勇者撲滅114
「ユージの実力だとこれ位じゃなきゃ分からんだろうからな・・・」
「ハハ♪・・・これなら本気でやっても大丈夫そうだな・・・
そいつを切るのも何十回切ったか分かんないけど・・・」
「今、ユージの剣を持ってくるからちょっと待ってろ!」
そう言って出て行くガンドロフの背中がワクワクしていた。
そして、戻って来たガンドロフが宝物を抱くように一本の剣を持ってきた
「これがユージの新たな剣だ・・・」
「重っ! 意外と重いな・・・」
「重量で言ったら100㎏以上はある・・・」
「100㎏?そんなに重いの? まぁ~使えない訳じゃないけど・・・だから抱えて持ってきたのか・・・」
「まぁな・・・だが、そんな重い剣を渡す訳がなかろう・・・魔力を少し流せば話が変わってくるぞ。」
「魔力ね・・・どれ・・・マジか・・・凄いな・・・」
軽く魔力を流しただけで40分の1以下の軽さに変わった。
「ふむ・・・流石だ・・・どうやら無事にその件はユージを主として認めたようだな・・・」
「主として? そう言う事だ?」
「簡単に言えば、その剣は生きているって事だな・・・ドラゴンなどの命ある素材から作られる武器は、持ち主を選ぶんだ・・・だから、自分より弱い者には絶対に扱えん・・・」
「なるほど・・・」
「この剣はユージが許可したもの以外が持てば持ち運ぶ事さえ困難な剣だ。
体感的に軽く感じようが、本来の重さは変わらん」
「100㎏の重さがそのままって事か?」
「それだけでも普通の剣とは段違いの威力があるだろうな・・・」
「そりゃ~そうだろう・・・驚いた・・・」
「だろう? じゃ~早速試し切りと行くか!」
コクリとユージが頷くと
「バトルニックオーラ・・・」
一瞬にしてオーラを纏う。
「・・・全開!」
そして、爆発的なオーラが吹き荒れた。
「くっ!す・・・すげぇ~な・・・近づく事も出来ん・・・くっ・・・」
「危険だから外で待っていた方が良いぞ・・・」
流石に耐えられず出口にしがみ付くように移動した。
そして、ユージが手に持った剣をユックリと頭上に掲げて行く
「さて・・・何回で切れるか・・・いくぞ! ズリャァァァ~!!!」
シュン!
音を置き去りにした剣閃が走ると、遅れて衝撃波が巻き起こった
ズドドドド~っと剣による衝撃波が金剛石の壁を砕いた。
「す・・・すげぇ~・・・な・・・何だこの威力・・・」
ワナワナと震えながら世界樹の枝の事を思い出した。
「そ・・・そうだ・・・枝は・・・ハハ・・・やっぱり切れてないか・・・」
目の前の枝は、一直線に万力に繋がれたままだった。
「さて・・・何回で切れるか・・・」
「ちょ・・・ちょっと待て!」
慌てた口調のガンドロフが制す。
「なんだよ!」
「いやいや・・・まさかユージが使うとここまでとは・・・前を見てみろ! 金剛石の壁が砕けやがった。
次はもたん!」
「あぁ~そりゃ~そうだな・・・」
「悪いな・・・今できる最強の箱だったんだが・・・まさか一撃で使い物にならなくなるとは思わんかった・・・」
「な・・・何か悪いな・・・だが、お陰で威力は分かった!」
「そう言って貰えたんだったらやった甲斐があったってもんだ♪」
そう言いながら片方の万力を緩めて行くと
「なっ!」
「今度はなんだよ!」
「ユージ・・・これを見ろ・・・」
目を見開き驚いていくガンドロフに言われ万力を見る。
「なんだよ? 万力も壊れちゃったか?」
「馬鹿者! そっちじゃない!」
そう言って指を指した先に・・
「枝がどうした・・・ん? 左の万力にも枝がある・・・って・・・切れていたのか!」
「おぉ・・・信じられん・・・この枝を・・・アッサリと・・・」
「お・・・驚いた・・・これで・・・未完成なのか?」
「あぁ・・・こいつは、間違いなくこの俺の最高傑作だ!」
「どうやら・・・間に合いそうだな・・・」
「どうした? 何かあったようだな・・・」
「まあな・・・」
「そうか・・・だったら・・・3日後までに仕上げてやる!」
「助かる・・・他のは、どうなっている?」
「そっちも難航したが・・・そっちはほぼ完成したぞ!」
「流石は、ガンドロフ!」
「そっちも見て行ってくれ!」
「あぁ・・・頼む!」
それから2日後にマイ達からドラゴンの目撃情報を聞く事になった。
「待っておったぞ・・・先日も話したが、後はそれぞれの装備に魔力を注ぐだけだ」
「あぁ・・・三人とも話した通りだ!全力で魔力を込めるんだぞ!」
「「「はい!」」」
約束の3日目
ガンドロフの店に四人で新装備を引き取りに来ていた。
先日、装備の説明を受けていると不思議な事があった。
「これが、ユージの鎧だ」
「おぉ! カッコいいな!」
「自信作だ!
