三十七話 決勝戦
俺の心にジャストミートしたあの魔法陣ダンジョンを作ったのはまさかのバーリスらしい、という衝撃の事実が発覚して以来、俺は日本のどこかでオールバックをキメたバーリスがヨレヨレのTシャツを着て半ズボンを履き、テレビの前にあぐらをかいてRPGをプレイしている姿を想像し一人で笑うなどしてダメになっていたが、ウィロス大臣がやってきて「決勝戦期待しているよ」的な言葉をかけてくれたおかげでデュエル決勝の存在を思い出した。
俺は今、急いで決勝の会場に向かっている。ありがとう、大臣!
決勝のお相手は、攻撃呪文の想起発動を習得しているガトリングモンスター、シャーロット・オークスだ。
すでにファイブオンファイブではその火力と強さを嫌という程見せつけてくれたが、チーム戦という状況とはいえベルやボーヴォラーク嬢に負けてはいるから、どうやら無敵じゃないらしい。
まともに撃ち合ったら瞬殺される。
てか近づきたくねえ。距離取りたいけど、取れる気がしねえ。
「――アレン・マクヴァティとの戦いは見た」
あん?
振り返ると、少し紫がかった赤いショートヘアーの後頭部が見えた。
「……どうも」
――シャーロット・オークス!
間近で見るのは初めてだが、こうして見るとマリーほどじゃないがかなり小柄だ。
「わたしと同じ――戦いの中に身を置く者から訓練を受けた人の動き。それも、マクヴァティのような付け焼き刃じゃない」
おいおい。言われてんな、あいつ。
「ライゼルやボーヴォラークはそうじゃなかった。でも私は負けた。それにレオミュールも――リオ・クライヴ。今度は一人。あなたも、わたしも。……会場で待ってる」
えええ?
言うだけ言って向こう行っちまった。なんだったんだ一体。
「――ただいまより、“デュエル”一年生の部決勝戦、リオ・クライヴとシャーロット・オークスの試合を開始いたします!両選手は入場してください!」
会場に着いてからしばらく経ち、いよいよこの時がやってきた。
入場した瞬間に爆音の歓声に襲われた。観客多っ!
向こう側からはオークスがトコトコ歩いてくる。
俺たちは十歩分くらい離れた所定の位置に立ち、互いに杖を向けた。
「――それでは、礼!」
試合開始だ。
「――≪エルケ≫!」
早速束になって飛んできた想起発動の攻撃呪文を、俺は防御の呪文でなんとか逸らした。
うわ、これ、やばいな!
視界が攻撃呪文で赤く染まるんですが、怖!
俺はさらに防御の呪文を唱えて攻撃を防ぎながら後退する。
オークスは俺の動きに対応して素早く距離を詰めてくる。
だが、俺は後退し続けることはせず、突っ込んでくるオークスを中心に弧を描くように動き側面をとった。
「≪ククエ≫!」
アレンとの戦いでも勝負を決めた加熱の魔法直当てだ。
続けて攻撃呪文で追撃するが――あぶねっ!
オークスは一瞬で態勢を立て直し、もうこちらに想起発動の魔法を連射していた。
俺が放った追撃の攻撃呪文は相殺され、さらに俺の元にオークスの攻撃が殺到する。
くそ、ちょっと掠った――しかし、あれ食らってひるみもしないのかよ!
これは防御の呪文で受けたってしょうがねえな。このまま旋回しながら避けるしかない。
俺はそのままオークスの周りをぐるぐるしながら、≪オグニ エルデ≫の呪文で炎を放った。
が、下がらねえ!斜め前、ギリギリを避けてこっちに突っ込んでくる!
だがここでラッキーパンチ!
距離が近すぎたか、俺がとっさに放った≪エルケ≫の呪文にオークスが激突し足が止まった!
攻撃してもいいがどうせ当たって一発だ、俺はオークスに向かって炎をばら撒きながら全速力で距離を取った。
オークスは流石に目の前に迫る炎に突っ込むようなことはせずに後ろに下がった。
よし、これで余裕ができた。
ずっと思ってたことだがオークスの破壊力は試合会場が開けた場所であることも大きい。なら、障害物さえあればオークスの攻撃力は激減するはずだ!
「≪ハメ フォルメーレ タッレム≫!――≪オテラー≫、≪オテラー≫、≪オテラー≫!」
俺は土の塔を次々と構築した。
≪オテラー≫の呪文は直前に唱えた呪文の効果を再現する呪文だ。ちゃんと呪文を唱えない分“想起”が難しいが、それでも想起発動よりは百倍簡単だ。
試合会場は瞬く間に林立する土の塔でいっぱいになり、オークスの攻撃呪文も飛んでこなくなった。やりぃ!
攻撃呪文は邪魔されて届かないが、炎なら障害物に沿って広がっていくから届く。焼き尽くしてやる、≪オグニ エルデ≫!
「――≪エクア フルエ メグネー≫」
あっ。
オークスが大量の水をドバドバと放水し、炎は鎮火、土の塔も泥となって脆くも崩れ去ってしまった。
ですよねー。
オークスは放水を続けている。
当然俺も阻害しようと試みるが、オークスが杖を一振り、二振りしてガトリング攻撃呪文をばら撒くだけで軽くあしらわれる始末。うひー、あっさり防戦一方なんですけど。やっぱ火力狂ってるわー。
やがて会場に水が満ちて、土の塔は全壊して泥となり、足元はさながら沼地のようになってしまった。
あれ?これかなりまずい状況じゃない?
俺の懸念通り、足を取られて動きが鈍った俺の元にオークスのガトリング攻撃呪文が容赦なく飛んでくる。まあ、足を取られてるのは向こうも同じだが、なんたって火力が違いすぎる。
やば、このままじゃ封殺される。
まず足元なんとかしないと!凍らせるか。
「――≪フローゲー≫!」
俺はジャンプしながら足元を凍らせた。そうじゃないと自分の足まで凍っちゃうし。
ふう、これでひとまず足元はしっかり――って、これはこれで踏ん張りにくいな。
ああもう、結構滑るんですけど!
――ん?滑る?
……あ!
出来んじゃん、俺。滑って移動すること!
ええと、とりあえず全面凍らせればいいよな?
「――≪フローゲー レーテー フルティティル≫!!」




