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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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エルフの国のわたし#6

(まばた)きの音さえ聞こえそうな静けさを破ったのは、ミアのお腹だった。


きゅるるる……きゅう、きゅるるる……


突然鳴り出したお腹にみんなの視線が集まる。

もうっ!なんでこのタイミングで鳴っちゃうのっ。

お腹を押さえて恥ずかしいのも押さえようとするけど、お顔がかあっと熱くなる。


「話しは食事をしながら、(わたくし)が聞きましょう」


「大叔母様……」

リデルの呟きにリデル以外の人達はみんな(ひざまづ)いた。

いつの間にか近付いてきていたその人はおばあちゃんと言うには若いけど、おばさんっていう感じでもない。

何度か会ったことがある所長さんの奥さんと見た目は同じぐらいに見える。

背筋がピンッとしていて、上品な感じ。

リデルよりも薄い青い瞳、白に近い金髪を低い位置でゆったりと結い上げていて、薄紫でところどころ金色の刺繍が入った分厚い生地でできた重そうな服を着ている。


微笑みながらミアの前まで進んで来ると、すっと膝を折った。

「初めまして愛し子様。ご挨拶が遅れました、(わたくし)は先代神子のデセンテーティスと申します」


わ、えっとどうしよう、こんな年配の人に膝を付かせちゃった!

さらに驚いたのは、それを見たリデルもミアに向かって跪いた。


「あ、あのっ、立って!立って下さい!」


こんなの居心地悪くて挨拶どころじゃないよー。

ミアが焦って「立って!」と頼んだら「あら、では、失礼して」と立ち上がってくれた。

「食事を用意しております。まずはお腹を満たしてから、ゆっくりお話を伺いましょう」


先代神子様がそう言うと、後ろに控えてたお付きの神官さんみたいな人が少し遠くにある馬車を手のひらで示した。

「あちらで移動いたします」


「あのっ、ピュイトも! ミア、ピュイトと一緒がいい!」

ピュイトの袖をぎゅっと握って離さないぞ、と気合いを入れる。

ピュイトは一瞬ぎょっとした顔をしたけど「私からもお願い致します」と頼んでくれた。

「よろしいですよ、その者は以前こちらの神殿にいたようですね、愛し子様の保護者と聞いております。何があったのか心配でしょうから夕食も共に……」


よかった!ピュイトも一緒!


「大叔母様、私もっ、私もご一緒させて下さいっ」

立ち上がったリデルもミアと一緒に来るって頼んでる。

「リデルヴィオンも?」

「“オリジン”と聞いて、王族の私が話を聞かない訳にはいきません」

ジーンとエルフの王族は何か関係があるのかな?

それを聞いた先代神子様は、少し考えるそぶりを見せたけれど、ふっと浅く息を吐くと「いいでしょう、ならば陛下への説明はあなたが責任を持ってするように」とリデルに許可を出した。



馬車は向かい合わせに3人ずつ、座席があって先代神子様は一人で座って、ミアを真ん中にしてピュイトとリデルで座った。


馬車はゆっくりと走りだす。

ここはどこなんだろう、馬車にはガラス窓があってそこから手入れされた木々やお花が見えた。

どこかの公園?

どれくらいで神殿に着くのかな?



「ジーンはね、『神殿の祈りの間へ転移させる』って言ってたのに、目を開けたらお外だったんだよ?」

小っちゃい声でピュイトに話しかける。


「ほほほ……間違いなくあそこが“祈りの間”ですわ」

「お外なのに?」

「神殿はあの神柱を中心にぐるりと取り囲むように建てられているのです。あそこは最も神聖な場所、普段は立ち入りを禁止されています」

ピュイトは先代神子様が一緒で少し緊張しているみたいだけど、いつもみたいに教えてくれる。


ここ、もう神殿の中なんだ!

馬車で移動しなくちゃいけないぐらい広い中庭ってこと?

「そうなんだ、ジーン失敗したのかと思った」


「……ミア、その“ジーン”とは、もしかしなくても“オリジン”のことなのか?」

「うん、そうだよ?名前がないって言うからミアがつけてあげたの!」


えへへ、ミアいい名前つけてあげたんだよ!って得意顔でみんなを見たら、みんなは目を瞑って黙ってしまった。

先代神子様は微笑みながら困ってるお顔?

ピュイトは顔色が悪くなってる。

リデルはぐぬぬってしてる。


あれれ?ミア何かおかしいこと言った???


「“ジーン”ってお名前、つけちゃいけない名前だった?」

「いえ、そういう訳ではありませんわ」

「何と言うか、その……」


「“オリジン・クローロン”は我がエルフ神聖国の初代王だ。他のエルフより長寿ではあったが、死亡した記述がきちんと歴史書に残っている」

リデルは真っ直ぐ前を向いたまま、きっぱりと言った。


「ふぇっ!?」


えっと、えっと、えっと、それってどういうこと???


ミアの頭の中が“?”でいっぱいになった。


「じゃあ、ミアが会っていたのは“オリジン”じゃないってこと?」


「歴史書を信じるならば、そういうことになる」


“オリジン”じゃないなら、あの人は誰?ってことになるよね?

ん?でもジーンが嘘つく理由もないし、お話してくれたことは本当っぽかったよね……

ミアが魂交換でこっちに来たことも知ってたし!


ってことは、やっぱりジーンは“オリジン”だよ!


じゃあ、歴史書の人はだぁれ?

悩んでいたら、馬車がゆっくりと止まった。


「さぁ、話しは後にして急ぎましょう」

「はいっ!」


うん、それには大賛成!

だってすっごく早い時間に軽く朝ごはんを食べただけなんだもの。

さっきから鳴らないようにこっそりお腹に力を入れ続けてて、さらにお腹が減っちゃった!


神殿のごはん、どんなのかなぁ。

今なら大人と同じぐらい食べられそうな気がする!








お久しぶりです。

1ヶ月ぶりの更新です。

待っていてくださった読者様、五体投地でお礼申し上げます。


暑さが厳しいですのでお互いに熱中症に気をつけていきましょう。

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