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お金がないわけじゃないけどお金がない

 ゼビウスと共に旅行を始めて一週間。


 ムメイ達はまだ最初に来た街に留まっていた。


「流石にいすぎじゃねえか? あいつら本当に魔大陸に行く気あんのかよ」


 トクメとゼビウスは何処かへ出かけたらしく、ムメイとシス、レヴィアタンはいつぞやの時と同じく部屋に集まっていた。

 今回はレヴィアタンもちゃんとお菓子とお茶を勧められてから口にしているので電流は流れていない。


「この街に来た時に魔大陸行きの船の予約をしていたから一応行く気はあると思うぞ。ただ出発は十日後だから、あと三日はここにいるみたいだ、が……」


 レヴィアタンの疑問に何でもないように説明していたシスだが、ムメイとレヴィアタンがお茶の手を止めジッと見つめていたので思わず口を止めた。


「……聞いていないのか?」

「全然」


 シスは街についたその日にゼビウスから世間話混じりに聞いていたが、相変わらずトクメはムメイに全く話していなかった。


 これに関しては聞かないムメイもムメイだと言えるのだが、今までが今までだっただけにトクメの接し方への誤解が解けたとはいえ普通に話すのはまだ時間がかかるらしい。


 単に『ムメイには友達がいない』発言を筆頭に今までのデリカシーに欠ける言動をまだ根に持っているだけなのかもしれないが。


「あと三日もここにいんのかよ。ずっと部屋に籠もってんのも飽きたし俺達もどっか出かけようぜ」

「出かけるのはいいけど何処行くの」

「とりあえず飯行こうぜ、食いながら決めればいいだろ」

「お金は?」


 ムメイの言葉に沈黙が流れる。


「お前持ってねえの?」

「現金持つの止められてるからないわ。お金の代わりになるものはあるけど所有権は基本トクメにあるし、後が鬱陶しいから使いたくない」

「お前は?」

「残っていた金は全部ウィルフに渡してきたから何もない」

「げえ、お前ら金無しかよ」

「そういうレヴィアタンはどうなの」

「俺はちゃんとあるぜ! ……まあ、魔大陸に戻らねえといけねえけど……」

「なら私達と同じじゃない」


 再び部屋に沈黙が流れる。


 今までの代金は全てトクメかゼビウスが払っており、シスも外に出る必要がなかった為何も考えずのんびり過ごしていたが、流石に無一文はまずいのではとそれぞれ危機感を持ちはじめた。


「……冒険者ギルドに行くか」

「ここにいるよりはマシだよな」

「せっかくだから私も行くわ。入るぐらいなら出来るでしょ」


 ******


「あら? 貴方はDランクですね。でしたらこの依頼をお受けする事は出来ません」


 全員でギルドへ行き簡単な依頼を受けたはいいが、受付にそう断られてしまった。


「そういえばそんな仕組みだったな。今まではウィルフが受けていたからすっかり忘れていた」

「え、お前ワイルドウルフ倒せてねえの?」

「向こうが近づいてこないし、逃げるのを追いかけるのはちょっと……」


 向こうから襲ってくるならともかく、逃げたり怯えたりする相手を追いかけるのは過去にドラゴンやらフェンリルなどの強者から逃げまくっていた時の事を思い出してしまい、どうしても躊躇ってしまう。


 一応Dランク用の採取依頼はあるのだが、一番低いランクだけあって報酬は食事代には全く足りずパン一つ買えるかどうかの額しかない。


「魔物の買取ならいけるんじゃないか」

「この辺りの魔物って弱いからシスに怯えて出てこないと思うんだけど」

「…………」


 ちなみに海へはギルドが格安で船を出してくれるが前払い制なので、そもそも金のないムメイ達は頼めない。


「人の来ない奥地なら……いや、数日はかかる上に出てくるかどうかも分からないんじゃ無理か」

「なあ、もうこの際お前の自空間から物出そうぜ。ちょっとぐらいならバレねえだろ」

「相手の物勝手にどうこうしたくないからお断り。どうしてもってならレヴィアタンが頼んだら?」

「うっ。じゃあお前が自由に出来る物は? 一つぐらいあるだろ」

「……一応あるけど」

「あるのかよ! ならそれ売ろうぜ! 高値で売れるやつだよな!」

「世界樹の葉だから高額は確かだけど……」

「は?」

「だから、世界樹の葉。所有権自体はトクメにあるけど葉だけなら取りすぎなければ使っても構わないとは言われてる」


 ただ、トクメの言葉をそのまま信じるつもりはないムメイは今まで一度も使っていない。


「世界樹の葉を売るのは流石に危なくないか?」


 一般的に世界樹の葉は不老不死の薬の材料とされ、葉だけでもあらゆる病を治す万能薬だと噂されている代物でありそれを買い取れる程の額を置いている店はそうそうない。


 たとえ店を見つけても本物かどうか疑われ下手すると詐欺として逮捕、本物と知られれば何処で手に入れただとかで身柄を拘束される可能性が非常に高い。

 更に持ち主が永久奴隷であるムメイと分かればどんな扱いをされるかは言うまでもない。


 依頼は受けれない、魔物を倒しに行こうにもシスがいるので魔物は出てこない、そもそも時間が足りなくて行けない。そして最終手段、世界樹の葉は危険すぎて売れない。


 金を得る為の手段がことごとく潰れていきお互いがお互いの顔を無言で見つめ合う。


「あれ、ちょっと待て、もしかしてこれ詰んでるんじゃないか?」

「お金、全くないわけじゃないんだけど……」

「使えないんじゃ意味ねえー!」


 他に何か手段はないかと考えても良い案は全く浮かばず、結局ムメイ達は出発日まで宿で大人しく過ごすはめになった。

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