明人の闘い
「ふんっ!」
ゲトラが大きく大剣振り回し、それを蓮斗が必死に回避している、決して型と言えない攻撃に蓮斗は転がり続けるしか無い、その光景にクラスメイトから「酷い」などの批判の声が上がる、しかしゲトラは気にもせずに蓮斗を攻撃し続ける、しかし攻撃はあくまで殺意は無く、剣も鞘に入っているので当たったとしても痛い程度で済むだろう。
「あがっ!」
蓮斗が避け続けるのに限界が来たのか体勢を崩し、大剣の横の面に殴られて数メートル吹っ飛んだ。
「…まぁ戦いの素人がよく動けた方だとは思うが」
「……」
「だが、お前は攻撃できなかった、逃げていただけだ、点数で言えば100点満点中3点だ」
まぁ妥当かな、たしかに高い身体能力で逃げ回ってた感じはあったし、蓮斗は運動神経抜群だったけどまぁこんなもんか。
そんな中クラスメイトのブーイングの声が上がる。
「ふざけんな!」
「なんでこんなこと!」
しかしその声に蓮斗は、
「落ち着け、皆!」
蓮斗がいきなり大声を出し、クラスメイト達を制止する。
「確かに俺に覚悟が足りなかった、戦うことは傷付ける覚悟を決めなくてはならないんだ!だから俺は攻撃出来なかった、でも俺は覚悟を決めなきゃならない!」
おー、キザなセリフ吐くなぁ…、しっかし傷つける覚悟ねぇ…。
「だから俺は覚悟を決める!そしてこの世界を救う!だからみんなもその覚悟を持つようにしてくれ!」
うわ、勘違いも甚しいな、なんでこんな風に言えるんかねー蓮斗よ…。
「……」
ゲトラも呆れてるっていうか、なんていうか…、溜息吐いちゃてるよ…。
「まぁ…いい、次は誰だ!」
皆んなが蓮斗の言葉にワーワー騒いでる中ゲトラが、それに割り込むように叫ぶ。
「俺が行く!」
…あ、忘れてた、明人の奴そろそろ限界かアイツ…戦いたくてしょうがないって顔してるな。
「お、次は合格のやつか!」
ゲトラも顔をにやけさせて柄を握る。
「おっと、武器はどうする?」
その質問に明人は武器の置いてある場所を見て、はっとした顔を浮かべる。
「あ、刀が無い」
そういえばここ異世界だったわ、明人の奴、長剣で戦えんのかな?鉄パイプでいけるなら大丈夫か?
「か、かたな?なんだそりゃ?」
「ええと…」
そう言うと明人は指で地面に刀の絵を描いた。
「あー、これか見たことあるな、カタナって言うのかコレ、確かいいの持ってたはず…」
ゲトラは近くに置いてあったカバンの中に手を突っ込みガサガサと手を動かした。
「お、あった!」
カバンの形からはあり得ない大きさをした日本刀がスポンと出てきた。
「「えっ」」
その光景にクラスメイト達が驚きの声を上げる。
「これでいいか?貰い物だけどよ」
そう言って、刀身65cm程の黒い鞘に入った刀を投げた。
「大丈夫だ、だが…ん?」
明人は刀を受け取り、ゆっくりと刀を抜き銀色の刃があらわとなる。
「どうした?」
「いや、さっきのどんな手品かなって思っただけだ」
…なんか様子変だが、大丈夫か?
「あー、これはマジックバックって言ってな、高レベルの空間魔法魔法付与する事で出来る、まぁ動かせる倉庫って感じだな」
「ふーん便利だな」
え、なにそれ四次元ポケットじゃん超欲しい。
「にしても…なかなか様になってるな」
「どうも、じゃあやるか!」
明人の言葉と同時に両者が武器を構える。
「はっ!」 「ふんっ!」
2人の掛け声と同時に剣身があわらとなった大剣と刀がぶつかり合い、ギリギリと金属音が鳴り響いた。
「おらぁ!」
ゲトラの大剣の横薙ぎ払いを明人は刀で受け止めて軌道を晒した後一気に加速して回り込み、一閃を放つが、ゲトラは上半身を一気にひねって大剣を地面に突き刺した、刀の刃は大剣の平面とぶつかって弾かれる、そしてそれと同時に互いに距離をとる。
そんな光景を見て、クラスメイト達は歓声を上げる。
「うおっスッゲー!」
「明人って剣道出来たんだ!」
「いいぞ!やっちまえー!」
しかし明人とゲトラは歓声が聞こえてないくらい集中していていわばゾーンに入っている。
しっかし明人の奴楽しんでんなぁ、てかアイツ半年前よりかなり早くなっているな…、んー?でもなんか違和感があるんだよな…技の質というか、キレというか…てか皆真剣な事突っ込まないのな。
そんな事を考えてると、二人が二度目の斬り合いを開始した。
「ていっ!」
明人が正面から刀を振りん降ろし、ゲトラが大剣を振り上げて防ぐ、パワーや重さは大剣の方が上なので明人は鍔迫り合いように剣との接触を避ける、ヒット&アウェイを心がけて動いている。
「どうも身体が上手く…」
明人の動きが急に止まり、自分の体を見渡し何かをつぶやく。
「まぁ、慣らすしかないか…」
ゲトラの方へ視線を戻し、刀を構え直す。
「なかなかやるな!名前はなんだったか?」
「褒めてもらって光栄だ、俺の名前は天上明人だ!」
「よし、覚えておこう」
……俺も早く戦いたいなぁ、でも目立ちたくないんだよなぁ…、本気でヤりたいんだけどなぁ…。
「名残惜しいが、終わらせるか…」
へえ、どうやって?
「へえ、どうやって?」
被ったし…。
「お前が知らん技を使うだけだ」
「いや、そりゃ異世界の剣術なんぞ知らねえけどさぁ…、今更だしそっちも同じだろ」
「そうなんだが…、まあ見れば分かるか」
そう言うとゲトラは大剣を横に構え、腰を深く沈ませ、横に大剣を斬り払い、
“パワースラッシュ”
と叫んだ。
ゲトラが叫んだと同時に大剣が光り、オレンジ色の斬撃が飛び出した。
「!?」
急に飛ぶ斬撃を見て明人は動揺したが、直ぐに刀で受け止める姿勢になった。
飛んできた斬撃を明人は刀で受け、ギリリリリと鈍い金属音が鳴った。
「ぐっ…なんだよこれ!」
明人は両足に力を入れて踏ん張るが、受け止めきれずに少しづつ後ろに仰け反った。
「ぐ、ぐぐ、があっ!」
ついに耐えきれなくなったのか明人は大きく仰け反り吹っ飛んでしまった。
ズドンと大きな音を立てて、数m後ろの壁に激突した。
そんな光景にみんなが唖然している中、急にゲトラが
「よしっ!俺の勝ちだな!」
と大きな声で言い放った。