勇者撲滅51
「ギリッギリッ! よっ!」
最後の一匹をマジックバッグに収納するとダークベアの足の先が飛び出ていたので、手で押し込んだ。
「ふぅ~2人共・・・本当に強くなったね♪
「えぇ♪ もうAランクの実力は十分に持っているわね♪」
「本当ですか♪」
「イェーイ♪」
「2人共今日でレベルはいくつになったんだい?」
「「レベルですか? ステータスON!」」
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名前:マイ・アスカ(年齢19歳)
職 業:スター レベル:86
力 1,720(20)
体 力 3,440(40)
魔 力 6,450(75)
センス 1,032(12)
素早さ 258(3)
加 護 ユージの加護
スキル 魅了の魔眼、魅惑の歌声
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名前:ミレイ・キリヤ(年齢18歳)
職 業:スター レベル:84
力 5,040(60)
体 力 4,200(50)
魔 力 1,680(20)
センス 1,008(12)
素早さ 588(7)
加 護 ユージの加護
スキル 包丁捌き、弱点看破、体捌き
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「十分強いな♪ それにしても・・・相変わらずだな・・・」
「まぁ・・・意味は分からないけど・・・加護があるだけ・・・良かったんじゃない?」
「本当に・・・何なのコレ?」
「ねぇ~何の加護なんだろうねぇ~♪」
「フフ♪でも私達にも加護なんかないんだから良かったじゃないの♪」
「何か嫌! 気持ち悪い!」
「私もマイク君の加護が良いかなぁ~」
『ユージ・・・可愛そうな奴・・・』
心の中でユージの為に涙を流すトールであった。
「港が見えたぞぉ~♪」
船員達が慌ただしく動き始めた。
その声に客室を飛び出す多くの人達の中にユージとラナの姿もあった。
「ユージ様♪」
「あぁ・・・やっと着いたな♪・・・」
そして、船がエリクシールの港町“エリクポート”に入って行く
「いやぁ~1ヶ月は思った以上に長旅だったなぁ~♪」
「ウフフ♪ でも私は楽しかったですよ♪」
ラナは思い出す・・・
流石は王族専用客船であった。
この船は、地球で言うならば豪華客船の様な船であった。
客室は少なく客を持て成す為に様々な施設が用意されていた。
豪華なレストラン、オペラにミュージカル、カジノにプールと・・・
その中に乗馬の施設まであったのには驚いた。
それを見たユージがこれ幸いとばかりにラナに乗馬を教える事になった事は言うまでもない。
下船するとエリクポートの町を散策し物珍しいものを片っ端からチェックしていた。
新鮮な海の幸を満喫した2人は、ここで一泊してからエリクシール城を目指す事となった。
「どうですかユージ様♪気持ち良いでしょうか?」
「あぁ~気持ち良い~♪」
相変わらずラナにマッサージをして貰っているが、以前の様な切迫した空気はなくなっている。
「フフ♪ ユージ様もお疲れのご様子でしたので、喜んで頂けたなら私も嬉しいです♪
船の中では色々ありましたから・・・」
「だなぁ~・・・ちょっと優しくしてやったら図々しいにも程があるんだよ!」
あの日からユージの元に毎日20名以上の貴族や商人達が話しかけに来たのだが、ラナとの距離感を見失っていたユージは積極的に会話をする様になっていた。
何を勘違いしたのか友好的なユージの話し方に気を良くした貴族や商人達は一緒に食事をしたがったり、一緒に演劇を見に行く事になったりとどこへ行くにもついてくるようになったのだった。
終いには、プールにまでついてきたりして、流石にプライベートは勘弁してくれとお願いしたものの毎日船の中で開かれるダンスパーティーで嫌がるラナに近づいた貴族に激怒した事があった。
