三十五話 対決アレン・マクヴァティ
魔法競技会二日目、デュエル一年の部二回戦が終わった。
俺とオークスは一回戦のように相手を瞬殺して勝利し、アレン・マクヴァティはグレゴリー・ガネルと当たったが危なげなく快勝し、今日この後行われる三回戦にて俺と戦うことになった。
「やあクライヴ!君と戦えることになって嬉しいよ、僕自身の手で君を無様に負かすことができる――父上の伝手で軍隊式を仕込んでもらった。君を叩きのめせばイザベルも少しは溜飲が下がるだろうさ」
おっと、絡んできやがった。親愛なるアレン・マクヴァティ様のお出ましだ。
しかし、こいつも軍人に鍛えてもらったのか。だいぶ流行ってんな、軍隊式。そして相変わらずボーヴォラークには頭が上がらないようだな。
「――試合開始五分前です!選手は会場に集合してください!」
招集の号令がかかった。
「行くか。いつまでも口喧嘩してたってしょうがない」
「ああ、どちらが上かは戦いで決めよう」
俺とアレンは試合会場に入場し、お互いに向かい合っていた。
かなり観客がいるな。
決闘クラブでは何度も戦ってきたが、こうして見ず知らずの生徒に囲まれてこいつと戦うのは、入学直後の騒ぎ以来か。
「――それでは、礼!」
相手に一礼をして、試合開始!
「≪オグニ エルデ≫!」
きたきた。
早速炎の魔法を放ってきた。
が、炎、つうか熱の扱いで俺に勝てると思うなよ!
「≪インテルクラーデ アルドゥーレム ミー≫」
自分に耐熱の魔法をかけた俺は恐れることなくアレンが放った炎を受けた。効くか、こんなもん!
俺は炎に呑まれながら≪ウフェンデ フルティティル≫の呪文を放った。アレンは油断していたか、反応が遅れて避けきれずに俺の呪文に掠った。
「なんだと……!?」
はは。まさかそのまま受けるとは思わなかったか。
が、しかし。あいつも驚いているのは口だけだ、すぐにこっちに鋭い攻撃呪文が飛んでくる。
なるほど。早くて正確だ、鍛えたってのはウソじゃないらしい。
アレンはこっちに距離を詰めながら攻撃呪文を連発してきた。
近距離の撃ち合いで強引に当ててくる気か。俺は後退しながら防御呪文でアレンの魔法をいなすが、まあ後ろ歩きより前に走ったほうが早い、アレンとの距離はどんどん縮まっていった。
かなり距離を詰められた。攻撃が激しくなってきている。
この状態はちとまずいな。引いたところで追いつかれるが、このまま撃ち合ったら負けるかも。
うーん。だけどアレンは今の、大股で五歩か六歩分くらいの距離から詰めてこない。あいつにとってはこれくらいの距離が適切なのか。
ならこっちからもっと詰めるか。
俺はアレンの方を向きながら、横に走って距離を取るそぶりを見せる。
狙い通りアレンがこっちに向かって走ってきたので、俺は素早く切り返して逆にアレンの方へ突進、三歩分もないくらいの至近距離まで詰めた。
この距離なら直接当てられる、いくぞ!
