術師2
『先ほどの術は亮平殿の仕業か?』
部屋で秀光と談笑していると宗茂が部屋に入るなりそう言った。
『バレましたかね』
『やはり亮平殿か、いや助かったのだ』
『助かる?』
『秀光様、秀実様が屋敷に来られましたが丁重にお帰り願いました』
『…兄が素直に帰った?』
兄 秀実はこうと決めたら曲げない性格なのを秀光は知っている、それが目的を果たさずに素直に帰るわけがない。
『亮平殿の術に驚かれた様です』
(さっきの わーわー聞こえたのは それか)
『リョー、君は術が得意なのかい?』
得意か?と聞かれてもどう答えて良いものか悩んだ。
なにせ術と言われるものを使ったのは今日が初だ。
『どうなんだろなぁ…?誰とも比べた事ないから分からん』
『そうか、僕は術が苦手だから僕の屋敷に行ったら術師に見てもらうと良い』
しかし秀光の言葉を宗茂が遮る。
『いえ、あれを見る限り伝説の術師と遜色ない程でした』
『おぉ、そんなに凄いんだ』
伝説と言われても俺には全くピンと来ない。
『んー 褒められるのは嬉しいけど今日初めて術ってのを使える様になったから本当に凄いのか分からん』
『あの様な術を使えるなら すぐに前線に出て戦えるだろう』
『戦う?俺が?』
『うん。そこで私からのお願いなのだが…』
宗茂はチラっと秀光を見ると すぐに俺に視線を戻す。
『この後 秀光様の屋敷に行かれる様だが、どうかそのまま秀光様の家臣として仕えて欲しい』
『家来になれと…』
この世界で他にやる事があるかと聞かれれば
【元の世界に戻る方法を探す】これ以外にはない。
戻る方法を探す事だけに集中したからと言って必ず見つかるかは分からないし
なにより そこまで必死に戻りたいとも思わない。
『あぁ 亮平殿が秀光様の家来として傍に控えて居てくれると安心だ』
『…俺は遠い異国から来たばかりだから この国の事も常識も何も分からない、ただ秀光も宗茂さんも悪い人には思えない』
『僕はお人好しと良く言われるからね』
『それにこの国でやる事もやりたい事も特にない、だから仕えろと頼まれたら それはそれで良いかもなと思います』
『うん。そう言ってくれると助かる』
『ただ 俺は権力で弱い者を一方的に攻撃したり、踏ん反り返る輩は嫌いだ。この先 秀光がそうなった時はすぐに旅に出る、それでも良いのなら』
『はは、大丈夫だよ。僕は人に上下はないと思ってる、それに僕はそんなに長く生きられないと思うし』
『長く生きられない?』
『うん。国王を兄が継いだら僕はこの国に居られない たぶん敵地に無謀に突撃する命令を下されると思うよ』
『秀光様、そうさせない為に秀光様に次期国王を継いで頂きたいのです。何よりそれが民の為でもある』
『でも兄を押し退けてまで王になるつもりはないよ』
『殺されかけたのに まだ兄に気を遣ってるのか』
お人好しにも程がある。
俺は思わず笑ってしまった、呆れが半分混じっているが。
『しょうがないよ、兄にはそれだけ世話になったんだ』
『そうか、まず暫くは秀光の家来としてお世話になるよ』
『うん 宜しくね、ただ僕と居ると命の危機を感じる事が多々あると思う。その時は真っ先に逃げてくれるかな。僕は剣術があるから心配しなくていい』
つい数日前に敵に斬られ殺されかけた男が何をと思ったが
それは単に兄の軍勢であり、父の民でもある兵に攻撃する事を躊躇っただけだと俺は後で知る事になる。