表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生してコーヒー無かったら普通世界の果てまで探しに行くよね?  作者: えびはら
学院編一年生の部:隠された封印
46/93

四十六話 禁書庫

「――ッ!」


 視界が元に戻ってきた。

 さて、どんな世界だ?と言うか司書さんいるのか?

 ふう、と息を吐いて顔をあげた俺は驚愕した。


「な、なんだこりゃ……!?」


 異様な光景だった。

 紺色の空間――そう、空間、と言う他ない。上下左右どこをみても、夜空のような、空間、がどこまでも続いている。地面はなんだか硬質な感触だったが透明で、下を見ても空間がずっと続いているだけ。なんとも言いようのない滑らかさだ。

 だが、一番異様なのはこの夜空に包まれたような空間ではなく、この空間を覆うようにドーム状にぐるぐると回転している、おびただしい数の――あれは、本だ。


「こ、これって……」


 声のした方を見ると、よかった、マリーがいた。


「な、なあ、上の方にいっぱいあるやつって、あれ、本だよな?」


「そ、そう見えますけど」


「……何冊あんのかな」


 少なくとも、数えられる数ではない。だけど数百冊、とかいう次元じゃない、数千冊、いや数万冊はある。


「わ、わからないです。……ど、どうしましょう。なんだか、来てはいけないところへ来てしまったような……!」


 俺もそう思う。

 だいぶ前に、司書さんと会話したことを思い出す。この学院には、貴重な本や、危険な本もたくさんあると言っていた。そんな本は、普通生徒が手に取れるような本棚なんかに置いてないはずだ。


 ここは、そんな本が収められた、禁書庫、みたいなところなんだろう。

 こんなとこに入ったことがバレたら、処分は特別課題と勤労奉仕どころじゃないだろう。どう考えても一発退学だ。


「でも、どうやって出ればいいんだ?」


 はい。脱出の方法がわかりません。


「ええと、ここに司書さんがいれば――あっ!リオさん、見えますか?あれ、司書さんじゃないでしょうか」


 マリーが指をさした方向を見ると、なるほど確かに、かなり遠いが人影がある。しかも、その頭は灰色に見える。


「いきましょう!――」


 そう言って駆け出したマリーの後を追いながら、ふと俺の頭の中にある考えが浮かんだ。


――そもそも存在すら知られていない、普通のやり方では行けないような、隠された場所。


 冬休みに、闇の魔法使いデズモンド・グレンヴィルの封印の場所について、母さんが言った言葉だ。

 司書さんという番人が守護する、たった一冊の本の中の世界。まさに、隠された場所だ。

 いや、そのさらに向こう側かもしれない。グレンヴィルは、別の魔導書の中に封印されているのかもしれない。

 そしてその魔導書がここに収められているのかもしれない。この空間を覆う、おびただしい数の本のうちの一冊に!


 もし。

 もし、今俺たちが駆け寄ろうとしている人影――司書さんがそれを狙っているとしたら。

 だけど、司書さんが狙おうと思えばすぐに見つけてしまうのでは?


 そうとは限らないだろう。エルドリッチ校長がグレンヴィルを封印したのは百数十年前だ。司書さんどころか、そのおばあさんさえ生まれていないような遠い昔だ。たぶん、司書さんが封印の場所を知ろうとしたら、校長から聞くしかない。


 校長は司書さんを信頼して禁書庫の番人を任せた。

 だけど、完全に信頼しきっていなかったとしたら?あるいは、当然の安全意識として――司書さんに、()()()()()()()()()()()()、全てを教えていなかったとしたら。

 そしてそのことに、司書さんが気づいてしまったとしたら。


 俺たちは今、とんでもない危険に向かって――


「――司書さん!あの、ごめんなさい!お昼ご飯を食べに図書館を出ようと思って、それで、その」


 マリーがグレーのポニーテールの後ろ姿に声をかけた。


 ……ちょっとまて!

 その足元に誰か倒れてる。あの、倒れているグレーのポニーテールの人は誰だ!?


「――なぜあなたたちがここに!」


 振り返ったその顔、そして驚愕に溢れたようなその声は、紛れもなく司書さんだった。


「ご、ごめんなさい!わたしたち、図書館にいたんですけど、お昼の時間になったので図書館を出ようと思って。あの、それで鍵がかかってたので、司書さんに開けてもらおうと――」


 マリーの説明に、司書さんはしばらくの間沈黙した。


「……なぜ図書館にいたのです?今日は試験日のはずでしょう」


「えっと、それは、その……」


 どうしよっかなー。

 足元のアレ、無視して話進めたほうがいいのかなー。つか、マリーは気づいてないのか?


「……足元が気になるようですね、クライヴさん」


 司書さんの言葉の後に、視線を下にずらしたマリーが悲鳴をあげて後ずさった。


「誰だと思います?見てくれはとても似ているでしょう?」


 足元に倒れている、もう一人のグレーのポニーテールの女の人は、確かに司書さんに近いシルエットのように見えた。

 となると、お姉さんのレベッカさん、ということになるが――


「答え合わせをしましょうか?――」


 司書さんはそう言って、足元に倒れている人の顔を足で動かして、こちらに顔が見えるようにした。


「――!」


 なんと、足元に倒れている人は、司書さんだった。

 思わず立っている司書さんと見比べた。目を閉じてはいるが、全く同じ顔だ。

 お姉さんのレベッカさんも確かに似ているが、別人だとすぐにわかるくらいには違う。ここまでそっくりじゃない。


「え、ど、どういう……」


 マリーが困惑した様子で声を漏らした。


「分かりませんか?そんなこと、決まりきっているように思えますが。学年の一位と二位だと言うのに、存外鈍いものですね」


 司書さんは言いながら杖を一振りした。

 すると、司書さんの顔がゆがみ、その顔が変化した。


「――私です。ミランダの姉、レベッカ・シーリーですよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