四大貴族の一人ドルドラ登場
「こんなのおかしいだろ! やっぱりこの街は狂ってやがる!!」
いくらヒールハイが平和そうに見えても全く危険がないわけでもないので全員で街を見ていた時だった。
街の中心にある噴水広場から大きな叫び声が聞こえてきた。
何事かと近づけば冒険者らしき格好をした二人の男が木から吊り下げられている。
「俺達は奴隷を解放してやろうとしただけだ! なのに何でこんな犯罪者みたいな扱いされなきゃいけないんだよ! 明らかに相手の方が悪いだろうが!!」
叫びながらも縄を解こうとしているのか必死で身体を揺らしたり足をバタつかせているが、しっかり括られているのか解ける様子は微塵もない。
「……あれ何?」
「見たままだ。奴隷を解放する為南の農場に襲撃をかけて返り討ちにあったみたいだがそもそもこの街に奴隷はいない。いや、いるにはいるが扱いは……」
トクメがいつの間にか男達の過去を引き出し説明している時だった。
「ヴィルモント! ローブも着ずにこんな日光の中を歩くとは気でも触れたか!?」
いきなり大柄の男性がトクメに大きな布を被せてきた。
「!!? 何だ、何が起きた!?」
流石のトクメも急に視界が閉ざされた事に驚き暴れているが、相手も布が外れないよう必死に押さえつけている。
「ヴィルモントって……もしかしてトクメの事を言ってる?」
「トクメ? まさか人違い、か……? すまん! 銀髪など他には見ないからヴィルモントと勘違いしてしまった!」
「銀髪とな!?」
大柄の男は慌てて布を取ろうとしたが、何故かダルマが男の服を掴み動きを止めさせた。
「うおっ、と、銀髪がもう一人? こんなにいるとは聞いていないが……」
「そのヴィルモントも銀髪と言ったな今! 銀の髪は妾達世界最古の怪物である証でありしかも先祖返り故の銀髪! ならば妾の子供である可能性が高い!」
「なっ、なっ!?」
「そう、その通り! 妾は心が読めるのじゃ! ヴィルモントもその力があるのじゃな!? ならばもう確実にヴィルモントは妾の子供である事が確かではないか! そなたは四大貴族のドルドラか! ヴィルモントは何処におる!? この街の西か! ならば今す、がっ!?」
相手に話す隙を与えず興奮した様子で勢いよく話し続けそのまま走り出そうとしたダルマを止めようと、ドルドラは咄嗟に服を掴み返した。
「ちょっと待て! お前がヴィルモントの親だと? いやそれより声が大きい! 少し待ってくれ!」
「うむ、待つぞ! いくらでも待つぞえ! それでいつまで待てばよい? 五分か? 十分か? ようやく我が子に会えるのじゃ! 百年かかろうと妾は待ち続けるぞ!」
「さ、流石に数分では無理だ。まず落ち着いて俺からも話をさせてくれっ」
ダルマの勢いに完全に飲まれているドルドラを横にゼビウスは今も布に包まれもがいているトクメに視線を移した。
気づけばトクメが元の姿に戻っていたのだが、布に全身包まれているおかげで誰も気づいていない。
「……お前いつまでそうやって遊んでんの?」
「遊んでいるわけではない。遊んでいるわけではないが……ゼビウス、少し、その……」
「?」
「トクメ? どうしたの?」
「ムメイは来るなっ!」
「っ!」
何か起きたのかとムメイが心配して近づこうとすると鋭い声で止められ、ムメイは身体をビクッと震わせ伸ばしかけた手も引っ込めた。
トクメは布のせいでその表情は見えていないようだがしっかり見ていたゼビウスはため息を吐き、トクメに近づくと軽く布をめくった。
「ああやっぱり。ムメイちゃんは気にしなくていいよ、この大きな布が絡まったせいで包帯取れただけだから」
「ゼビウス!」
「はいはい傷を見せたくないんだろ、見せてないしこのまま布で隠しておいてやるからさっさと巻き直せ」
「……」
ゼビウスが布を持ち上げ周りから見えないようにするとトクメの包帯を巻き直す音が聞こえてきたが、同時に不機嫌な空気も漂ってきている。
「ふむ、もういいぞゼビウス。さあムメイ、今なら思う存分側に来てもいいぞ」
「…………」
ようやく包帯を巻き終えたトクメが両手を広げるが、ムメイは何も言わず逆に離れていった。
トクメは少し首を傾げそれでも両手は広げたまま近くが、ムメイは完全に警戒した様子で近づいた分だけ後ずさってしまう。
「な、なあゼビウス。なんかトクメもだがムメイも様子がおかしくないか?」
「トクメはいつもおかしいから大丈夫、特に今は『お父さん』呼びで理性剥がれてるから。ムメイちゃんは……まあ九、八割方トクメが原因だから放って……そっとしといてあげな」
「? 大丈夫ならいいんだが……」
「あい分かった! 今日の今夜じゃな! ならば妾達はヴィルモントのいる城から一番近い宿に泊まりそなたら四大貴族が揃い次第向かうとしよう!」
「お、おう……」
親子としては大丈夫ではないがそこまで首を突っ込む事ではないとゼビウスは放置を決め、丁度背後でもダルマとドルドラの話し合いも終わったようだった。
「……あいつ勝手に宿決めてるけど誰が金払うと思ってんだ」




