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親の心子知らず、子の心親知らず

 ふう、とトクメは読んでいた本をパタリと閉じた。


 今日だけで読んだ本は軽く百を超え、部屋には天井につきそうな程高く積まれた本の塔がいくつも出来ている。


「(……旅行を始めて数日。何故未だにムメイと出掛けられていない?)」


 トクメは本気で悩み、真剣に考えていた。


「(そもそも旅行とは街を歩き景色を眺め食を楽しむもの。今現状これは旅行と呼べないのでは)」


 食事は毎度取っているが、宿で普通の料理を食べているのはトクメの思う旅行の食事に入らない。街名物の特産品を味わい土産を購入してこその旅行である。


「(明日にでも観光へ連れ出すか? しかしあまり干渉して『自由』を奪い、存在を消滅させては意味がない)」


 ふむ、と顎に手をやりトクメは更に考える。


 ムメイは自由の精霊である。

 しかしとある事情により誕生した時から自由の精霊でありながらほとんどの『自由』がない。

 ただでさえこの旅行に加え永久奴隷という身分により行動を制限されているのでこれ以上束縛するわけにはいかない。


 だが普段からあまり干渉し過ぎないよう適度に距離と時間を置いて接触しているので、旅行中ぐらいは思い切り構い倒したい。

 構い倒したいのだが、どうもムメイは照れているのかそれともまだ反抗期なのか中々素直に構われてくれない。


「(ゼビウスに懐いているみたいだから私も奴のように様々な魔法を見せたり、集めた品を渡したりしているが興味ないのか反応無し……ゼビウスと私の違いは何だ?)」


 強さだと言うのならそれは間違いだと正さなくてはいけない。

 ゼビウスは確かに強いがそれは冥界内だからであって、地上に出れば互角にまでは持ち込める筈。


「(いや違う奴には体術があった。関節技も。それか? 徒手で戦うのがいいのか? 徒手、そういえばシスだ、奴がいたな)」


 ムメイがゼビウスや誰かに好意を持つのはかまわないが、シスがムメイに好意を持つのは許さない。


 何度致命傷を負わせ追い払ってもしつこくムメイに近づこうとする諦めの悪さは本当に腹立たしく、この旅行も勝手について来て図々しい事この上ない。


 それでも街中や外などでシスと行動を共にしているのはムメイに近づけさせない為である。

 本来なら親としてムメイの側についているべきだが、ずっと張り付くわけにもいかず苦肉の策としてそうしている。


 しかしシスを遠ざける事ばかりに気を取られてしまい、肝心のムメイとの観光を楽しむ余裕がないのはいただけない。


「(シスさえいなければ何の問題もないのだが、ゼビウスの息子ならば仕方ない。ムメイと行動を共にしつつシスをそれとなく寄せ付けないよう見張り、かつ時間と行動を無駄にしない巡り順は……いや待て、街の隅に軽くはあるが呪のかけられている場所があったな。まずはそこの解呪が先か)」


 ムメイは呪いに弱く耐性が全く無い。

 子供にさえかからないごく軽いものでも、ムメイには非常に強いものになってしまう。

 今は何ともないみたいだが、件の場所に近づけば引き寄せられ出られなくなる可能性が高い。


「(やるべき事は山程ある。まずは解呪、次に穢れを完全に落としてから予定を決めムメイを誘うか)ムメイと出かけるだけだというのに、随分と時間も手間もかかるな」


 ふ、と軽く笑うとトクメは本を全て自空間の図書館へ送り準備を始めた。


「(だが手間がかかる程可愛いものだ。時喰い虫も、ムメイも)」


 トクメは娘達を非常に大事にしており、常に気をかけ考えている。


 しかしこの男、その事を一切言わない。


 時喰い虫との扱いの差についても、時喰い虫はトクメが保護した時には既に自我が崩壊し意思疎通が不可能な状態になっていた。

 なのでトクメの魔力で閉じ込め、万一暴走しても時喰い虫が殺されないようトクメの自空間である図書館に置いている。


 と、伝えればムメイも納得するがトクメは図書館にいるとしか言わない。

 その為ムメイから見れば、自分は放置されているのに時喰い虫は図書館で過ごさせ、いつ如何なる時も側にいて離さないと捉えてしまっていた。


 その為、ムメイとのすれ違いが発生しどんどん溝を深めていっている。


 ムメイに何か一言でも考えている事を伝えていれば良かったのだが、伝えるのは頭の中でまとまった事のみでありそれはことごとくムメイの神経を逆撫でし、ゼビウスが前に心配していた通り、ムメイに向かって「反抗期」ともしっかり言ってしまっていた。


 お互い少しでも考えている事を伝えれば解決するのだが、トクメはそれに気づかずムメイは聞くのを恐れている。


 ある意味似た者親子とも言えなくもなかった。


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