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この不可思議な世界にて  作者: 三郎冠者
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第一話:不可思議な出来事

この不可思議な世界において……


 身体が怠い……まだ少し、眠い。この心地良い状態のまま、ダラダラと過ごしていたい……。昨日、引っ越し業者と共にやってきた荷物を、善は急げと一気に整理をしたから、今日はゆっくりと過ごす予定だった。今日は特に用事も無いし、食事は寮母さんが作ってくれるはずだから、このまま寝ていても、バチは当たらないだろう。


 ……ところで、どうして部屋がこんなにカビ臭いんだ……? 何かがおかしい。心地良かったはずの空気が一変し、頭が醒める。目を開けると……真っ白で、昨日寝る前に見ていた天井は、見知らぬ、黒い石造りの天井になっていた。


「……は?」

 あまりの事に、我ながら呆けた声が出た……聞いた事の無い声で。


 身体を起こして周囲を見回す。昨日、整理したはずの机やクローゼット、テレビにPC、何もかも無い……全く知らない部屋だ。耳に違和感を感じて触ろうとする……が、その前に手が黒い、その知らない手で、違和感を感じた耳を触ると、耳は尖っていて……。


「は? いや、え……どういう……?」

 思わず立ち上がる。全面石造りの、カビ臭い無骨な部屋。デカイ木製の机が真横にある……周囲は大量の棚と、本棚、そして少し離れた部屋の端っこに、ポツンとクローゼットが一つ……全く知らない部屋だった。


 自分の身体を見れば、何も着ていない。肌の色も、見知った肌色ではなく、真っ黒。……言葉が出ない、此処は何処だ? 俺は誰だ? 何が有った? これは夢か? 夢にしてはハッキリとし過ぎているが、認めたくは無い。


「誰か……誰か居ませんか!?」

 知らない声を張り上げるも、返答は無い。冷静になりたいが、頭が追い付かない……怖い。


「と、取り敢えず、何か着る物……」

 現実逃避のつもりでは無いが、今誰かに見られたら、明らかに不審者だ。そう思い、端に見えていたクローゼットの中身を探ると、全身を覆える真っ黒いローブがあった。一先ずこれを着る。


「本当に……何処だ此処……」

 どう考えても、俺の知っている部屋じゃないし、何より俺が俺じゃ無い。俺はこんな背が高く無いし、肌も黒く無いし、耳も尖っちゃいない。こんな俺は知らない。


 もう一度周囲を見渡せば、扉が見える。一先ず出よう、そう思い扉に向かって歩き出して数歩、パキッと、乾いたナニカが折れる音がした。足元を見ると、真っ黒い、今着ているローブと同じ様な布がある……恐る恐る、興味本位で布をめくる。


「……っ!」

 声にならない悲鳴とはこんなものかと思わされる。布の下から現れたのは、ナニカに全てを吸われたような人の死体。


 思わぬ事に、身体は後退りをしていた。ガタッとクローゼットに当たる音がする。その音と同時に、この部屋の上から音がする……誰かが来ている。慌てて隠れようとするも、頭が回らず、突っ立ったままの身体。


 扉を開けて入ってきたのは、眼鏡を掛けた老人だった。此方に気付くと同時に、俺の目線の先を追う……死体がある。


「違います! 俺はこの死体とは無関係で! ……そもそも俺は此処が何処かも分からなくて!」

 間違いなく、誤解を招いていると思い慌てて弁明をするが、老人は聞いちゃいない。死体と俺を、交互にじっくりと見て……懐から棒を出し、静かに此方に向けた。


「%@^*$\_&#%&*$^_:>?“+」

 何を言っているのか、サッパリ分からない。ただ明らかに誤解をされているのは分かる。


「本当に違うんです! 俺、気付いたら此処で寝転んでいて、怪しいとは思うんですけど……信じて下さい!」

 必死に弁明をするも、老人は棒を此方に向けたまま、何かを話している。


「|*%&:+*^%$@*^%$」

 老人が棒を振るうと、さっきまで無かったはずの影が足元に出来ていて……上を見上げると……。


彼の冒険譚はこの日より始まる。

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