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異世界転生してコーヒー無かったら普通世界の果てまで探しに行くよね?  作者: えびはら
学院編一年生の部:隠された封印
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十八話 猛襲

「――≪ククエ(熱せよ) エウラム(空気を)≫!」


 その呪文で何が起きたのか、おそらくベルには理解できなかっただろう。

 なにしろ熱するだけだから、目に見えない。

 

 突然体が高熱に襲われたて驚いたか、ベルの動きが止まった。

 だがあの呪文では熱することができるのは一瞬だけ。攻撃の手を休めず連発だ!


「≪ククエ(熱せよ) エウラム(空気を) フルティティル(強く)≫!」


 今度は火力を上げる。≪フルティテル(強く)≫は手軽に呪文を強化したい時によく使う。


「くっ!?――」


 流石に初見殺し戦法は効果てきめんだ。


 だが、あまりダメージが入っている感触はないな。意外と平気そうだ。

 が、しかし、たとえ僅かでも、正体不明のダメージが継続的に襲ってくるなんて恐ろしいことこの上ない。

 必ず対処をしようとする。攻撃の正体に当たりをつけ、効果がありそうな魔法を発動しようとする。


 その機はすぐに舞い降りた。

 ベルも分かってはいただろう。この状況で魔法を発動しようとすれば、俺がその隙を狙ってくるなんてことは。

 だからと言って、このままこの攻撃を受け続ければ、どのみち敗北だ。


 ベルは一か八か、魔法を発動する方を選んだ。

 そしてその賭けは――杖を持たない方の腕で俺の≪ウフェンデ(叩きつけよ)≫を受けたベルが勝った。


 マジかよ、チェックメイトだと思ったのに!


 ベルの魔法陣が発動した。おそらく周囲を冷却――


――待て。じゃあなんであの魔法陣は()()()()()()()()()


 口が勝手に≪エルケ(妨げよ)≫と唱えた。


 ベルの魔法陣からはまばゆいビームが発射され、俺の防御呪文に妨げられて逸れていった。


 こうなったらもう作戦なんてない。考えている暇もない。

 すでにベルは次の魔法陣を展開しかけている。


「≪ウフェンデ(叩きつけよ)≫――」


 ベルの魔法陣が輝いた。

 このまま撃てば、ぶつかり合ってよくて相殺、あるいは力負けかもしれない。


「――≪フルティテル(強く)≫!」


 とっさに俺は、呪文を強化する文言を加えた。


 ベルの魔法が、俺に届くギリギリのところで攻撃呪文とぶつかりあった。

 俺の攻撃呪文はベルの魔法を飲み込んだ。そのままベルに向かってまっすぐに飛んでいき、直撃を食らってベルのバリアーは砕け散った。


――俺の勝ちだ。


 ベルは大の字になって倒れ、俺も力が抜けて地面に座り込んだ。


 その時、拍手と歓声が沸き起こった。


「いいぞ、ライゼル!素晴らしい戦いだった!」


「よく戦った!」


「相手は誰だ?」


 当たりを見渡すと、決闘クラブの他の参加者が全員、こっちを見ていた。

 笑顔、感心した表情。バーリスは面白くなさそうに鼻を鳴らしている。


「ああ。二人とも一年生とは思えない戦いだった。――チョコレートを食うか?」


「あっ、いただきます」


 ラッドフィード先生が俺たちにチョコをくれた。


 うまい。

 が、くそ、チョコ食ったらコーヒーが飲みたくなってきた。


「――いや、いや、いや!いやはや!全く素晴らしい!決闘クラブには毎年驚かされる、なあエルドリッチ!」


 な、なんだ?

 いきなり異様にテンションの高い人が現れたぞ。


「私は毎年初回の活動を必ず訪ねる貴方に驚かされてばかりだが。……ああ、だが素晴らしい戦いであったことは確かだがね。ライゼル、そしてクライヴ」


 声のした方を見て俺は固まった。


 なんとこれは、うちの校長のオグマ・エルドリッチと――その隣には、ハゲ頭の細い爺さん。この人は、魔法技術大臣のアレスター・ウィロス!護衛っぽい魔法使いをぞろぞろ引き連れている。


「また新しい逸材が現れるとは感動の極みだ!これから六年間は視察を増やさねばなるまい」


「その分の公務を部下に押し付けた上でな。先日も私はかつての生徒から、君が学院の生徒であるかのように足繁く通うので仕事が増えるばかりだ、と嘆く手紙を受け取ったよ」


「ああ、ああ。君たちが育て上げた生徒は、全く優秀な部下だとも!どんなに仕事を与えても完璧にこなす。おかげで私がこうして学院を視察できるというわけだ」


 反省の色がねえ。


「あの円陣魔法!ライゼル家はどうしてこう才気溢れるものばかり生まれるのか!それに比べうちのボンクラ共ときたら――ところでクライヴ君、君はアイザックとリリアの子かね?」


 アイザックとリリア。

 俺の父さんと母さんの名前だ。知っているのか。


「えっと、多分そうだと思います」


「いや、間違いない!二人の面影と才能をありありと受け継いでいる!あの二人も素晴らしい逸材だった。彼らが“闇の魔法対策委員会”に勤めることが決まったと聞いてすぐに最高級のワインを彼らに贈った」


 お、おう。


「もちろん君もこの学院で真に才覚を目覚めさせることだろう!職の心配はしなくて良い、六年後には最高のポストを用意しておく」


 な、なんというゴリ押し。

 まさか母さんも父さんもこれで就職したのか?


「ああ、それと――」


「大臣、お時間です」


 側に控えていた魔法使いの人が遠慮のない口調で割り込んだ。


「――残念だ!もし時間を止められたなら!だがそれは腕の立つ魔法使いにとっても極めて難しいことだ――不可能ではないがね。では、また会おう!しばしばこうして顔を出させてもらう。君たちのような人間はちょっと目を離した隙に別人のように成長してしまうからな――」


 大臣はお付きの魔法使いたちに引きずられるようにして帰っていった。

 あんな扱いでいいのかとも思うけど、ああでもしないといつまでも居座っちゃうんだろうなあ。


「な、なんというか疲れたね」


 ベルが弱々しい声でそう言った。

 俺なんかああいうのに絡まれるのは今日で二回目だぜ、ったく。


「本日の決闘クラブの活動をこれにて終了する。次回の活動は一週間後に同じ時間だ。以上、解散」


 バーリスがそう宣言し、今日の決闘クラブの活動は終わった。

 あぁ、なんか疲れたなぁ。


 ……よーし。

 ちょっと時間あるし今から図書館行くか!

(大臣の)猛襲


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