他の装備もそうだが、基本的に防具の方には・・・ちょっと待て・・・お前等!」
「何ですか親方?」
「今日は終いだ! 金をやるからどっかで飲んで来い!」
「マジっすか!」
「珍しい事もあるもんだ!」
「やったぜ!」
「煩い!サッサといかんと金はやらんぞ!」
それからの行動は素早かった・・・
「どうした?人払いなんかして・・・」
「いやなに・・・気を使って話すのが面倒だっただけだ・・・これで人が入って来れんから安心して話せるわい!」
そう言ってガンドロフは自分の店の入り口に鍵を掛けた。
「さっきの続きだが、全ての防具には、基本的に世界樹の生皮を繊維状にして作ってある。」
「あぁ・・・世界樹って言いたかっただけか・・・」
「フン・・・続けるぞ! オリハルコンもあらゆるところに使ってはいるが、以前も話した通り、この世界樹の素材程、耐久性に優れている素材を俺は知らん! それと新たな事も分かった。」
「新たな事?」
「そうだ! 魔法の耐性にもずば抜けて優れておった!」
「魔法耐性か!」
「そうだ! 攻撃魔法は当然として状態異常の耐性もずば抜けておる。」
「へぇ~そんなに凄いものだったか・・・」
「あぁ・・・こんなのは見た事が無い。
恐らく生きた枝や皮だったからだろう。」
「なる程・・・確かに拾ったものとは、何もかも違ってたな・・・」
「さらに!」
「まだあるのか?」
「こっちの方が驚いた位だ!
良いか聞いて驚け! この装備を一つでも身に纏っていれば、体力と魔力の回復力が通常時の2倍!」
「マジで!?」
「それだけじゃないわい! さらに自然治癒力に至っては3倍以上だ!」
「マジか・・・チートだな~・・・って・・・何で分かったんだ?」
「ウム・・・ユージとの約束だったからな・・・足らない素材は、俺の方で仕入れて来たんだが、いくつか揃わないものもあったから危険を冒して取りに行ってきた。」
「それと効果となんの繋がりがあるんだ?」
「簡単に言えば世界樹の繊維がかなり余ったからマントだけは多めに作ったんだが、素材集めは流石に危険だったから耐久性を試す為にもそれを付けて魔物の討伐に行った。」
「素材集めって魔物の事だったのか?」
「魔物だけじゃないがな・・・何にしても俺がギリギリ倒す事が出来るのはAランクの魔物迄だ。
久しぶりだったから思っていたよりも体力が無くなっておってな・・・そんな時に魔物が出おった。」
「なるほど・・・それでマントを使用したと・・・」
「そう言事だ! 辛うじて魔物を倒す事が出来たが、流石に直ぐには動けん・・・そう思っておったのだが、座っているだけでみるみる体力が回復しよった。
さらに魔力も通常よりも早く回復した。 魔物との戦いで持っていたポーションも割れてしまってなホトホト困っておったんだが、気味が悪いスピードで治っていきおった」
「ん? 意味は分かるが・・・たかが2~3倍だろう?」
「ガババババ♪ 普通ならば・・・だな♪」
「どう言う意味だ?」
「流石にマントだけってのは、おっかなかったんでな・・・帽子代わりにターバンとして使ったのと腰巻としても作ったから全部で3つ付けておったわい♪」
「ふ~ん・・・3つ付けて防御力が上がったって事・・・ま・・・まさか・・・効果が上がったのか?」
