてくれる。


そういえば、ミートボールはフォークだけで食べられたし、他のお料理もナイフを使わないで食べられた。

スープも取っ手付きのカップに入ってたし。

酸っぱい食べ物は何だっけ……、あ、そうそう“ひろうかいふく”に良いって須藤さん言ってた。



そっと器に手を添えるとまだ冷たい。


ミアのことを考えて作ってくれたんだ……


「いただきます!」


せっかく冷やしてくれたんだもん、冷たいうちに食べなきゃ失礼になっちゃうよね。


柔らかい果肉をスプーンで一口にすくってぱくり。

じゅわりと口に溢れる果汁とシロップがひんやりと喉を通っていく。

「甘くて冷たくて、おいしっ」

ピュイトもデザートは完食。

よかった。


食後のお茶が配られてみんながミアに注目した。


「さぁ、満足できるだけ食べたであろう?今日のこと洗いざらい話してもらうぞ」



……なんか、ミア悪いことして取り調べ受けるみたいだよ?











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