四十一話 襲来再び
バトルロイヤルの試合が終わって一夜明け、魔法競技会の最終日がやってきた。
といっても、競技は全て終了し今日は大ホールで表彰式があるだけだが。
表彰式では、各競技の成績優秀者が表彰された後に合計得点が発表されるらしい。そういえば得点掲示板が空欄になってたな。
だが、気になるのはなんと言っても昨日のことだ。
あの謎の人物の言葉通りなら、今日、この表彰式にまたワイバーンがやってくる。
「――どうしたんだい?なんだか落ち着かないね」
ベルだ。
「……ん。ああ、なんとなく、な」
俺がそうから返事すると、ベルは「そうかい」とだけ言ってそれ以上は言わなかった。
表彰式は滞りなく進行した。
成績優秀者が表彰されるたびに歓声が上がり、俺とベルの時はひときわ大きな歓声が上がった。
全競技の表彰が終わり、いよいよ合計得点の発表だ。
まずは一年生の得点から発表されるようだ。
「――一年生の部の得点を発表します。“紅色のイヌワシ寮”、千五百二十八点!……“黄色のオオタカ寮”、千四百九十七点!……“紺色のドラゴン寮”、千六百十点!……“若草色のツバメ寮”、千六百三十五点!」
ツバメ寮の得点が発表された瞬間、歓声が爆発した。
一年生の部は優勝したか、良かったな。
「それでは、二年生の部の得点の発表に移ります。“紅色のイヌワシ寮”、――!?」
遠くから響く笛のような音。
そして、忘れもしない耳をつんざくような咆哮!
すぐにホールが破壊される音が聞こえ、巨大な影がなだれ込んできた。
――ワイバーンだ、本当に来た!
「――あっ!?どこいくんだ、リオ!?」
俺は席から弾かれるようにして立ち上がり、ホールの出口へと駆け出した。
くそ、何をやってるんだ俺は。俺が図書館行ってどうなるっつーの!
だが、図書館へ向かって全速力で走る俺の足を止めることはできなかった。
大丈夫だ、図書館には司書さんがいる。
あの人はムチャクチャ強いはず。そう簡単にやられはしない。
ホールを飛び出し、一直線に図書館に向かう。
行く途中でやつら――グレンヴィルの封印を探しているやつら――に会ったらどうしよう。ああもう、やっとそんなことに気づいたのか!
だが、俺の心配は杞憂に終わり、俺は誰とも会うことなく図書館にたどり着いた。
図書館の扉は閉まっている。
俺は扉に突っ込んで押し開けた。
「――!!」
「……?どうしたのですか、クライヴさん」
図書館は静寂そのものだった。
一目見た限りでは荒らされた様子はない。受付のカウンターでいつものように座っている司書さんが、いきなり飛び込んできた俺を訝しんでか、声をかけてきた。
「え、あ、あの。だ、誰かこの図書館に来たりはしませんでしたか?」
「いえ?……あなたこそ、どうしてこんなところにいるのです?侵入警報が鳴ったはずです。ホールからここまで来たのですか?」
う。
「それは、その……まあ、はい」
「なぜ?」
え、えーっと。
「……わ、分かりません。その、なんか、勝手に」
もはや言い訳ですらない。
が、まあ俺だって馬鹿なことをしてる自覚ぐらいあった。それでもここに来てしまったんだから、分からない、というのはまるっきりウソでもない。
「どうして――いえ。ごめんなさい、無遠慮でした。外の状況は分かりませんが、大変なことになっているのでしょう……?責めるようなことを言って申し訳ありません、不安でいっぱいでしょうに」
おお、なんか慰めてくれた。
えっと、とりあえず乗り切ったかな?
「事態が治るまでここにいるといいでしょう。――ご心配なく、私はそれなりに腕に自信がありますから」
よ、よかった。
……あ、でも、これから来る可能性はあるよな。
どうしよう。そのこと言ったら、どこで聞いた、って聞かれるよなあ。うーん、でも聞きたくて聞いたわけじゃないし、素直に言っちゃうか?うーん。――
「――警報が解除されたようです。もう安全だそうですよ、連絡がありました」
結局図書館には誰も襲撃してこないまま事態が収まってしまった。
「あ、あの。すみませんでした」
「いえ、あなたが無事ならそれが何よりです。……一度寮に戻ってみてはいかがですか?ずっとここにいても仕方ないでしょう」
それもそうだな。
俺は司書さんの言葉に従って図書館を出て、寮に戻った。
「――まったく!どうしたんだ、一体!いきなり飛び出して……無事だったから良かったけど!」
寮に戻ると、ちょっと怒った様子のベルが待ち構えていた。
「その……悪かった」
「……はあ、話してくれるかい?」
うぅ、どうしよう。
封印を狙ってるらしいことくらいは言ってもいいか?母さんの「ワイバーンと戦ったらもう当事者」理論を適用すれば問題ないはずだが。
でも、バトルロイヤルで聞いたことは――
「――わかった、僕が当てる。……グレンヴィルの封印を狙ってるんだろ?ワイバーンをけしかけてきたやつらは。その関係だ」
マジか。
「え、知ってんの?」
「ライゼル家だってそこそこの貴族だからね……それくらいの情報は入ってくるさ」
な、なるほど。
「で、リオはなにかで知ったんだ。今日の表彰式に襲撃があって、しかもやつらがどこを探すのか」
うええ、すげえ。
ほとんど言い当てられてるし。
「……当たり。バトルロイヤルの時にそういう会話を聞いちゃって。……それで今日襲撃があって、図書館を探索すると」
「図書館?じゃあ、リオは図書館に行ったのか。……で、どうだったんだい」
「何も。この通り、傷一つなく帰ってきた」
俺が大げさな身振りで自分の無事をアピールすると、ベルは唸った。
「それじゃあ図書館を探索はしなかった?……でも、ワイバーンは来たよね。ウソだったとは思いにくいけど」
二人でしばらく黙っていると、唐突にベルが「そういえばさ」と切り出した。
「司書さんはいたのかい?」
――え?




