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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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エルフの国のわたし#3

『今後は一切の神々の手出しを拒否します!!!』


「その瞬間、世界の震えは止まった。女神様は宣言し世界はそれを(ことわり)とした。これでセラスティアに“一切の神々の手出し”はできなくなった。……この意味がわかるかい?」

聞かれてすぐにはわからなくて、首をふるふると横に振った。

「すなわちそれは、女神様さえもこの世界に干渉できなくなってしまった、つまりもう何もすることができなくなってしまったということだ」


え?え?え?

この世界を造ったのは女神様なのに?

でもまだ造ったのは動物だけなんでしょ?

それにみりあは?

魂の交換でこっちにくるのは他の神様の“かんしょう”にはならないの?


色々わからなくて困った顔をしていたら、ふふっと笑われてしまう。


「私の娘は思ったことが顔に出やすいのだな。姉女神様との魂交換はそれよりも遥か前に約束されていたことなのだ、神々の約束というものは前の物がより有効であるらしい。元は違う世界の魂ゆえにそなたに関しては理も少し緩むらしい」


「……ミアは本当にあなたの娘なの?」

「種族としては唯一無二の同族と言えるだろう」

「しゅぞくとしては?」

「先ほども言った通り女神様は動物までしかお造りになられていなかったのだ……」

「じゃあ、エルフや普人は?あと獣人さんやドワーフなんかの種族もいるってミア、ピュイトに習ったよ」


「私だよ。霊人(エルフ)も普人も獣人も“人族”はみな私が造ったのだ」


びっくりして思わず毛皮の上で膝立ちになる。


「え、え?ウソ!ピュイトから習った創世記には女神様は、まず初めに1人……、そして、それを真似して他の人族を…………って……」

言いながら、はっと気がつく。


「……あなたがその最初の1人?」


そう言うと目の前の美しい(ひと)は深く頷き穏やかに笑った。

「そうだ。私が女神様に造られた最初の“人”。私が造り出した(のち)の人々には“オリジン”と呼ばれることになった」


膝立ちのまま、ふわりと長い腕を回して抱きしめられる。


「ずっと待っていた……私と同じ存在というものを」


ミアの小さな肩に顔を埋めて小さく吐き出されたその言葉はとても切ないもので、伝わってくる温もりと気持ちがすっとミアの中に溶け込んでいくのがわかった。

さっき会ったばかりとか色んなことはどうでもよくなって、あぁ、この人はミアをずっとずっと待っていたのだと、そのことが心にすとんと納まった。



「“オリジン”があなたの名前?」

「いや、そう呼ばれるようになっただけということであって、私の名ではない」

「じゃあ、名前を教えて?」

「一人でいるのに名は必要ではなかった」

「……そっか」


「女神様が創造できなくなったので、私が“人”を造った……」


ミアが毛皮にぺたんと座りこむのを待ってお話は続いた。


ーー手出しはできぬが神託として言葉を伝えることは何とかできるようであった。

私は女神様の意を汲んで新たなる生命を創造した。

初めは自分を真似てエルフ達を造った。

魔素の影響を受け、魔素を消費してくれる者として。

私を参考に造ったので魔法を使え、そして他の人族に比べて長寿となった。

だが、長寿ゆえにあまり数が増えなかった。

それを補う為、次に魔素の影響を受けない普人を。

普人にはない強靭さを持つ獣人を。

そして、また魔素の影響を受けた地の恵みを扱うことのできるドワーフを……

そのように次々と足りぬところを補う為に色々な人族を造っていったのだ。


そうして魔素の調整をする創世樹と共に永い時を生きてきたのだ。


「他の交換された魂は皆、すでにある器に入れられたが、そなただけは何故か女神様が手ずからお造りになられた。死ぬ前に娘に会える幸運を得た」

「し、死んじゃうの!?」

ウソ!そんな風には見えないのに!

ミアの慌てぶりがおかしかったのか、口許をにんまりさせて「そのように慌てずとも今すぐ死ぬわけではないよ。だが、悠久ともいえる時を過ごしてきた……私は神に近い存在ではあるが神ではない。いつかは死を迎える存在だ」と言った。

「自分と同じ種族は造ろうと思わなかったの?」

「女神様も私も、自分より同等以上のモノは造れないのだよ。造れるモノは自分より劣るモノだ」

……そうなんだ。

だから、ずっと一人でいたのか。


「そしてそれはそなたも同じこと。創造(クリエイト)では造れぬモノがある」

創造(クリエイト)?」

「そなたが女神様からもらった恩恵のことだ。無から万物を造り出せる能力だ。と、いってもこの世界の発展に相応しくないものは造り出せぬと聞いているがな」

「ミアがそれを使えるの?」

「あぁ、そうだ。それこそが私と唯一同じ種族の証」

ここへ入った時と同じように、ミアのおでこに指先をちょんと軽く触れさせると「ふむ、あちらには随分と映りのよい物があるのだな」と今度はミアの手を取った。

手のひらを上にして下に彼の手が支えるように添えられる。

「魔力の使い方は習ったのであろう?ここに球根があると想像して魔力を集中させるのだ。そして、そなたが思う欲しい物を思い浮かべてごらん。鏡が欲しいのであろう?」


言われた通り手のひらに魔力を集中させてみる。


「初めは目を瞑ると想像しやすい」

まぶたの裏にミアが欲しい鏡を思い出す。

施設のお姉さんが持ってた100円SHOPの鏡はお姫様が持ってるみたいなやつだった。ピンクのバラがたくさんついてる形のフレームで手で持つところを反対に折り曲げると置いても使える、カワイイし便利な鏡だったな。

手のひらがぼんやりと温かくなって「よし、そのまま」と声が聞こえて手のひらにそれまでなかった重さを感じた。


目を開けると手鏡があった。

記憶にあるそれよりもずっしりとしていて鏡の周りがプラスチックじゃなくて薄い桃色の石?つやつやな何かに変わっているけれどデザインは同じ。


覗き込むとミアの顔がはっきりと映る。



うわぁー

うわぁー

うわぁー

やっぱりミアのお顔、すんごくかわいい……。





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