三十三話 ファイブオンファイブ
さて注目の試合、ファイブオンファイブ一年のイヌワシ寮チーム対オオタカ寮チームの戦いが――あっ!
なんてこった、オークスのガトリング攻撃呪文で早速二人も撃破されてしまった!これはきついんじゃないか?
足が止まったオオタカ寮チームの中で、マリーだけは前に出てオークスを相手取った。開始から大ピンチだがようやくマリーの実力を見れる時がやってきた。
オークスの想起発動の攻撃呪文、そして他の四人からも魔法が飛んでくる。
そうか、今はマリーだけが突出してる状態だから実質五対一か、うわぁ。
マリーの元に魔法が殺到するが、これを大きく跳んで――いや、今すごい跳んだな。四メートルぐらい横に跳んだぞ。なんか魔法使ってるのか。
横に跳んだマリーはイヌワシ寮チームの一人に攻撃を仕掛けるが、これはオークスに防御された。≪エルケ≫の呪文は唱えて発動した。想起発動してこなかったか、よかったよかった。
そしてイヌワシ寮チームにさらに攻撃が。
どうやらオオタカ寮チームの他の生き残りが立ち直ったようだ。これで少しは楽になるか?
マリーは激しく跳び回って撹乱しながら攻撃している。かなりの機動力だ。
しかし、すぐにオークスが移動先を読んでの攻撃、いわゆる偏差撃ちをするようになったが、マリーも途中で軌道を変えて上手く対応している。
他の生き残りの方はどうだ?
うーん、押されている。
マリーの相手はオークスに任せることにしたらしい。四対二だと流石に厳しそうだな。
状況は依然として不利か、このままだと生き残りが撃破されて囲まれることになるが――おお!
マリーはオークスと他の選手の間に挟まれるような位置に来て後方に跳び上がり、綺麗なムーンサルトで選手たちを飛び越えて着地。
するとマリーとオークスの間に他の選手がいる形になり、この状態なら少しの間オークスはマリーに手出しができない!
オークスが声を上げて警告を発するが、マリーの攻撃でイヌワシ寮チームの選手が二人ダウン!これにはウィロス大臣も「なんと鮮やかな!」とニッコリだ。会場も大歓声に沸いている。
だがオークスの方も黙ってはいない。すぐさまガトリング攻撃呪文で一人撃破すると、マリーに突進する。
おお、どんどん近づいていくぞ。マリーの大ジャンプに追いついている、こっちもなんか魔法を使ったか。
恐らくオークスがそう意図したのだろうが、マリーはイヌワシ寮チームの他の二人から引き離されて、再びオークスとタイマンの形になったが……あーあ、こりゃ完全に対策されたな。オークスの攻撃呪文はもはや偏差撃ちの段階を超えて詰将棋だ。行き先をことごとく潰されて動きが取れなくなっている。
そしてついに呪文の直撃を食らってマリーのバリアーは破壊、同時に他の二人の方も生き残りの一人を処理し終えた。イヌワシ寮チームの勝利だ。
「やはり最初に二人撃破されてしまったのが痛かったな。しかしながらあの時のレオミュールの動きは!それだけにやはり最初のあれが悔やまれるものだ!そしてオークスは、いやはや彼女だけで四人撃破している!暴れさせると手がつけられんな」
この大臣は。
長年見てるだけあって分析も立派なもんだ。
オークスの暴れっぷりは見ての通りだが地力もあるな、想起発動だけじゃない。マリーも一回出しぬきはしたけどその後は完敗だったし。最後の食らいつきは凄かった。
いやー、それにしても。
マリーがあんなアグレッシブな戦い方をするとは思わなかった。なんかこう、もっとどっしり構えるような戦いを想像してたんだが。
練習期間には相当訓練を積んだんだろうけど。誰かああいう戦い方をする上級生に伝授されたのかな?今度聞いてみよう。
次の試合はツバメ寮とオオタカ寮だった。
最初の試合のように円陣魔法を発動しようとしたベルだったが、いきなり突っ込んできたマリーに妨害された。
オオタカ寮チームの他の選手もマリーに続き、試合は乱戦となった。