その時の事を少し語ろう・・・
「コレはコレは、ようこそお越しくださいましたワールド卿♪」
「本日はお招き頂き有難うございます♪」
「エドモンド侯爵様♪ 有難うございます♪ 本日は、お言葉に甘えさせて頂きますね♪」
タキシードとドレス姿のユージとラナが一度くらいは相手の顔を立てた方が良いと判断した事で、エドモンド伯爵が主催していたダンスパーティーに出席する事になった。
「それにしても・・・本当にラナティーア様は、エレガントな女性ですな♪是非後でご一曲♪」
「あのぉ~・・・」
その瞬間ユージは、対話に困ったラナを守る様に身体を入れ変わりに返事をする。
「エドモンド侯爵様、申し訳ございませんが、ラナは私の宝物ですのでご勘弁を♪」
「おぉ。そうでいらっしゃいますか♪ では、 日を改めて・・という事で♪ さっ♪こんな場所では何ですので、奥にお席をご用意させて頂きましたので、そちらをお使いください♪」
パンパンっと手を打つと数名の執事が来て席まで案内してくれた。
「おい!分かっているな! 他の貴族共もワールド卿を狙っておる! お前達の誰かが必ず落とすんだ!」
「「「はい♪ お父様♪」」」
そんな話が裏である事など知る由もないユージは美味しい料理に笑顔が零れたラナの顔が見れた事で来て良かったとさえ思っていた。
ところが食事が終わるタイミングを見計らったかの様に次から次へと話しかけてくる貴族たちには辟易し始めていた。
「ワールド卿♪お噂はかねがね♪ 是非、私の娘とご一曲お願いできませんか?」
「カミヤ様♪ お会いできて光栄ですわ♪ 私とご一曲躍って下さいませんか?」
「何言っているのよ! カミヤ様の最初に躍るのは私ですわ♪ 是非私と踊って頂けませんか♪」
「いやいや私と!」
「それなら私と!」
ギャァギャァと何人もの女性がユージの周りに集まり始めた。
「ユージ様♪ 私の事はお気になさらずこれも貴族の嗜みにございますので♪」
そう言われ渋々何人かの女性と踊る事にしたのだった、
躍っている間も執拗にユージに身体を密着させたり、自分の自慢話を聞かされたり、露骨な色気で迫ったりといい加減ユージがゲンナリした時だった。
周りでダンスを踊る人たちの間からラナを強引にダンスに誘い出す貴族が目に入った。
ピクッ!
「申し訳ございません・・・私はユージ様の付き人ですので、主人を差し置いて躍る事など出来ません。」
「良い良い♪ ワールド卿には後で、ワシから謝罪する♪ ホラ♪ ムードの良い曲が流れましたから♪」
「バナック殿!ラナティーア嬢が嫌がっておられるではありませんか!私なら如何ですか♪」
ビキッ!
「ですので、私は・・・キャァ!」
強引にラナの腰に手を当てて立ち上げた瞬間をユージが目にした。
ブチッ!
「アン♪カミヤ様?まだダンスの途中ですわ・・・カミヤ様? ヒッ!」
ダンス相手の手を振り払うように強引にダンスを止めるとスタスタとラナのいる方に向かって行く
まるで海が割れるかのようにユージの怒りを感じた貴族達が別れていく。
「ご勘弁下さいまし・・・私は・・・私は・・・」
「良いではないですか♪ これも貴族の嗜みですよ♪ ホラ♪」
「嫌っ・・・」
オドオドと助けを求めるかの様な表情で周りを見ているとユージが向かってくる姿が目に映った。
『あっ♪ ユージ様・・・? どうされたんだろう・・・こんなお顔のユージ様を見たの・・・久しぶりだ・・・』
ラナが思い出していたのは、ラナが魔物に吹き飛ばされたりして傷を負った時に見たユージの姿であった。
『ユージ様・・・怒っていらっしゃるの? 何かあったのかしら?』
「バナック殿! ハイド殿!」
ユージの迫力を見た周りの貴族がラナにちょっかいを掛けていた2人の貴族に声を掛ける。
「何ですか?今良いところなので後にして下さい・・・おや♪ これはワールド卿・・・ヒッ!」
