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異世界転生してコーヒー無かったら普通世界の果てまで探しに行くよね?  作者: えびはら
学院編二年生の部:妖精の話し手
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九十一話 ディアナの無双

「やあクライヴ君!先ほどの試合は見事だったぞ!イクハルト君を彷彿とさせた」


 スカイジョストの第一試合を無事勝ち抜いて、厩舎に戻ってきた俺のところへ早速ウィロス大臣がお付きの人を引き連れてやってきた。


「あ、ありがとうございます」


「クライヴ君は今日これから時間があるだろう?一年生のファイブオンファイブを見にいこうではないか!ディアナ・オークスの戦いが観れる!」


「え、出るんですか?」


 俺は思わずそう聞いた。

 俺やベルもそうだが、ファイブオンファイブ無差別級に出る選手たちは分析されるのを避けるために戦闘系競技への出場を控えている。まあ、ネスラーさんが偵察に行ったりしてるわけだから、どっかで情報は漏れてるだろうけど、本番の勝負ってのはやっぱり情報量が多い。

 なので、ディアナ・オークスが出る、っつうのは正直驚きだ。しかもイヌワシ寮の戦術の要なのに。


「どうしても戦闘系競技に出たいと言っていたから」


 大臣たちの陰から、ひょっこりシャーロット・オークスが現れた。


「うお、おはよう」


「おはよう。そしておめでとう。面白かった」


 さっきのスカイジョストの試合のことか。オークスも見てたんだな。


「どうも。……いいのか?」


「別に。どうせ大体のことはバレてる。私たちもあなたが飛べることを知っている。それに、ディアナのわがままだけじゃない」


 へえ。

 やっぱり俺が飛べるようになったことはバレてるのか。

 そして、わがままだけじゃない、ねえ。何か考えでもあるのか。


「ディアナには最大級の攻撃呪文を使わず戦ってもらう。つまり、使っていいのは想起発動の攻撃呪文だけ」


 なるほど。つっても、想起発動の攻撃呪文だって十分ずるいけどな!


「ディアナの動きには粗が目立つ。去年の私と比べても。それはあなたもわかるはず」


 オークスはそう言った。

 まあ、決闘クラブで何度も戦ってるが、確かに去年のオークスと比べると、火力は断然妹の方が上だが、なんというか隙が多い。それと意表を突かれた時に結構慌ててしまうところがある。正直、一対一で戦うならそれほど怖い相手ではない。


「それはそうだけど、それはチームプレイで補うんじゃないのか」


「勿論。でも、補いきれる相手じゃない。だから、個人でも強くなってもらうために鍛えた。ファイブオンファイブはその仕上げ」


 ほーん。そういうことか。


「それじゃあそろそろ会場に」


 そう言ってオークスは大臣たちについていった。

 俺とベル、そして暇なのかルカさんも一緒に、ちょっと遅れてそれについていった。


「……やれやれ、手強いね」


 ベルがそうぼやいた。


「だな。ぶっちゃけディアナの速攻は割と簡単にできると思ってたんだが。実際見てみないとわからないけどキツそうだな」


「妹の方も想起発動で攻撃呪文が使えるのか?」


 ルカさんが俺にそう聞いてきた。


「あ、はい。そうです」


「へえ、大した姉妹だな。生徒で出来るやつなんて去年オークスが入学してくるまでヴィロウしかいなかった気がするが」


 セオドール・ヴィロウ。

 無差別級の選手で最強、つか、学院生最強と目されている怪物だ。やはりルカさんも知ってるのか。


「……ちなみに、どんな人なのかとか知ってますか?」


 俺もベルも、強い強いとは聞いていたが、どうも決闘クラブには参加していないらしく顔すら見たことがなかった。じゃあなんでそんなに強いんだよ、という疑問も含め、全く謎の人物だ。


「あー……、俺も直接話したことはないが。変人、というウワサはよく聞くな。仲良いはずのドラゴン寮の貴族連中にもちょっと避けられてるらしいぜ」


「変人、ですか?」


「ああ、そういう話なら僕も聞いたことはありますね。ヴィロウ家の長男なのに政治にも軍事にも一切関心がなくて、怪しい修行ばかりしているとか」


 ベルがそう付け加えた。そっか。そりゃ、ヴィロウも貴族らしいからな。貴族の情報はベルの方が詳しいか。


「怪しい修行?」


「いや、僕も詳しくは知らないんだけど。……あっ、もう会場に着いたみたい――」


「――やあやあディアナ君!今日のファイブオンファイブは楽しみにしているよ!」


「おはようございます!!ウィロス大臣!!ありがとうございます!!」


 前方から大臣とディアナの大声が聞こえてきた。

 そっちの方を見ると、ビシッと礼をしているディアナの姿が見えた。


 始まったか。


「なんだありゃ」


 ルカさんが困惑した口調でつぶやいた。


「あの二人、なんか会うたびにいっつも声の大きさで張り合うんですよ」


 俺はルカさんにそう説明した。

 ディアナとウィロス大臣の間で会話が発生すると、何の取り決めかは知らないが、お互いの声がどんどん大きくなり、最終的にお付きの人が無理やり中断するまでヒートアップしていくという謎の現象が発生する。


