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異世界転生してコーヒー無かったら普通世界の果てまで探しに行くよね?  作者: えびはら
学院編一年生の部:隠された封印
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二十八話 会議は踊る

 冬休みが終わり、再び学院での寮生活が始まった。


 冬の学院はとんでもなく寒い。

 生徒は支給の防寒魔法がかかったコートを着用し、学院の至る所でひとりでに動くスコップがせっせと雪かきをし、湖を覆う氷を例のネッシーのような怪物が砕く音が時折大音量で響き渡った。


 が、しかし、学院はどことなく熱っぽい雰囲気に包まれていた。

 第四百八十七回寮対抗魔法競技会が三週間後に迫っているからだ。


 寮対抗魔法競技会は、およそ四百九十年前に学生間の親睦を深め、魔法技術を向上させることを目的に開催されて以来毎年開かれている、学院最大のイベントだ。

 まあ、運動会のようなものだが、各寮の生徒たちが掛ける熱意は尋常じゃないらしく、毎年競技会の前後数週間は他の寮の人間とは口もきかなくなるような生徒もいると聞いている。親睦を深める競技会がそれでいいのか?


 魔法競技会にはたくさんの競技がある。

 決闘のような戦闘競技は華のある競技の一つだろう。自分の知識を披露したくてたまらないやつはクイズ大会なんかに集まる。

 射的系も充実しているかな。狙撃大会、早撃ち大会、空飛ぶ馬に乗りながら狙ういわば三次元流鏑馬とか。

 冬季ならではの競技もある。

 でかい雪だるまを操り、ボール代わりの雪玉を転がしてゴールにシュートするサッカーのような競技とか、スノーボードっぽいやつもあった。

 他にもまだまだあるようだが、数が多いので全部は把握していない。一人が出られるのは二競技までだしね。

 で、その競技での各寮の成績に応じて得点が加算され、それを競う、ってわけだ。

 うちの寮はというと、その、なんというか、そんなにいい結果を出せていないらしい。だから、他の寮と比べても本気度が高い気がする。


「さて、では問題の一年の話をしよう。……どうする?」


 俺とベルは、突然上級生に呼び出されて寮の会議室っぽい部屋に来ていた。


「ワイバーンキラー二人をどこに出すか、だろ。総合は無理にしても一年優勝は取りたいな」


「ファイブオンファイブで二人とも出せば確実に優勝できるだろうけど……」


「いや、やはりここは二人とも別々の競技に出して四種目で優勝を狙いたい」


「だけど実技系に偏っちゃわない?」


「いいんじゃない?知能系はレオミュールが出てきたらおしまいでしょ」


 上級生たちは何を話しているのか。


 それは、俺とベルを何の競技に出すのか、という作戦会議だった。


「レオミュールが実技系に出てくる可能性はあるぞ。オオタカ寮は頭のいい奴なんていくらでもいる」


「でも今年の一年のトップファイブにいるオオタカ寮って彼女だけでしょ?やっぱり知能系に出てくると思うけど」


「それに、いくらワイバーンキラーの一人だと言っても決闘クラブのメンバーじゃないんだろ?」


「レオミュールの話ばかりしないでくれ!今年のドラゴン寮は例年以上に粒揃いなんだ、クライヴもライゼルも出さないと特に戦闘競技は奴らに総なめにされるぞ」


 会議は紛糾していた。

 俺は始め上級生たちの会話を真面目に聞こうと努めていたが、すぐに俺の処理能力を超えてしまい、今はほとんど聞き流している状態だ。


「はは、大変だね……」


 ベルが疲れたような表情でそう言った。


「俺たちの意見も聞いたらどうなんだ、って話だよな。……ベルは何に出たい?」


「うーん。まあ戦闘競技は一つ出ておきたいよね。残りは――円陣魔法の腕を競うようなものがあればいいんだけど。同い年には負けない自信があるからね。リオは?」


「ああ、俺はまあ戦闘競技二つでいい。冬休みに結構鍛えたからな、試してみたい」


「そういえば手紙にも書いてあったね、ご両親直々の特訓だって?」


「だいぶしごかれたよ」


 俺たちは結構な間会話していたが、上級生たちの議論は一向に結論が出ていないようだった。


「――ああもう!こうなったら本人に聞けばいいんじゃないの!?」


「そうしてみるか。――君たちは何か希望する種目はあるかい?」


 上級生たちが今更俺たちに聞いてきた。


「僕は戦闘競技と、円陣魔法の腕を競うようなものがあれば」


 ベルがそう言うと、上級生たちは唸った。


「円陣魔法、か」


「やっぱりファイブオンファイブには向いてるんじゃない?円陣魔法って便利でしょ」


「いや、俺はむしろデュエルの方が向いてると思うが」


「だけどクライヴに負け越してるって聞いてるよ」


「だったらクライヴを出さなきゃいいだろ?他の一年の相手はどうなんだ、レオミュールには勝てるのか?」


「ちょっとまって。そもそも論点がずれてない?ライゼルが求めてるのは“円陣魔法を競う種目”よ。戦闘競技は厳密には違うわ。――」


 あーあ。

 船頭多くして船山に上る、か。話が進まねえ。


「これはもうお前が決めるしかないぞ」


「じゃあ、ファイブオンファイブと……結局、そういう種目はあるのかい?」


「あー……、お!“魔法陣ダンジョンアドベンチャー”とかいうのがあるぞ、数々の魔法陣が仕掛けられた迷宮の謎を解いて脱出せよ、だと。学年不問。……確か、学年不問の競技は学年が低けりゃ低いほど得点にボーナスがつくんだったよな?」


「いいね、じゃあそれにしよう。……あの、参加したい種目が決まりました」


「――だからボーヴォラークのデータが、何だって?」


 上級生たちは相変わらず絶賛議論中だった。


「ええと、参加したい種目が決まったんですけど、ファイブオンファイブと魔法陣ダンジョンアドベンチャーです」


 ベルの意を決した宣言に、上級生の一人が間髪入れずに議論を再開しようとしていた。


「しかし、ファイブオンファイブは非エース同士の戦いで不利になる可能性が――」


「――もういいでしょ!本人がそう言ってるんだから!クライヴは!?あなたも自分で決めちゃってちょうだい!そうじゃないと決まる前に本番になっちゃう!」


 上級生の女の人がヒステリックに叫んだ。


 さて、俺はどうしようか。

 戦闘競技は、一対一の決闘のデュエル、五対五のチーム戦であるファイブオンファイブ、三十二人から一人生き残るバトルロイヤルの三つが有名だ。

 ま、普通にデュエルとバトルロイヤルでいいか。


「じゃ、デュエルとバトルロイヤルで」


 俺の言葉に同級生たちがどよめいた。まあ、激戦区だしな。

 だけど、激戦区ぐらいじゃないと、自分の限界なんて確かめられないのも事実だ。それに――


「いけるのか?」


「自信はあります。特にバトルロイヤルは」


 バトルロイヤルの会場は()()だ。屋外のどこ、とかじゃない。屋外全域――厳密には扉や窓のような仕切りを介さずに移動できる場所――が会場のサバイバルゲームだ。

 そして冬休みの特訓はまさにそんな状況で最もよく生きる。

 なにより、屋外なら雪が降る。今の俺は雪上ならワイバーンにだって一人で勝てる。たぶん。


「じゃあ決まりだ。――最初からこうすれば良かった」


 上級生の一人がボソッと呟いた。

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