「どうしたというんだ? ウッ!」
目に映る全ての物を睨み殺すかのような表情・・・
無言で2人に近づくと口を開いた・・・
「バナック殿にハイド殿・・・その手を放して・・・頂けますかね・・・」
怒りを噛み殺しながらそう囁いた。
「何でじゃ!ワシはダンスを踊ろうとしておるだけではないか!」
「そうですよ!これも貴族の嗜みではないですか!」
「スゥ~・・・ラナティーアは・・・俺の宝物だ・・・誰にも触れさせたくない・・・エドモンド侯爵には伝えたんですがね・・・」
「フン!話にならんな!」
「そうですな♪ さぁ~ラナティーア嬢♪ あちらで♪」
「俺は宝物に手を触れるなっと言ったんだぞ・・・」
「フン!ちょっと名を挙げた位で良い気になりおって!」
「警告は・・・したぞ・・・」
「ハハ♪ 何が警告なんだい?バカバカしい・・」
ブチ・・・ブチブチ・・・
「なるほど・・・これだけ言っても・・・俺の宝物に手を出したって事は・・・俺と喧嘩をしたいって事だな・・・分かった・・・お前達の爵位がどうであろうが・・・関係ない・・・」
ブワ~ッとユージから放たれた殺気が当たりを支配する。
「図に乗るな!ワシはエリクシールの・・・」
相手の声が耳障りであったユージは相手の言葉に被せる様に
「それ以上喋るな・・・お前に声が癇に障る・・・話を聞いていなかったのか?・・・お前達の爵位など・・・関係ないと・・・」
『ユージ様・・・私の事で怒っておられるの? 宝物って・・・私の事だよね・・・エヘへ♪』
ブレないラナであった。
「無礼者めが!成り上がりの男爵如きが!衛兵!何をしておる!この者をひっ捕らえよ! 何をしておる! え~ぃ!忌々しい! お前達!ワールド殿の身体に教えてやれ!」
「「「はっ!」」」
船に配備されている衛兵に泣きつくが動こうとしなかった事で、自分の傭兵らしき者に襲い掛からせる事にした。
「悪いな男爵! 主の命には逆らえん!」
「ヒッヒッヒ♪ おりゃぁ~ベッピンさんを連れていたアンタをぶちのめせる切っ掛けをくれた伯爵様に感謝ですぜ♪」
「ヘッヘッヘ♪そうだな・・・よぉ~色男さんよぉ~せいぜい無様な姿を見せてくれよ♪」
流石に船の中で帯剣をしている者はいないので、三人同時に殴りかかってきた。
前後左右から同時に放たれた拳の一つを掻い潜ると同時に右側の傭兵の顔目掛けて左の拳がカウンターで捉えていた。
いくつかのテーブルを吹き飛ばしながら壁に激突するとピクリとも動かない。
一瞬の出来事に周りが目を奪われる中、既にユージの拳が隣の傭兵のボディーに突き刺さっていた。
体が1メートルは浮いたほどの威力の右拳が突き刺さると
「うげぇぇ~」
悶絶して崩れ落ちた。
「小癪な!」
鎧をまとった相手の拳がユージの眉間に打ち下ろされた。
ゴギン!
「馬鹿め!調子に乗るからだ!止めを刺してしまえ!」
「グワァァッ!」
大柄の傭兵が直撃した右手を抑えて叫び声をあげた。
「はぁ~?なんだ・・・その腑抜けた拳は・・・まだマイの拳の方が痛いぞ? 馬鹿が・・・そこで寝ていろ!」
そう言いはなった瞬間
しゃがみこんで、真下から傭兵の顎を目掛けて拳を打ち込んだ。
「・・・で? 本格的に俺と喧嘩したいって事で良いんだな・・・」
「「ひぃ~」」
「歯を食いしばっていろよ・・・」
そう言って右手を構えた瞬間・・・ユージが壁に吹き飛ばされた。
「ユージ様!」
ラナが心配そうに声を上げた。
「こらこら・・・さすがにそれは不味いだろう? カミヤ殿」
「おぉ! 来たかゲイロード!馬鹿め!ゲイロードがいればお前など怖くもないわ!」
突然現れた碧髪の大男。
慎重が高いせいかヒョロっとして見えるが筋肉質だ。
「・・・」
吹き飛ばされ壁に衝突したにも拘らず、何もなかったかのように立ち上がると自分の服に付いた埃をパンパンと振り払う・・・




