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プロローグ

 夜の空が濃藍からうっすらとしたラベンダー色の気配を纏わせているが、明け方というにはまだしっかりとした明るさの感じられないそんな時。

山の中の小さな家で若い夫婦が仲良く眠っていた。


 二人は同じ夢を見ていた。

夢の中では女神が二人に語りかけていた。


(わたくし)はこの世界の創造神、セラスティア。あなた方に(わたくし)の愛し子を預けたいのです。この子を愛情で満たし、守り育てて欲しいのです」

女神が胸の前で組んでいた手を離し、両腕を広げるとやさしい光と共に、おくるみにくるまれた、きらきらとした金髪の可愛らしい赤ん坊が現れた。

「この子はミリアンジェというの。今日からよろしくね」


 そう言うと、創世神話で聞いていた通りの色彩を持つ薄紫の髪に金色の瞳の女神は、すぅっと溶けるように消えてしまった。





 東の空が曙色に染まり森の小鳥も囀ずり始め、二人も目を覚ます。

「「変な夢を見た……」」と、体を起こしながら呟く。

「……っあなたも!?」

「君も女神様の夢を!?」

どういう事だろうとベッドの上で二人体を固くしていると、突然庭からミシミシザワザワと、木の擦れるような葉っぱの打ち付けあうような音が聞こえてきた。

慌てて二人で庭へ出てみると、そこには昨日までなかった林檎の樹がたわわに実をつけて存在していた。

そしてその根本には、夢で見たのと同じ赤ん坊が蔓でできた籠に入って眠っていた。

妻がそぅっと掬い上げると赤ん坊は小さな口をむにむにとさせ、はふっと欠伸をした。そのかわいらしさに目を細め、胸元に引き寄せ、柔らかそうな頬に自分の頬を寄せる。

「かわいい…」

もっとよく顔を見ようとおくるみを頭から外すと、隠れていた金色の髪と耳が見えるようになった。

「耳が尖ってる…!」

「この子、エルフか!?」


二人はしばし無言で赤ん坊の顔をじっと見ていたが、妻は夫の瞳を見つめ口を開いた。

「ねぇ、あなた、この子ミリアンジェって女神様は仰っていたわね。愛称はミアでいいかしら?」

夫は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔へと変わった。

「いいね、ミアもきっと気に入るよ。さ、ミアを家に入れてあげよう」

「そうね、ミアのミルクの用意をしなくっちゃ」

「忙しくなるね」


微笑みあい、夫婦は家の中へと戻っていった。



その腕にしっかりとミアを抱きしめながら……。





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