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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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エルフとわたし#40

グリフェルダさんが袋から取り出した物は、茶色くって丸くて上が少し尖ってて……


「球根?」

「はい、そうです。最初なのでチューリップの球根をご用意しました」


「懐かしいな。私も最初の訓練はチューリップの球根だった」

「ふふ、訓練として定番ですよね」

リデルもアトラスさんもやったことあるみたい。


「ミア様は一度にたくさん魔力を使うのは多分、その、もうできているかと思うのですが、そういう方は逆に少しでいいところを無駄に大きな力を出してしまう傾向がありますので、普通の方とは意味合いが少し異なりますが……」

そう言って、ミアの手に球根を渡してくれる。

「意味が違うの?」

「ミア様はとても魔力量が多い様に見受けられます。林檎の樹を一瞬であれほど大きくできるのですから」


ミア魔力多いの?


「どうしたらいいの?」

「花を咲かせてみて下さい」

林檎の樹さんと同じようにお願いすればいいのかな?

よーしっ、がんばる!

むんっとお腹に力を入れて。

チューリップのお花、咲いて!!

球根に向かって、えいやっと気持ちをぶつけてみる。


そしたら尖った先ッちょから、ぴょこっと緑の芽が顔を出して、にょきにょきと茎を伸ばしうねうねの葉っぱもしっかり二枚、蕾ができてみるみるうちに花が咲いた。

真っ白なチューリップだ。


「予想通り、簡単にお出来になりましたね」


すごい、あっという間に花が咲いちゃった。

みりあが園芸委員だった時、入学式に飾るために鉢植えしたのは当日にお花が咲いてるように蕾がまだ固いのは日向に。咲きすぎちゃいそうなのは日陰に置いたり大変だったのに。


「ですが、やはり無駄にたくさん魔力を使っておられますね。エルフは種族的に植物魔法が得意なので、一つ花を咲かせるぐらいならば少ない魔力で大丈夫です」


咲いた花を引き取って、次の球根を渡しながらグリフェルダさんは「花を咲かせるまではできましたので、次は蕾のままで止めてみて下さい」と言った。

「うん、がんばる!」


蕾のまま~蕾のまま~蕾のままだよっ!

えいやっとまた球根に念を込めると、ぴょこんと芽を出したチューリップはあっという間に花を咲かせた。

今度は黄色いチューリップ。


「花、咲いちゃった……」

「まだ始めたばかりですので、だんだんと慣れていきましょう」

「次は何色の花が咲くであろうな?」

ちょっと意地悪なリデルがいる。

「次は蕾で止めてみせるもんっ」


蕾~蕾~つ・ぼ・み~っっ!

ミア、ものすっごくお腹に力を入れて蕾だけをイメージしてるのに何故か次々とお花が咲いていく。



床に置かれた籠はどんどんと華やかになっていく。

赤、白、黄色、ピンクに紫。

変わった緑色のチューリップもある。

お花の形も普通のもあれば、フリルみたいになってるかわいいのや、花びらがたくさんある豪華なのもある。

なんだかチューリップの見本市みたい。


「花屋が開けるな?」

「リデル様っ」

アトラスさんがリデルを軽く睨んでくれるけど、リデルのニヤニヤは止まらない。


「こうするのだ」

グリフェフルダさんの手からひょいっと球根を奪って左手に乗せるとリデルは「まずは芽」と静かに言った。

尖った先から2センチくらいのかわいい芽が出る。

「茎が伸びて葉が育つ」

するすると茎と葉が伸びる。


「そして蕾」

伸びた茎の先端に固く結んだ蕾が付いた。

そしてチューリップは生長が止まった。


「蕾のまま……」


ふふんっとリデルがどや顔だ。

「ミアは力みすぎなんだ」


ミア一生懸命やってるのに、リデルと何が違うんだろう?

新しく渡してもらった球根を見て、ちょっぴり悲しくなる。


ガタンと揺れて馬車が止まる。

「休憩地点に着いたようです。続きは食事の後にいたしましょう」

球根を一度グリフェルダさんに返す。


「ミア、食事ができるのを待ってる間に、これを植えましょう」

ピュイトが色とりどりのチューリップの入った籠を持ち上げた。


土を掘るための道具がないか隊員さんに尋ねたら「それなら自分が」と魔法で球根の入る穴をいくつも開けてくれた。

「ちゃんと根付くかな?」

みりあが植えたのはまだ寒くなる前に花の咲いてない状態の球根だった。

お花が咲いてるのを植えても、ちゃんと根を張るか心配だ。

ミアのつぶやきを聞いた隊員さんがふふっと笑った。

「心配はいらないですよ。植えたあとにちゃんと育つように魔法をかけておきますから」

そんなことも魔法でできるんだ。

なら安心!


「ありがとう!」


広場の隅が色とりどりのチューリップでいきなり華やかになった。

一緒に土をかぶせてくれたピュイトの手と自分の手をクリーンする。

「失敗しちゃったけどキレイだね」

「えぇ、きっと後からここを使う人達もそう思うことでしょう」


「それならよかった」とピュイトを見上げて笑ったら、ピュイトは少し寂しそうに笑った。

「私にも魔法が使えれば、ミアに教えてあげられたのですが……」

「ピュイトには魔法以外のこと、たっくさん教えてもらったよ?」

学校の先生だって、体育だけ教える先生もいたし、音楽だってそうだった。

施設の職員さんだって、みんな自分の得意なことをみりあに教えてくれた。

「ピュイトは“女神様の専門家”でしょ?それにこっち(・・・)のことを聞けるのはピュイトだけだよ」

最後のところは小声でそぉっと言う。

大きな手が伸びてゆっくり頭を撫でられる。

「これからも勉強続けましょうね」

「はーい、先生!」


「食事の支度ができましたよーっ」


アトラスさんが呼んでくれた方からいい匂いが漂ってきた。





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