エルフとわたし#34
読者様からご指摘いただきましたので、みりあが所長さんとしていたゲームを伏せ字に直しました。
他にも不安に思わせてしまった方がいたらごめんなさい(23.2.19.16:30)
さっき書き上げた便箋を丁寧に折り畳んで封筒へ入れる。王都でのお買い物は楽しかったな。
缶に入れてもらったキャンディは宿に着いたら「お二人とも頑張っていらっしゃるので御褒美ですな」と、ミアに1つ、もう1つはリデルに渡された。
ミアはすっごくうれしかったけど、リデルは顔を少し赤くして受け取っていた。
ミアがまだ移動中だからお返事はもらえないけれど、最初に送った手紙は無事にパパとママに届いたとウェルツティン先生からシェファフルトさんに届いた伝言鳥でわかった。
ウェルツティン先生は定期的にママの治療の様子を教えてくれる。
今はママに血を増やすお薬を飲んでもらうのと栄養をとってもらって、体力が回復したら魔力を使った治療をするっていってた。
山のおうちの畑の横に薬草畑を作って血を増やす為の薬草も育ててるんだって。
少し顔色が良くなってきています。と伝言鳥がウェルツティン先生の声で言っててミアはすごくうれしくなった。
よかった!
ママ、ちょっとずつでも良くなってる!!
「ピュイト、ミアお手紙のぺったんこしてもらいにアトラスさんのところへ行ってくる」
宿の人に頼んで運んでもらったもうひとつの机に向かって書き物をしているピュイトに声をかける。
「わかりました。付いていかなくて大丈夫ですか?」
アトラスさんとリデルのお部屋は2つ先なだけだよ?
「うん、大丈夫!」
ピュイトは王都で大司教様に会った時に今までの研究を本に纏めて欲しいって言われたんだって!
「それってすごいことだよね!?」ってピュイトに言ったら「ミアから聞いた女神様の話のおかげです」と、少し照れ笑いした。
だから、ヒマになると王都で買った大量の紙に何やら書き付けて、研究を本にする為の準備をしてる。
雨で移動できないこの5日間は原稿が捗ったに違いない。
廊下へ出ると見張りの隊員さんが2人立っている。いつも「どちらへ?」って聞いてくるから最近はミアから先に行き先を教えてあげる。
「リデルのお部屋に行くの」
そういうとたいがい1人がミアの行くところへ付いてくる。
コンコンと隊員さんがリデルのお部屋のドアをノックしてくれる。
「ミア様がいらっしゃいました」
「どうぞ」
中からアトラスさんの声がする。
「お邪魔しまーす」
お部屋はミア達のところと同じ。
リデルとアトラスさんは小さなテーブルでお茶を飲んでいた。
「どうされました?」
「あのね、お手紙に封をするの貸して欲しいの」
持ってきた手紙を差し出すとアトラスさんは「あぁ!」と立ち上がって準備をしてくれた。
蝋燭に火をつけて、赤茶のクレヨンみたいなのを炙ると先の方からとろりと溶けてくる。
それを封筒の上に垂らして、金属でできたスタンプみたいなのを上から押し付けると、固まる前のとろとろがむにっと押されてスタンプの模様がくっきりとついた。
冷えてしまえばとろとろはカチカチになって、ちゃんと封筒をくっつけてくれる。
最初の手紙を書いた時、糊もテープもないからどうしようかと焦っちゃった。
そしたらアトラスさんが自分のを貸してくれた。
リデルが自分のでもいいぞって言ってくれたけど、リデルのは王子様の特別だから他の人に貸したらダメなんだって。
このスタンプは印鑑みたいな役割もあるみたい。
アトラスさんが「自分なら特に地位もないので差し支えありませんので」ってぺったんこをしてくれた。
「国へ着いたら、ミア専用のを作らせよう」とリデルは言ってくれた。
できた手紙はアトラスさんが「出しておきますね」と、隊員さんに渡してくれた。
「手紙を書き終わったらミアは何をするんだ?」
リデルが片方だけ頬杖をつきながら気だるそうにしている。
「特にやることはないよ?」
「私はもうここは飽きた。つまらぬ、ヒマすぎる」
はぁー、と長いため息をついてリデルは目を閉じた。
「いつ止むのかわからないのが、また困りものですねぇ」
アトラスさんも窓の外に目をやってふぅと短いため息をついた。
ミアも毎日退屈。
ここにはテレビも本も何にもないんだもん。
あ!
そうだ!
レターセットの中のあの紙!
「退屈しのぎあるかも!アトラスさん、ミアが市場で買ってもらった白黒の乾燥豆はまだある?」
「えぇ、野営が少なかったのでまだあるはずです」
「じゃあね、それをね64個持ってきて欲しいの」
「64個ですか?」
「そう!ぴったり64個いるの!」
「わかりました、少しお待ち下さいね」
「なんだ、何をするつもりだ?」
「すぐわかるよ。もう1つ要るものがあるからミアお部屋からとってくるね」
そういえば、あの日も雨だったっけ。
みりあが覚えたてのオセ◯を所長さんと真剣勝負していたら、外で遊べないからってお部屋の中でボール遊びを始めちゃった男の子達がいた。
手元が狂ったボールが緑のボードにバンって勢いよく当たって、並べてあったオセ◯のコマが弾けとんだ。
一瞬スローモーションみたいに白と黒のコマがみりあの頭の上より高く上がってクルクルしながら落ちて行くのが見えた。
ボールはボードの上で跳ねた後、床に落ちて部屋の隅まで転がっていった。オセ◯のコマも辺りに散らばってしまって勝負どころじゃなくなった。
男の子達は所長さんに叱られている。
周りの子達が「大丈夫だった?」とコマを手分けして拾ってくれた。
でも、足りなかった。
皆でいくら探しても、何回数えても63枚しかなくてせっかく覚えたオセ◯がもうできないのかと、みりあは切なくなった。
所長さんは「厚紙を白と黒に塗れば大丈夫」と言ってくれた。
みんなは「そのうちどこかからでてくるって」と慰めてくれた。
夜、お風呂の時間になって服をぬいだら、カシャンと音がしてオセ◯のコマが床に転がった。
みりあのパーカーのフードから落ちたみたい。
脱衣場にいた皆が「そんなところに!」って大笑いだった。
オセ◯のコマは全部で64枚。
はっきりと覚えていたのはこのせいだ。
久しぶりのオセ◯楽しみ!
オセ◯もド定番あるあるですが、出したかった!ww
ごく普通の10才だったみりあができておかしくない異世界知識って、やっぱり少ない!ww
オセ◯とリバーシ、悩みましたが、施設にあったのはオセ◯ということでみりあちゃんにはオセ◯と言わせています。




