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悪党の街ヒールハイ

 ヒールハイは悪党の街として有名で、ありとあらゆる犯罪がひしめき治安も悪く他の街からの評判は最悪である。

 一般的にはそう認識されており、ムメイもそう聞いていた。


「何ていうか……聞いていた話から想像していたのと全然違うわね……」

「本当にここが悪党の街と言われているヒールハイなのか?」


 あまり街について詳しくないシスでさえその評判は知っていたのだが、実際のヒールハイは街並みは綺麗に整っており争う声はなく人々も特に何か怯える様子も感じられない程穏やかな雰囲気が漂い治安も良さそうに見える。


「悪党の定義って結構あいまいだしな。俺からすれば教会関係者が悪党だし、誰にとっての悪党かという話だろ」

「その『誰』が強い影響力を持っていれば尚更だな。まあこの街を治めている四大貴族と呼ばれている者達が一般人から見れば悪党に分類されているのも理由だろう。そういうわけだ、ムメイはシスから離れてこちらに来い」

「何がそういうわけ?」

「何か起きてからでは遅いからな、私の側にいたらいい。父親であるこの私のな」

「…………」


 蠱毒に操られていたとはいえ初めて『お父さん』と呼ばれたトクメはもう一度呼んでもらいたくしきりに『父親』を強調しているが、その時の記憶が全くないムメイは普通に気持ち悪がり更に離れて距離を取った。


「……なあ、シスも俺の事お父さんって呼んでみない?」

「えっ」


 そんなトクメにつられたのかゼビウスもシスに尋ねてみると意外そうな声を出されたが、ムメイと違い嫌がっている様子はない。


「お父さんが無理なら違う国とかの言葉でもいいから、教えるし」

「え、と……。…………」

「…………」

「あー……その、嫌ってわけじゃないんだ。ただ、いざ呼ぼうとするとちょっと恥ずかしいから、待っててほしい……」

「……そっか、俺は気は長い方だからゆっくりでいいよ」


『父』と呼ぶのが恥ずかしいだけなら何の問題もない。ポスリと頭に手を置いて軽く撫でるとシスは嬉しそうに目を細めたのでこれはこれでいいかとゼビウスも満足気に頷いた。


「あ、そうだ。ムメイは後遺症とかなかったか?」

「ん? ああ、大丈夫。蠱毒に入られた前後の記憶がないだけで身体には何の異常もなかったよ」

「そっか、良かった。確認しようにもトクメに今まで以上に邪魔されて話しかけるどころか近づく事も出来なくて……いや、殺されないだけいいのかもしれないんだが……」

「うんうん……うん?」


 ムメイの心配をしているみたいだがそれだけで、照れているとか特にそんな気配は感じられない事にゼビウスは疑問に思った。

 それしか手段が無かったとはいえキスをしているのならもう少し話しかけるのに躊躇ったり照れたりするなど意識してもおかしくはないのだが。


「あっ」

「ゼビウス?」

「いや、何でもない。気にすんな」

「? 分かった」

「(そういやオルトロスにキスの概念なかったな、俺達が気にする必要なかったじゃん)」


 犬に限らず犬系魔物の愛情表現は基本相手を舐める事にある。

 あの時シスは口を合わせただけで舐めてはいないしむしろアレは蠱毒をムメイから引きずり出し攻撃する為だけの行動であり、それ以外の目的も何も全く無かったらしい。


「(そもそもシスってキスを知ってんのかすら怪しいし……つまりこれトクメが無駄に騒いでただけか)」


 無駄に振り回された身としてはトクメに教えてからかってやろうかとゼビウスは思ったが、火に油どころか火薬を放り込まれたトクメがシスに何かしでかしそうなので大人しく黙っておく事にした。


「……そなたらはよいの、そうやって子供と戯れる事ができて。妾も早う妾の子供とそうやって戯れたいものじゃ」

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