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異世界転生してコーヒー無かったら普通世界の果てまで探しに行くよね?  作者: えびはら
学院編二年生の部:妖精の話し手
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七十五話 留学候補生

「それじゃあの。期日はもう少し先じゃ。ゆっくり考えるとよいじゃろう」


 俺は寮監のラズール先生の部屋を出た。

 ベルの言う通りだった。昨日の今日でラズール先生から交換留学についての話があった。


 オディガ=レムドレーラ連合王国の、レムドレーラ学院に来年の夏から一年間の留学。つまり、三年生をよそで過ごす。各寮から二名ずつ、合計八名が留学に行くそうだ。


 まあ、それ自体は「ふーんそうなんだ」って話だけど、重要なのはオディガ=レムドレーラ大陸には魔大陸の情報が記されたアンナの碑文があるということだ。

 しかも、たっぷりと時間がある。

 まあ一年間をフルで探索に使えるなんてわけはないが、それでも現地に一年も滞在できる、またとない機会だ。

 正直、このタイミングで碑文を巡ってしまいたい。


 問題となるのはそれまでに俺がフェアリー・トーカーになれるのか、というところか。


 後はまあ、向こうの言葉をある程度習得しなくちゃいけないわけだけど、これもどうやらそこまで大変じゃないらしい。

 オディガ=レムドレーラはかつて、うちの国、ライハルト王国のお隣の国の植民地だったそうだ。そこから色々あって独立と統一がなされたようだけど、その時の名残でお隣さんと使ってる言葉が一緒だ。

 で、そのお隣さんの使ってる言葉、ってのがライハルト語とよく似ているそうだ。まあ、地球でもヨーロッパ圏の言語はみんな似てるらしいからな。そういうことだろう。


 ……うーん、行ってもいいかな?


 他の候補者も気になるな。ベルには話がきてたようだが。

 あとは、まあ成績上位者にお声がかかると仮定して、マリーは絶対誘われるだろう。後ボーヴォラーク。そしてアレンかルイスのどっちか。

 オークスは、どうなんだろうな。腕っ節は強いが、試験の方はギリギリ上位三十番以内に入るくらいだからな。いや、十分すごいけどさ。


「僕?まあ行くけど。リオも一緒ならそれは嬉しいね」


 翌朝。

 俺はベルに留学に行く気はあるかと聞いてみた。


「言い切ったな」


「狙ってたからね」


 ああ、ベルはそうか。

 留学は各寮二枠しかないわけだし、そこに入って留学したとなるとポイント高いのか。


 さて、授業終わって図書館行ったらマリーにも聞いてみるか。


「留学、ですか?」


 俺は図書館で早速マリーに尋ねてみた。


「話きた?」


「はい」


 やっぱりか。


「行く?」


「行こうかな、とは思ってます。……リオさんは?」


 マリーも行く気か。

 んじゃ行くか!俺も。


「行く」


「本当ですか!……あっ、まだ決まってもないのに」


 マリーは妙にテンションが高い様子で反応した。どうした。

 それより、まだ決まってもない、というのはその通りで、一応希望者が留学生としてふさわしいかどうか、みたいなことはちゃんと会議するらしい。


「まあ、でも。大丈夫じゃない?」


「そ、そうだといいですね!……」


 相変わらず微妙にテンション高いな。


 それから何日か過ぎて、希望者を対象にした留学の説明会、みたいなのがあった。

 来た人数は俺含めきっかり八人。俺、ベル、マリー、ボーヴォラーク、アレン、それとオークス。後二人、オオタカ寮とイヌワシ寮の人はどっちも知らない人だった。

 説明会の内容は、既に知ってたこと以外では、当たり前だが向こうでとった成績はこっちの成績に組み込まれること、来週から週に三回、向こうの言葉を習得するための特別授業があることなんかだった。


 さてと。

 晴れて留学候補生になったわけだが、俺が習得しなくちゃいけないのは向こうの言葉だけじゃない。オディガ=レムドレーラ大陸の秘境、ケストラ大潟湖を探索するためにフェアリー・トーカーにならないといけない。

 ヒントは、「五感ではない感覚」だ。


 とりあえず、今妖精について知っていることから何か分からないかな?


 ええと。

 俺が一番よく知っている妖精に関係してることは、メイガン先生が見せてくれた妖精魔法だ。

 まず、妖精魔法を発動する時、何が起きてるのか、っていうことを考えてみよう。


 妖精が自立した意思なら、術者にとっては他人と同じ。他人に「こうしてください」と伝えるには、なんらかの形でその情報を伝達する必要がある。

 これが人間同士なら、一番手軽なのは言葉を発して伝えること。あとは、文字とか、ボディランゲージとかのように、視覚情報として伝達もできる。点字なんかは触覚を使って読むものだな。


 ところが、妖精には俺たち人間に備わってる五感が全くない。何しろ目に見えないエネルギーの塊だ。

 しかし、フェアリー・トーカーの呪文は通じる。術者と妖精の間で情報の伝達が起きている。ということは、なんの感覚も持っていないというわけではない。

 なら一体どんな感覚で、どんな情報を受け取っているんだろう。


 妖精魔法は想起発動もできる。

 想起発動をする時、術者は無言。そして普通はナゾのポーズだって取らない。なんの情報も発していない。つまり、外から見たらなんの呪文を発動するつもりなのか、全く分からない。

 だが、妖精はしっかりと術者の頭の中だけにあるはずの要求をこなすことができる。てことは、妖精は術者の頭の中が分かる?

 いや。というより術者の頭の中の想像は、実は頭の中だけにあるんじゃなくて、その外に情報として飛び出している。妖精はそれをキャッチしている、と考えるべきか?

 すると、想起(イメージ)というのはただの想像じゃなくて、想像を何かしらの形で頭の外へと発信しているのか?


 まてよ、じゃあ呪文ってのはなんなんだ?

 頭の中の想像が情報として伝達されるなら、呪文を唱える必要はあるのか?

 だけど、普通の呪文の想起発動でも、頭の中で呪文を思い浮かべるのと同時に想起(イメージ)する。そして、メイガン先生が妖精魔法の想起発動について、「呪文だけ思い浮かべればいい」と言った。「想起(イメージ)だけすればいい」ではなく。


 おそらく、呪文は必要なんだ。

 なぜかは分からない。それに、妖精がどうやって呪文を認識しているのかも不明だ。


 ……くそ、結局「謎の感覚とは何か」に戻ってきてしまう!

 つか、謎増えただけじゃん、これ!想起(イメージ)とは?呪文とは?また先生に聞いてみるしかないか。

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