「ガババババ♪ そうだ! 俺も笑ったぞ♪ 通常の8倍以上の速度で体力と魔力が回復し、切り傷など12倍以上の速度だ!一日で塞がる傷が、1時間ちょっとで塞がったから体感的には15倍ってとこだろう。」
「うそ!?」
「本当じゃ!」
「す・・・すげぇ~♪ 流石はガンドロフ! 凄いものを作ってくれた!」
「ガババババ♪俺も驚いたがな! オッと!魔力は注いでいないからな!」
「ん? 魔力って・・・そりゃ~生きている魔物の話だろう?」
「いや・・・作って分かったが、この素材も生きておった」
「なるほど・・・枯れてなかったからか・・・」
「恐らくそう言う事なんじゃろうな・・・だから剣と同様に所有者として認めて貰う必要がある。」
「なるほど・・・だったら♪早速!ハァァァァ~ッ!」
ユージのオーラが増大し魔力を込め始めた。
「グォッ! ちょ・・・ちょっと待て~!!」
「何だよ急に!」
「ゲホゲホ・・・何だはこっちのセリフじゃ! さっきのバトル何たらってスキルを解除してからにしてくれ!
ここが、壊れちまうわっ!」
「あっ!ヤベッ! ナハハハハ♪ そのままだった♪ ごめんごめん・・・じゃ~気を・・・」
「ちょっと待て!」
「何だよぉ~今度は~!」
「ユージ・・・お前・・・何をしたんじゃ?」
「何がって・・・魔力を・・・魔力を~~~なんじゃこれはぁ~~!!」
「それを俺が聞きたいんだよ!」
「あの立派な鎧は・・・どこ行った!」
「・・・信じられんが・・・今ユージが持っとる服が、そうなんじゃろうな・・・」
「マジでか・・・さっきから驚きっぱなしな気がする・・・まぁ~・・・これはこれでカッコいい服だから良いか♪」
「お主かるいのぉ~ それんいしても・・・マントもか・・・これは、もはやローブじゃな・・・。
ま・・・まさか・・・ホッ! 盾だけは問題なかったようじゃな・・・。」
「何か・・・悪かったな・・・」
「いや・・・情報が全くない素材だから・・・これが、本来の姿って事だ・・・。」
「どう言う事だ?」
「恐らく間違いないと思うが・・・ユージは魔力を注ぐと形が変わる金属がある事を知っておるか?」
「あぁ・・・変形する武器とかってあるよな」
「そう・・・それじゃ。ミスリル銀と呼ばれる金属もそれにあたるな・・・要するにじゃ!この世界樹の素材も武具にした事で、意志のある防具になったって事だ。
持ち主の魔力を浴びて所有者と認めた事で、主の望む理想の姿となったって事じゃな・・・」
「そうなのか?だけど・・・さっきの剣は、変形しなかったぞ?」
「これも予想だが、注ぐ魔力量で変わるのかも知れん・・・まぁ~アレは、ドラゴンの牙を使っておるから変形しなかっただけだとは思うがな・・・そもそも、さっきの技を使っていた訳じゃから全力で込めておったんじゃないのか?・・・植物は成長する・・・それが変化となったと俺は思う。」
「なるほど・・・魔力を帯びている素材だから魔力量によって大きく姿が変わったって事か・・・理に叶っているな・・・これまた面白い装備を作ってくれたもんだ♪ 俄然2日後が楽しみになって来た♪」
「気に入って貰えたんなら良いけどな・・・取り敢えず3日後に全員を連れてきた方が良さそうじゃな?」
「そうだな♪ じゃ~ソロソロ行くよ♪ 3日後に皆連れてくるから宜しくな!」
「おぉ!待っとるぞ!」




