人生の始まり
私の名前はツェティーリア・フォン・グレベリン。この度3歳になりました。
なぜこんなにお行儀よくご挨拶ができるかって?
それは、私がこの世界に転生したからです。
前の名前は忘れてしまったけれど、18歳の女の子だったことは覚えている。
前の家族は酷く仲が悪く、私はそんな家族に会わないように家にはほとんど帰っていなかった。
そして、ある寒い日の夜、私は外で眠りについてそのまま起きることができなかった。
なんでこの世界に転生してしまったのかわからないけれど、どうやらこの家族は仲がいいし、お金持ちだし、前の人生よりいい生活を送れそうだ。
「ツェリ様。御髪を整えてお着替えをしたら、お庭へお散歩へ行きましょう」
「はぁーい」
たった3歳の女の子なのにメイドが3人もついていて、私が退屈をしないようによく面倒も見てくれて、私にはもったいないと思う。
母親似の長い銀色の髪の毛を丁寧に梳いてもらい、今日はポニーテールにした。
薄いグリーンの花飾りをつけ、それに合わせたドレスワンピースを着る。
「可愛らしいですわ、ツェリ様」
「グリーンの髪飾りもドレスもよくお似合いです」
「ありがと、ミーナ、レイア、ティア」
にっこり笑ってお礼をいうと、3人も微笑んでくれた。
そのあと、レイアとティアをつれてお庭に散歩へ行った。ミーナはその間に私の部屋を片付けたり掃除をしたりしてくれている。
お庭にある池でボートに乗ってしばらく揺られてから、私はお部屋に戻った。
部屋にはお母様とお父様が私を待っていて、私をぎゅっと抱きしめてくれた。後ろになぜか3人の男性もいたけど、全員で一緒に昼食をとって楽しく過ごした。
一緒に食事をとった3人の男性についてこのときは深くは考えていなかった。だって、普通は1人の男性に1人の奥さんでしょう?
私はまた少し大きくなった。年齢は5歳。
ここはグレベリン公爵家のお屋敷で、私は1人の母、4人の父、1人の妹とたくさんの従者たちと暮らしていた。
そう、この世界はどうやら一夫多妻ならぬ、一妻多夫の世界だったのだ。
本当のお父様はディオール。宮殿に雇われている魔法師だ。
他に騎士のファレオ、文官のマクレード、外交官のグレインの3人のお父様がいる。
みんなこの国を支えるために重要なお役目を果たしている人ばかりだ。お母様のベリーシアも絶世の美女で、王族に嫁ぐ話も出ていたらしい。
そのため、このグレベリン家は王族にも一目置かれている。
6歳の社交界デビューに向けて、私についていたメイドはさらに2人増え、いまは教育係の2人のメイドを含め5人が私についている。
6歳で社交界デビューを果たして、王家の方々にご挨拶をしてはじめて自分がこの王国で活動することを許されるのだ。
グレベリン家から子どもが社交界デビューしたなど話がでれば、すぐにでも婚約を持ち掛ける家はたくさん出てくるだろう。
あと1年みっちり勉強をして、社交界デビューは完璧にするようにお母様たちは張り切っている。
私も、私を大切に育ててくれたお母様たちに恩返しをしたくて一生懸命にお勉強を頑張ったのだった。