ベルはなんとか隙を見つけて態勢を立て直そうとしていたが、しつこく張り付くマリーの対応に追われているうちに他の選手たちの戦いに決着がついた。
オオタカ寮チームはマリーの他に二人を残してベル以外のツバメ寮チームの選手を撃破し、三対一になったベルは攻撃を捌ききれずに撃破されてツバメ寮は全滅、オオタカ寮チームが勝った。
「なるほど、ライゼル君が抑え込まれるとツバメ寮チームは苦しいな」
そういえばツバメ寮の上級生の一人が、ツバメ寮はエース以外の選手の戦いでは不利、と言っていたがこういうことか。
その次はドラゴン寮とイヌワシ寮の試合で、この試合はかなり長引いた。
さっきの試合のように最初から乱戦だったが、やはりオークスの実力は頭一つ抜けているらしい。ドラゴン寮のエースであるご令嬢が食い止めるが、時々振り切られる場面があった。
しかし、ドラゴン寮の他の選手たちは突然オークスに乱入されるようなことがあっても割と対応した。
拮抗した状況が続いたが、しばらくしてついにイヌワシ寮チームの一人が撃破されてからは、状況は一気にドラゴン寮に優勢になった。
結果的にそうなったのか作戦だったのかは分からないが、なんとガネルが大胆にもオークス以外の三人を一人で相手取り、他の四人でオークスを囲む形になった。
普段からアレンやルイスのように、ご令嬢に命令されるのは慣れているのだろうか。四人は見事な連携を見せて粘るオークスを撃破。
その間しっかりと耐えるどころか一人撃破していたガネルに四人が加わって、イヌワシ寮チームの残り二人を圧殺してドラゴン寮が勝利した。
「いやはや、見事な試合だった!やはりドラゴン寮は皆がそれなりの使い手だ。特にガネルは二番手としては飛び抜けているかも知れん」
試合展開自体はさっきの試合と似ていたと言える。
エースが封じられて、他の選手の質の勝負となるとドラゴン寮は強い。全員結構いい動きをしていた。
つか、今回の試合のMVPはガネルだろ!あいつあんま戦ったことなかったけど普通に強いな。
はあ、しかしこうして観戦してるとあれだ、喉が乾く。アイスコーヒー飲みてえ。
次のオオタカ寮とドラゴン寮の試合でも、ドラゴン寮が全体の質の高さを見せつけた。
お互いがお互いを警戒したか、序盤には先程までの試合と打って変わって両チームともに堅陣を組んでの防御に徹し、撃ち合いが始まった。
じれったい撃ち合いが続きながらもお互いの距離が徐々に縮んでいき、少し近づいたところでオオタカ寮チームが動いた。マリー以外の四人がまっすぐ突っ込み、マリーは例の大ジャンプでドラゴン寮の陣を飛び越え、他の選手とマリーでドラゴン寮チームを挟み撃ちにした。
が、しかしオオタカ寮の選手たちでは、ドラゴン寮の精鋭たちを足止めするには力不足だったようだ。マリーの反対側にいたボーヴォラークが暴れに暴れ、味方を少し巻き込みながらも正面から四人を薙ぎ倒してしまった。
マリーの方も二人を撃破したが、それでもボーヴォラーク含め三人が残り、マリーはドラゴン寮チームの連携攻撃を破れず敗北した。
「ボーヴォラーク嬢が爆発したか!オオタカ寮はイヌワシ寮との試合と同じ展開を狙ったようだが……。ボーヴォラークをレオミュールが抑えれば――いや、いずれにしても質の差で負けるか」
さて、次の試合で一年のファイブオンファイブは最後だ。
オオタカ寮は一勝二敗で残念ながら優勝はない。残るはツバメ寮とイヌワシ寮の試合だが、ここでツバメ寮が勝てば二勝一敗でドラゴン寮に並び、ツバメ寮が勝っているので優勝するが、イヌワシ寮が勝てばドラゴン寮が優勝だ。あ、イヌワシ寮も優勝できないや、これ。
ツバメ寮とイヌワシ寮の選手が入場してきた。
ベルが暴れるか、オークスが暴れるか、だな。
ベルが抑えられると厳しいだろう。他の選手たちはイヌワシ寮の方が強いだろうからな。
試合開始の角笛が鳴った。
最終試合の始まりだ。




