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異世界転生してコーヒー無かったら普通世界の果てまで探しに行くよね?  作者: えびはら
学院編一年生の部:隠された封印
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五話 焦らしプレイ

 一瞬で意識が覚醒した。


 カーテンをしゃっ、と開けると外はすでに明るくなっていた。時計の針は七時ちょうどを指している。


 気がつくと、ベルハルト始め他のルームメイト達も全員が起きていた。


 というか。

 目が覚めた時。あの感覚は間違いなく魔法を受けた感覚だ。


 朝になったら絶対に起こしてくれる魔法がかかってるのか。

 すげえ、超ハイテクじゃん。JRが導入してる強制目覚ましかな?


「おはよう。……全員七時ぴったりに起きてる。学院のベッドすげえな」


「ああ、おはようリオ。どうやら目を覚まさせてくれる魔法がかかってるみたいだね」


 俺たちの会話を聞いて他の二人も、え、そうなの?とか、すげえ、とか言っている。


「確か今日から学院の案内だったか」


 そう。

 今日はまだ右も左も分からない新入生に向けての学院の案内、いわゆるオリエンテーションが一日がかりで行われる。

 もっとも、学院は超広いので一日で全て巡りきれるはずもなく、今日を含めて六日間掛けて行われるようだ。スケールがでかすぎる。


「それよりも朝食だよ!八時からだよね、楽しみだなあ」


 八時になったので部屋を出てエントランスへ降りていくと、昨日とは全く違う光景が広がっていた。

 中央には例の細長いテーブルがあったが一つだけで、代わりに小さな丸テーブルと四、五脚の椅子のセットがいくつも配置されていた。

 もうたくさんの生徒たちが来ていた。中央のテーブルから料理をトレーに盛っている。

 なるほど、バイキングってやつか。


「うわあ……!たくさんあるよ、何を食べようかなあ。……あっ、揚げ物だ!」


 朝からかなりテンションが上がっている同室のぽっちゃり君もといダリル・ペーグ少年は真っ先に中央テーブルに突撃していった。

 昨日の今日でまだ食う気かよ、とんだ食い意地だ。


「ダリル君も元気だなあ、僕は相変わらず食欲がないよ」


 ベルハルトが若干呆れた感じで言った。

 いや、それが普通だと思うが。

 俺は流石にレーズン入りのパン、ハムエッグ、そしてフルーツをちょっとずつと、控えめな感じにとどめた。


 それにしてもコーヒーがないのが辛すぎる。

 こういう飯を食べた時は特にそう思う。このメンツにコーヒーがいないとか、まさしく飛車角落ちの事態であり生殺しも良い所だ。


「新入生のみなさん!時間ですよ!さあさあ、早く口に入れたものを飲み込んで!……そこの男の子、頰にソースがついていますよ!――階段を登っている子達!これから学院案内です!こっちに来てください!!」


 案内役と思われる恰幅のいいおばはんが声を張り上げている。

 これからオリエンテーションが始まるようだ。

 まあ、両親から聞いてだいたいのことは把握してるし、これ自体に興味はあまりないが。


 重要なのは終わった後だ。


 午後三時に終わってから消灯の午後十時までの間――実に七時間もの()()()()がある。

 そう、この学院に入学した主たる目的、図書館での情報収集ができる時間だ。

 およそ十二年の雌伏の時を経て、今日ようやく俺の野望は一歩前進する。


 ははは、そう考えると笑いがこみ上げてくる。ダリルのことを揶揄できる身分ではない。


 ははは、ははははは。


「随分と楽しそうだね」


 隣にいるはずのベルハルトの言葉が遠く聞こえる。

 俺は、まあね、とだけ空返事をした。


 現在、昼食を終えて午後の部に突入している。

 濃密な午前だったはずだが、俺にとってはひどく緩慢に感じられた。


 “第五演習広場”は何もなかった。“第七薬学教室”は臭かった。“絵画回廊”は何百もの絵が飾られた回廊で、しかも絵が動くし、しゃべった。

 そのほか色々と巡り一旦寮に戻って昼食をとった。図書館のことで頭がいっぱいで、ろくに食えなかったが。


 今いるのは“戦場並木道”だ。

 ここはウッドボクシングとかいう、道路を挟んで十メートルくらいの木がヌルヌル動いて殴り合うという訳のわからない競技が行われている並木道で、学院の名所の一つらしい。


「こいつらはずっとこうやって――」


()()()()なんて言うな、()()()()と言わなくちゃ!」


 かなり食い気味のツッコミが、ルームメイトのルーク・エイロンから入った。


「……あー、この選手たちはずっとこうやって戦ってるのか?」


「いや、試合が行われるのは一日に三回なんだ。一ラウンド五分で休憩は二分で、どっちかが倒れるまで続く。ファイターウッズは強さによってE、D、C、B、A、Sのクラスに分かれていて、今歩いてるのはBクラス。注目は何と言ってもワイルドバッファローオーク!今一番ホットな選手で、早ければ来期にはAランクに――」


 なんかすごい早口で喋り始めた。

 どうやらこいつはウッドボクシングのオタクらしい。それも重度の。


 その後もルークはラジオのようにウッドボクシングについてのウンチクを垂れ流していた。まあおかげで残りの学院巡りが多少は早く過ぎ去ったように感じられたが、まさか三時間近くずっと途切れないとは思わなかった。

 どんだけ詳しいんだよ、マジで。


 だが。


 だが、ついにこの時がやってきた。

 今日巡る予定の場所は全て巡り、今俺たちは寮に向かっている。

 寮に着きさえすればそこで解散だ。


 俺の心はすでにクラウチングポーズを取っている。


 寮の扉が見えてきた。

 オンユアマーク。


 そして、扉をあけてエントランスに入り、案内役のおばはんがまとめに入った。

 ゲットセッッッ!


「ではみなさん、本日はお疲れ様でした。この後は自由に過ごしてもらって結構です。夕食は午後六時からここエントランスで食べることができます。以上です」


 パァン!!

 俺の心の中でピストルが鳴った。


 俺は図書館に向かって走り始めた。

次回、図書館!

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