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転生エルフとパパとママと林檎の樹  作者: まうまう


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エルフとわたし#21

山猿?


みりあの時もミアになってからも誉め言葉は必ず「お行儀がいいね」の私が山猿な訳ないもんっ!


「そういうアンタは“お座り”もできない駄犬のくせにっ!」

ビシッと指をさしてハッキリ周りに聞こえるように大きな声で言ってやる。


「ぷっ…」アイツの横でお説教を始めようとしたシェファフルトさんが吹き出してる。


「なっ!」


「ここにいる隊員さん達にアンタがどうやって“お座り”ができるようになったか教えてあげようか!?」


「な、なっ!?」


「大体、食べ物を粗末にするなんて罰が当たるんだからね!?アンタ、お父さんとお母さんに教えてもらわなかったの!?」


そう言ってやったら、アイツはそれまでの焦りと怒りの表情をスッと消した。

つかつかとミアに近寄ってきたソイツは、目が合ったら凍えてしまいそうなアイスブルーの瞳でミアを見下ろした。

「な、何よ!?」

「お前ごときに……何がわかる……?」

そう言ってくるりと背を向けて行ってしまった。

もっと文句を言われると思ったのに……。


「お待ち下さい、リデル様…!」

アトラスさんが後を追っていく。


シェファフルトさんが席に戻ってきて、グリフェルダさんも後ろへと控えた。「さ、早くしないと出発が遅れてしまいます。残りをいただきましょう」そう言われて食事を再開した。

食べ始めたけど、さっきまでみたいに会話は弾まなくて皆黙ったままだ。


何なの?アイツ。

山猿なんて初めて言われた!

ミア可愛いのに!

昨日だってグリフェルダさん、ミアのこと美少女だって言ってくれたし!

でも時々自分でも忘れちゃうけど!


さっきの事を思い出してむかむかしながら、茹で玉子にがぷっとかぶりつく。

ん、塩加減丁度いい。


怒るのはミアの方じゃない?

悪口言われて、玉子を投げつけられてっ!

なのに、何であんな()で見られなきゃいけないの!?

……ああいう()、見たことある。

どこでだっけ?


あ、このチーズ、ダズさんのところのより柔らかい。


怒ってるより、憎らしい。

悲しいより、あきらめと寂しさ?

そんな()




ふいに、頭の中にみりあの記憶が蘇る。


公園で友達を迎えにくるお母さん。

町中で仲良く歩いている親子。

里親が決まって、うれしそうに手を引かれて施設を出ていく年下の子。


もやもやとした気持ちが溢れて堪らなかった時、鏡を見ると映っていたのはあの()だった。


でも何でアイツがそんな()をするの?


ごくんと最後の一口を飲み込んで、気がついた。


……ミア、いつの間にこんな嫌な子になってたんだろう。

みりあが嫌だって思ってたこと、知らずにアイツにやっちゃってた……。


どうしよう……。


「さて、出発しますよ」


村から続く道に馬車が停まっている。

黒くて四角いのが1台。

他の馬車はもっと簡素で荷台に幌が付いてるだけみたいなの。絵本で見たことあるのに似てる。確か家族で草原にお引っ越しする話に出てきた。


「さぁ、どうぞ」と、シェファフルトさんが黒い馬車の扉を開けてくれる。

4人乗りで前と後ろで向かい合って座席がある。座席はおしりのところにちゃんとふかふかのシートクッションが嵌め込まれている。

「初めての馬車は酔いやすいですからな、こちらへお座りください」そう言われてミアとピュイトは進行方向を向ける後ろの席へ座った。

林檎の樹さんを足元へ置く。

揺れて倒れたりしないかな?


「ピュイトは馬車乗ったことある?」

「乗り合いのならば。街道で繋がっている大きな街には行き来できるように乗り合い馬車が走っていますから」

「ふーん、そうなんだ。酔ったことある?」

「初めは誰でも多少酔いますよ」

遠足のバスとどっちが酔いやすいかなぁ?

馬車は天井に小さな明かりとりのガラスが嵌まっているから真っ暗ではない。けど、酔わないように壁についてる引き戸タイプの窓を開けておこう。今は夏だからきっと風が気持ちいい。


窓を開けたら「なぜ山猿と一緒なのだっ」「お嫌ならば幌馬車にお乗りになりますか?」というやり取りが聞こえてきた。

うぇえ、馬車あいつと一緒なのか……。

すごく気詰まり。


がちゃりと扉が開けられて「すぐ出発します」というシェファフルトさんの声と一緒にアイツとアトラスさんが乗って来た。

アイツはミアの正面にどかっと腰を下ろすと、ふんって感じでそっぽを向いて窓の外を眺めている。

アトラスさんはミアとピュイトに軽く会釈をしてくれた。


「出発!」グリフェルダさんの声がして馬車がゆっくりと動きだす。


馬車は思ったよりも速くない。

道が悪いからなのかな。

それでもミアの村からどんどん離れていってしまうのにはかわりない。


不安が顔に出ていたのかアトラスさんが「この辺りはとても安全だとシェファフルト様が仰っていたので安心していて大丈夫ですよ?」と慰めてくれた。


馬の蹄が土を蹴る音、ガラガラと車輪の回る音と窓から吹き込んでくる風の音が馬車の中に響く。


うぅ、やっぱり気詰まりだ。

ピュイトと2人なら色々おしゃべりできたのにな。

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