「――≪ククエ≫!」
俺は呪文を唱え、アレンを直接加熱した。
「ぐっ!?」
アレンはたまらず飛び退いた。
バリアーが守っているとはいえかなりの高熱だからな。
俺の足は止まらない。ひるんで無防備になったアレンに一発攻撃呪文を当てながらさらに接近、もう一発放ったが態勢を立て直したアレンがなんとか防御の呪文でいなした。反応はええ。
だが、もう杖で相手の体に触れそうな至近距離だ。
真面目に撃ち合ってサドンデスでもいいが、流石にリスキーだな。俺は≪オグニ エルデ≫の呪文を唱えて炎を放ちながらアレンの側面に回り込んだ。
当然こんな至近距離で火炎をぶっ放せば俺も巻き込まれるが、耐熱の魔法をかけてあるので問題ない。俺は炎に包まれたアレンに追撃の攻撃呪文を放った。
アレンの体を守るバリアーが砕け散り、アレンが吹っ飛んだ。
「――そこまで!勝者、リオ・クライヴ!!」
ふう、俺の勝ちか。
まあ、そこそこ鍛えてきたようだったが、俺の方が強くなってたな。
「いやあ、見応えのある戦いだったぞ、クライヴ君!マクヴァティの攻撃もなかなか苛烈だったが君の獰猛さが上回ったな!炎を防ぐ魔法をかけたのかね?」
早速ウィロス大臣のご来訪だ。
「ええ、まあ」
「だが平気とわかっていても簡単に自らを火中に投じれるものではあるまい。たとえ我が身を炎に包まれようとも動じない精神力!うむ。素晴らしい――」
どうやら今ウィロス大臣はあまり時間がないらしい。
お付きの人に引きずられながらまくし立てる大臣の声が遠のいていった。
「やれやれ、あの人も熱心なもんだね……。おめでとう、リオ。これであとは決勝でオークスに勝って優勝するだけだ」
後からやってきたベルが俺にそう言った。
「簡単に言うなよ。さっきの戦い見てただろ、あれと同じ状況で相手がオークスだったら負けてた」
「でも、そうはさせないんだろう?それに、君はまだ円陣魔法とか使ってないじゃないか」
「まあ、そうだけどさ」
アレンとの戦いでは使う機会がなかったが、俺はベルと比べれば簡単なものながら円陣魔法を習得していた。
オークスのガトリング攻撃呪文に対抗するには、円陣魔法の助けがいるだろう。まあ、ベルと戦ったオークスに俺のちゃちな円陣魔法がどれほど効果的か、というのはぶっちゃけ疑問だが。
「じゃ、俺は寮に戻って少し休むわ」
「あれ、オークスの戦いは見なくていいのかい?」
「相手が誰だか知らんが、どうせ瞬殺だろ。見たってしょうがない」
寮に戻って一休みした俺は暇になっていた。
そして、こうして時間ができると俺の足は、このようなお祭り騒ぎにも関わらず自然と図書館へと向かう。
「あ、こんにちは」
図書館のいつもの机に行くとマリーがいた。
「どうも、昨日はお疲れ。……なんかすげえアグレッシブに戦っててビビったんだけど、あれ上級生かなんかに教えてもらったの?」
俺は昨日のファイブオンファイブのマリーの動きについて聞いてみた。
いやあ、めっちゃ跳ねてたからな。例のムーンサルトとか。
「あっ、はい。ああいう戦い方をする上級生がいて、その人に教えてもらったんです」
「へえ。意外と隠れた実力者がいるな。決闘クラブにはそんな人いなかった気がするけど」
「ええ、その人は舞踏クラブに所属しているそうですから」
な、なるほど。
あの動きはダンスの動きなのか。にしちゃあアクロバティックすぎないか?
「で、今何読んでんの」
「あ、えっと。明日のクイズ王の勉強です」
ああ、そういえばマリーは三日目の学院クイズ王に出演するんだったな。
「――あら?学院クイズ王に出場するのですか?それは楽しみですわ」
あ、司書さんだ。
「あ、えっと、こんばんは!あ、あの。司書さんは学生だった時は何に出たんですか?」
「私ですか?……ええ、私も学院クイズ王にはずっと出場していました。ちょうどあなたのように本の虫だったものですから……。その時は個人戦の部で六年連続優勝しました」
うはっ、すげえ。
「す、すごいですね……!」
「あなたもきっと優勝できますわ、こんなに図書館に篭る学生は私以外にはあなたしかいませんもの」
それからは、司書さんの激励を受けてクイズ王の勉強に励むマリーを尻目に、俺はゆったりと読書をして過ごして寮に戻った。
明日は、まあデュエルの準々決勝と準決勝があるが、俺がちらっと対戦相手の試合を見た限りでは、普通に勝てそうな感じだ。
メインイベントはクイズ王だな、マリーがどれくらい活躍するかが楽しみだ。




