可愛い妹
私の社交界デビューから2年。今日、妹がデビュタントとして王宮のパーティーに招待された。
妹の名前はリーリア。お母様と、3番目のお父様であるマクレードとの間に生まれた子だ。
私もお祝いをしようとお部屋に向かったけれど、そこにはお母様もお父様たちもみんな揃っていて、とてもではないけど話しかけれる様子ではなかった。
「リリィ…私の可愛い娘」
「あぁ。本当に君にそっくりだよ。きっと誰もがリリィに夢中になるさ」
マクレードお父様に似た金色のふわふわした髪の毛に、お母様に似たぱっちりとした大きな瞳。
誰が見ても、将来はその美貌に誰もが振り向くこと間違いなしの完璧な容姿だ。
扉越しに見た妹のあまりの可愛さに、私の気分も舞い上がっていた。
お母様とお父様に囲まれて、リリィも嬉しそうに微笑んでいた。
「リリィ…本当に可愛いわ。私もなにかお祝いのものを用意しなくちゃ」
最近市場で隣国の綺麗なブレスレットを買ったことを思い出し、私は自室に戻ったのだった。
「行ってまいります…」
自信なさそうに馬車に乗ろうとしていたリリィは、お見送りに来た私をみてため息をついた。
「ツェリお姉さまはお母様に似て美しい髪で、第一王子様とも仲が良くて、いつも自信満々で、本当に羨ましい…。私なんかこんなにくせっ毛で、行儀作法もまだまだで、自信もないのに。お姉さまと比べられたらどうしよう…」
「…大丈夫だよ、リリィ。お前は本当に優しくて、いつも周りを明るくしてくれる太陽のような子だ。きっと今日のデビュタントも友人がたくさん作れるさ」
「そうよ、リリィ。泣かなくていいわ。貴女には貴女の魅力がたくさんあるもの。ツェリと比べる人なんていないくらい、みんな貴女に惹かれてしまうわ」
マクレードお父様とお母様に言われて、リリィは小さくうなずいた。
ディオールお父様もリリィの大きな瞳に溜まった涙をハンカチで拭いてあげて、愛おしそうに見つめていた。
「さぁ、そろそろ出発しましょう」
お母様のひとことに御者が扉を閉めようとしたので、私はあわてて馬車に近づいた。
「リリィ!これ…今日のお祝いよ。先日、市場に行った際に綺麗なブレスレットを見かけて買ったの。よかったら、お守りとして持って行って」
リリィは驚いた顔をしたけれど、にこりと微笑んだ。
「ありがとう…ツェリお姉さま。私、頑張ってまいります」
こうして、リリィは王宮へと向かったのだった。