表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

102/214

エルフとわたし#22

「こうしていてもヒマですし、しばらく休んでいたのでおさらいをしましょうか?」

気詰まりな雰囲気を察してくれたのか、ピュイトが勉強会のおさらいを提案してくれた。ママの具合が悪かったからなかなか教会まで行けなかったもんね。


「やるっ!」


ピュイトが指で宙に楕円を描く。


「大陸の形は覚えましたね?では真ん中にあるのは何ですか?」


「魔素山!」


ミアが住んでるのは普人の国の辺境。その国がある大陸は大雑把にいうと楕円形。その真ん中には“魔素山”っていうすっごく大きな山があるんだって。初めて聞いた時は「阿蘇山?」って聞き返しちゃった。


魔素山の麓には広大な樹海が四方に広がっているっていうのも習った。


そこは阿蘇山じゃなくて富士山みたいだなって思った。


その山を中心にして、ぐるっと色々な国が取り囲んでる。


「よろしい。では、あなたがいるこの国の名前は?」


「ロドクルーン王国」

「では、順番は気にしなくていいのでその他の国名を」


「えっと、クリューソス、エリュトロン、フラーウム、アートルム……」

指を折りながら覚えている国の名前を挙げていく。

国は全部で26ぐらいある。

ハッキリしてないのは小国家群っていうのがあって、都市なのか国なのか曖昧なところもあるんだって。日本の都道府県より少ないけど、聞きなれない響きばっかりだから覚えるのはなかなか大変だった。

「えっと、最後は……ペ?ベ?ナフシュ?」

()ナフシュですよ。最後は怪しかったですが、まぁ合格でしょう」

「やった!」

思わずガッツポーズが出ちゃう。


「スゴイです……」

小さな呟きが聞こえたので顔を向けると、アトラスさんが目を丸くしていた。

「貴族でも無いのに国名が暗唱できるなどミア様はすごいのですね」と言う。

「私の教え子はとても優秀なのです」

何故かピュイトが自慢気だ。


「貴族じゃない一般の人は国名が言えないの?」

ミアがきょとんと聞き返すと、アトラスさんもミアが知らないのが意外だったのかきょとんとしながら、

「普通は全部など覚えませんね、どうでしょう、自分のいる国とその両隣ぐらいでしょうか?」

2人できょとんきょとんしながら会話は続く。

「それじゃ、どこそこの何々は美味しいんだよ。って人に教えたりする時に困らない?」

「噂話程度でしたら、北にあるドワーフの国、とか、南の獣人の国とかと呼んでおりますね」

ピュイトもうんうんと頷いている。

そうなの!?

じゃあ、何でミア全部覚えさせられたの?

ピュイトはミアを“ぐろーばるなキャリアウーマン”とかにしたいのかな!?

ちらりとピュイトを見るけど涼しい顔をしてる。

もぉ、都道府県みたいに絶対覚えなきゃいけないのかと思ってたのに!


景色を見て気分でも変えようかな。


あれ、アイツ、何か顔色悪くない?

さっきからずっと黙ったままだし、酔っちゃった?

「ねぇ、具合悪いの?」

ミアの言葉にアトラスさんがアイツの顔を覗き込む。

「リデル様、大丈夫でございますか?馬車を止めてもらいましょうか?」

「大事ない。旅程が狂う、このままでよい」

そうは言うけど、声に力がない。

アトラスさんがお水を勧めても飲まないし。

ミア達がこっち側座っちゃったから酔っちゃったのかな?

席を交換するって言ったら素直に変わるかな?

……酔ってないって言い張る気がする……。


えっと、確か車酔いをした時は、ガムを噛んだり飴を舐めると良いって聞いたっけ。

どうしよ、ここにはガムも飴もない。


あ、でも、あれがある!

カイ兄ちゃんにもらった干し肉!

カバンを開けて、包みを取り出す。

ガムじゃないけど、噛むのは同じだよね。


手をクリーンしてから、中身を一つ摘まんで差し出す。


「はい、これ食べなよ」

「は?」

「なにか口に入れてると酔いがマシになるんだって。カイ兄ちゃん家の干し肉美味しいよ?」

でも、なかなか受け取ろうとしないから、立ってアイツの前まで行って口元にぐりぐりと押し付けてやる。

「な、ちょっ、ま、」

“ま”で、口が開いたタイミングで捩じ込むことに成功した。

「まふぇと……っ」

ミアも1つ口に放り込む。

「ねっ、美味しいでしょ?」


「アトラスさんもどうぞ!」

包みを広げて差し出す。

「お気遣いありがとうございます」と1つ取って口に入れてくれた。

ピュイトにもあげる。


じんわり塩味が口の中に広がって、ハンナおばさんオリジナルのハーブブレンドが肉の臭みを消して、いい香りをつけている。


「これはなかなかのお味ですね!」

アトラスさんも美味しいって思ってくれてる!

「んふふ、でしょー!」

ミアが作ったんじゃないけど、誉められるとうれしくなっちゃう。

ニコニコしながら、もぐもぐしていたら「吐き出す訳にもいくまい。……悪くはないし、食べてやろう」と、手を差し出された。

すごい。

こんなにも素直じゃない人は初めて見た。

いっそ清々しさまで感じてきたよ。

「好きなだけどうぞ?」

包みごとアトラスさんへ渡せば、アイツは次々と包みから取り出して食べ始めた。


これは、お腹が空いてた?

そういえば、夕飯は食べずに林檎だけで、朝もミアとケンカしてたから食べてない?

どんどんなくなる干し肉にちょっぴり未練を感じる。


ちらりとアトラスさんを見れば、苦笑しながら会釈をされた。

「なくなった分は次の街で何か代わりの物、お菓子でもお持ちしますので……」と、言ってくれた。


ミア、干し肉も好きだけど、お菓子も大好き!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