「今日は!!最大級の攻撃呪文を使わずに!!戦うそうだね!!」


「はい!!そうです!!」


「シャーロット君に!!鍛えられたと聞いているよ!!」


「ええ!!!それはもう!!!」


 そら、だんだんボルテージが上がってきたぞ。


「最大級の攻撃呪文は!!やはり楽しみだが!!それは五日目にとっておこう!!!今日は!!普段とは違う!!君の動きを楽しませてもらう!!!」


「はい!!!」


「――ところで!!!」


 大臣がそう叫んだ瞬間、ルカさんが「まだ続くのかよ」と苦笑いした。

 いや、そろそろストップがかかるはずだ。お付きの人たちの方を見ると、その中の一人が、すうっ、と大きく息を吸っていた。


「――大臣ッ!!!!試合開始十分前です!!!!」


 空気が震えた。

 さすが、しっかり溜めただけあって最大の音量だ。


「うむ!!では!!失礼させてもらう!!また後ほど!!」


 そう言ってディアナは選手控え室へ、俺たちは観客席の方へそれぞれ向かった。

 やっと嵐が過ぎ去ったぜ。


「……はは、姉貴と違って随分と賑やかだな」


 ルカさんが呟いた。


「賑やかすぎますけどね。なんであんなに違うんだか」


「それは私にもわからない。……ところで、あなたは?」


 会話に参入してきたオークスがルカさんに聞いた。


「んん?……ああ、俺はルカ・イクハルト。クライヴたちの、先輩ってやつだ。スカイジョストでクライヴと一緒に練習しててな」


 それを聞いたオークスは、「あなたが」と言った。


「知ってたの?」


「イヌワシ寮の無差別級のメンバーにスカイジョストの選手がいる。その人がその名前を何回か言っていた」


 へえ。

 そういえば、ルカさんがまあまあ強いと言っていた、リーラ・シュミットって人もイヌワシ寮だったな。


「もしかしてリーラ・シュミットとかいう人?」


 オークスが頷いた。


「んじゃあ準決勝まで進んだら俺と当たるわ」


「それは楽しみ。……そろそろ始まるみたい」


 おおっと。

 オークスの言葉で会場の方を見ると、すでに選手が入場していた。ど真ん中にディアナがいる。相手はオオタカ寮だ。


「相手の方に強い人はいるのかな?」


 ベルの質問にオークスは「さあ」と答えた。

 だが、すぐそこに座っている大臣が代わりに答えた。


「オオタカ寮のチームはなかなかの実力者が揃っているぞ!去年のレオミュールのようなスーパールーキーはいないがね」


 なるほど。

 さて、試合開始の合図の角笛が鳴り、試合が始まった。


 始まった瞬間、ディアナは想起発動の攻撃呪文を連射しながら前方に突撃。去年のオークスを思い出すな。

 対するオオタカ寮チームはバラバラに散開。まあ最大級の攻撃呪文を警戒したならそうするに決まってる。

 ディアナの先制攻撃は全員が防ぎきっている。ほうほう、確かに全員それなりの動きだ。去年のオオタカ寮チームとかあれで二人撃破されてたもんな。


 おっと、イヌワシ寮チームの他のメンバーのことを忘れてた。俺は他のメンバーを探して、一瞬発見に手間取った。

 なんと、会場の端っこに四人で固まって援護している。おいおい、完全にディアナ任せじゃないか。ちょっと消極的すぎじゃないか?


「レオミュールやあなたのような相手がいるならともかく。あれくらいは一人で倒せるくらいでないと」


 オークスがそう言った。なるほど、あれも訓練の一環か。


 だがディアナは実質的に五対一で戦っているにも関わらず、オオタカ寮チームを押していた。

 想起発動の強さよりは、むしろ位置取りの上手さの方が大きいだろう。うまいこと五人が視界に入るようなところに常にいるし、時々攻撃呪文で牽制して動きを牽制することで、死角に回り込まれるのを防いでいる。

 そして、それでも対処しきれない分は残りの四人がちゃんとフォローしているが、全体としてディアナが戦いを支配している。


 オオタカ寮チームが一人やられた。至近距離に迫られて一気に十数発の攻撃呪文をぶち込まれて吹き飛んだ。なんというオーバーキル。


 さらにもう一人。

 ディアナがそいつから視線を逸らして他のやつを攻撃している隙をついたが、どうやらディアナのフェイントだったようだ。待ってましたとばかりに杖をそいつの方に向け、たった一発のひ弱な攻撃呪文を余裕で飲み込んでぶっ飛ばす。


 その後もディアナが残った三人をサクッと撃破し、イヌワシ寮チームは誰一人撃破されずに完全勝利した。


「……どうだい?」


 ベルが俺に感想を聞いてきた。


「なかなか仕上がってるな。オオタカ寮チームはまとめてやられないためにバラけたが、それがアダになって逆に連携できずに各個撃破されてた」


「火力だけじゃないな。会場がよく見えている。」


 ルカさんも感心している様子だ。

 実際、思ったよりはるかに強い。去年のオークスより強いかも。そう思わせるくらいの迫力がある。


 これ、速攻できるか?俺の胸に不安がよぎった。

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