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異世界転生してコーヒー無かったら普通世界の果てまで探しに行くよね?  作者: えびはら
学院編一年生の部:隠された封印
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二十六話 あれから

 ワイバーン襲撃事件から一日が経った。


「どう思う?」


「どう考えても誰かの差し金だろ」


 俺とベルは昨日の事件について話していた。


「まあだろうけど。一体誰が、何の目的だろう?」


「ウィロス大臣来てたからな、暗殺……にしちゃあ戦力不足か。しかも集中攻撃食らったのはホールだしな」


 そう。

 学年集会に行くまでの道のりの中でもちらっと見かけたが、魔法技術大臣ウィロスがまたしても学院を訪れていた。何か特別なことと言ったら、このことがあるだろう。

 しかし、暗殺目的ならあまりにも杜撰すぎる。目的はなんだ?


「ううん、なんだろう?……先生たちの足止め、とかかなあ」


「あー、裏でこそこそしてた系か、それならホールにいっぱい来たのもわかるな。古株四人と元軍人が固まってたし」


「でも何がしたかったんだろうね。……それに、ずいぶん荒っぽいやり方じゃないか?先生たちだって、こんなことくらいすぐに推測するだろう」


 だろうな。こんなやり方じゃベルが言うように警戒されるに決まってる。

 学院は非常事態を宣言し、事態の究明が済むまで全授業を休講にするとの通達を出した。今は先生および王国から派遣された調査員たちが血眼で学院を調査していることだろう。

 ひとまず陽動説だとすると、こんなやり方を強行したのは、絶対に成功させたかったからか。

 あるいは、コソコソしたところでどうせバレてしまう、何らかの事情があったのか。


 考えられるのは、“黒い冠団”の残党の仕業か。

 目的は――俺の見立てが正しければ――この学院に封印されているであろう奴らのボス、デズモンド・グレンヴィルの解放、とか?


「――リオ?どうしたんだい、何か考え事をしているようだけど」


 俺はベルに自分の仮説を話してみようかと思ったが、やめた。

 自分で考えておいて何だが流石に妄想が過ぎる。“黒い冠団”なんてのは百六十年前に壊滅した組織だ。


「なんでもない。……それよりどうする?寮から外に出ちゃいけないんだろ、何日缶詰にされるんだ?」


 事の収束は意外と早かった。

 事件から四日後には厳戒態勢が解除され、通常授業が再開された。

 先生たちからの事件に関する詳細な説明はなかった。完璧に修復されて綺麗になっていた大ホールで全生徒を集めた集会が開かれたが、「何者かが故意に学院をワイバーンの群れに襲わせたということのみが判明しています。今回の事件で死傷者はいません。一部建物の損壊以外の学院の被害は確認されませんでした」とだけ、エインズウェル先生が発表した。


 それからしばらくの間は学院中がワイバーン襲撃事件の話でもちきりになり、根も葉も無い噂話が数多く出回り、情報は錯綜していた。

 そして、その中でワイバーンと戦った俺たち四人の名は、一足早く俺たちの戦いのことを知ったそれぞれの寮の一年たちによって“ワイバーンキラー”とかいう大層なあだ名が盛んに喧伝された結果、学院中に広まった。そして、授業再開の翌日には、さすが耳が早い、ウィロス大臣が早速訪ねてきた。

 特に中間試験で全科目満点を取ったというおまけがついているマリーの名の売れようはとんでもなく、ウィロス大臣からは当然魔法技術省への就職を打診されていたし、それまであまり人とも関わらず無名だったマリーは、何処へ行っても自分の噂話が聞こえてくるので滅入っているようだった。


 対して、例のボーヴォラーク侯爵家のご令嬢は面白くなさそうにしていた。

 結果的に無事だったから良かったものの、元はと言えば彼女の意地っ張りで他人を巻き込んだ、ということでエインズウェル教授からは雷を落とされ、ドラゴン寮の生徒には露骨に優しいバーリスにさえ、心を容赦なくえぐる嫌味を言われていた。

 その鬱憤は彼女の取り巻きらしいアレンと、もう一人のベルブック伯爵家のルイスとやらに向けられたようで、二人は“私はレディーを置いて逃げ出した臆病者です”とマントにでかでかと刺繍された格好で数日を過ごしていた。


 が、生活自体は平穏そのもので、授業決闘図書館の日常をすぐさま取り戻した。

 俺は相変わらず授業では模範生として振る舞い、放課後になると図書館に直行してマリーと勉強し、週に一度の決闘クラブで戦いの技術を磨いた。


 まあ、変わったことがあるとすれば決闘クラブか。俺とベルはワイバーンキラーとして名が広まったことで上級生からの決闘の申し込みが殺到するようになった。ほとんどの一年は俺たちに対して尻込みするようになったが、アレン、そして地味に参加していたベルブック家のルイスだけは、失ったご令嬢からの信頼を少しでも回復させようと躍起になっている様子で、俺たちに何度も挑んできた。

 まあ、なんだかんだこいつら二人はトップ層なだけあって普通に強い。しかも必死に戦ってくることもあってひやりとさせられることも少なくない。


 そしてあっという間に一ヶ月が立ち、震えるような寒さになって冬休みが迫るとともにその足音が聞こえてきた――期末試験である。はっや。

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