八話 魔法の実力
翌朝。
学院に入学してから初めての休日だが、休んではいられない。朝飯食って図書館に直行だ。さあ、まずは――って、閉まってるじゃん!
扉には「本日閉館」と書かれた板が掛かっている。どうやら休日は図書館も閉館らしい。マジかよ!
やることが何もなくなってしまった。
くそー。こうなるんだったら借りときゃよかった。重いし、かさばるし、寮には何冊も本を広げて作業できるスペースがなかったから借りてなかったんだが。
しょうがないから部屋戻って寝るか。
寮に戻る途中で例の女の子を見かけた。
明らかに図書館に向かっている様子だったので、俺は今日は休館みたいでっせ、と教えようとしたが、ノートと筆箱を抱えて走行していた彼女の背中は、俺が振り返った時にはすでに遠くなっていた。
「やあ、リオ。やっと見つけたよ!どこ行ってたんだい」
部屋に戻る途中で、疲れた表情を隠そうともしないベルハルトが俺を呼び止めた。
「図書館。今日は閉まってた」
そう言うと、ベルハルトは呆れた表情をした。
「やれやれ、六日間ずっと篭りきりでまた行くつもりだったのかい?熱心だなあ」
別に勉強してるわけじゃ無いけどな。
「それより、なんか用か」
「ああ、ほら。前に魔法が使える、って言ってただろ。お互いどれくらい使えるのか、ちょっと見せ合ってみないか」
なるほど。
俺もベルハルトが、というか周りがどれだけできるのかは気になってたところだ。考えてみりゃ、親が魔法使いなら学院に行く前に教わるのは何もおかしくないしな。
「いいね。どこ行くんだ?」
「“第五演習場”だ。あそこは自由に魔法を使っていいらしいよ。ただし、自己責任で」
そりゃそうだ。
俺たちは第五演習場に向かった。
「相変わらず何もないな」
第五演習場は、大きな体育館くらいの広さの、何もない殺風景な部屋だ。
相当頑丈に造ってあるとのことで、何重にもかけられた保護魔法で強化された壁はドラゴンの突進にも揺るがない、とかなんとか。
「じゃあ、えっと――どうしようか?」
「ノープランかよ。とりあえず自分の得意なやつを発動してみるとか?……≪オグニ エルデ イト トレヘ ヴォラーミナ テムクァム エングイス≫――」
俺は杖の先っちょから炎を噴出させた。それだけだと面白くないのでついでに蛇みたいにグネグネさせてみる。
「……すごいな。こんなことが出来るのか」
「ちょっとしたもんだろ。……じゃ、次はそっちの番で。確か円陣魔法だろ、得意なのは」
「うん。――」
ベルハルトが虚空に杖を向けると、空中に光の線で描かれた、いわゆる魔法陣が出現した。
そして、魔法陣はビカビカと輝きを強め、真ん中から何かが飛び出してきた。
これは、体が水でできた猫?
ベルハルトが生成した猫はその場でクルリと回ると、俺がさっきから出しっぱなしにしていた炎の蛇に突進した!
「はは、なるほど!俺の蛇を食ったってことか。なら、俺は――」
ベルハルトのキザな意趣返しを、俺が狼を象った風で吹き飛ばしたことを皮切りに、魔法で魔法を喰らい合う捕食の応酬が始まった。
空中を飛び回る獣たち。
土のクマが風の狼をかき消し、水のワニがクマを泥に変えた。そのまま泥でゾウを形成したら、炎のドラゴンでぶっ飛ばされた。こっちも負けじと炎のドラゴンを放ってドラゴン対決だ。両者が拮抗したので、ベルハルトが自分のドラゴンを強化しようと風を送り込こもうとしたが、それを察知した俺が横取りしてドラゴンを強化、フレアド○イブで消滅させた。
「くそ、また負けた!どうしたらそんなに細かく動かせるんだ」
「ま、慣れだな」
生成した動物を動かすコツを掴んだ俺の白星が多くなってきた。
この遊び、基本的には属性じゃんけんだが、それをどう覆していくのかを考えるのが面白いな。
「今の動き!雷みたいだった」
「すごいな、あいつらまだ一年だろ」
ん?
ふと周りをみると、いつの間にか生徒たちが集まり人だかりができていた。
「こんな遊びに観客がつくとはな。まあいいや、んじゃいくぞ」
気を取り直して、今度は砂でサソリを象ってみた、その時。
突然、どこからか飛んできた魔法にサソリが破壊された。
「やあベルハルト。こんなところで遊んでいるとはね。今のきみの姿を見たら、きみの家族は悲しむだろうね」
なんだこいつは。
金髪。七三分け。むかつく猫なで声。フツメンとイケメンの中間をいく微妙なルックス。他人に不快感を与えることに特化した表情。
悪いベルハルトみたいなやつが現れた。