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星を見るもの

 

 それは偶然だった。

 日も落ち始めた頃、ムメイ達女性陣が目を覚まし部屋を出た時に丁度トクメとウィルフも目を覚まし部屋を出たところだったのも、更に丁度その時シスが戻ってきたのも。


 なのでせっかく全員揃ったのにわざわざバラバラになるのも、という流れになったのは特に不思議ではなかった。


「全員が揃って食事するのは初めてね」

「まあこの旅を始めてまだ二日だし」


 イリスとムメイがそんな雑談を交わしているとそれぞれ注文した料理が運ばれ、目の前に並べられていく。


「それじゃ、ごゆっくり」

「え」

「ひっ」


 それぞれ注文した料理を食べ始めたが、ルシアだけは料理に手をつけず小さい悲鳴をあげイリスもそれにつられた。


「な、何これ、何なのこの料理……」


 ルシアの目の前にあるのはこんがりときつね色に焼けた美味しそうなパイなのだが、何故かパイ生地から魚の頭部が飛び出していた。それも何匹も。


「スターゲイジーパイじゃない。取り扱いがあるなんて珍しい」


 グラタンを食べながらムメイは軽く説明したが、ルシアはそれどころではない。


「え、何で魚丸ごと……しかも飛び出して? 星を見るパイって素敵な名前なのに……」

「名前通りじゃない、少なくともイワシは星を見上げているし。あ、星になっているとも言えるか」


 余計な事を言うムメイを若干涙目になりながらギッと睨みつけるも、注文した事は変わらないのでルシアは恐る恐るまず魚は避けてパイの中身を一口食べた。


「あ、中はジャガイモと玉ねぎ、他にも色々入っていて美味しいけれど……美味しいけれど……」


 どうしてもパイから飛び出た頭が目に入り食べにくい。

 一匹、二匹ぐらいなら大丈夫な気がしなくもないが、等間隔に埋め込まれたイワシ六匹はルシアの許容範囲を大きく超えていた。


「だ、大丈夫ルシア。手伝いましょうか?」

「大丈夫ですお姉様。これは自分で注文した物ですからちゃんと責任もって全部食べます」


 そのままルシアはカチャカチャと音を鳴らしながら食事を続ける。

 その様子を気の毒そうに見ていたウィルフは隣からもカチャカチャと音が聞こえてきたのでそちらを見ると、ステーキを注文したシスがナイフとフォークに苦戦していた。


「お前、ナイフとフォーク初めてなのか?」

「使っているのを見た事はあるが、こんなに使いにくいとは思わなかった……よく使いこなせるな」


 関心しているのか音を立てずにナイフとフォークを使いこなしてハンバーグを食べているウィルフをジッと見ている。


「薬の調合が出来ると言っていたから器用だと思ったんだが……不器用というワケでもないよな?」

「シスは器用よ? 特性にもあるし」


 ムメイが言っているので嘘ではないと思うが疑問は残る。

 不器用なルシアが音を立ててしまうのは分かるが、器用と言われたシスが何故音を立ててしまうのか。


 ウィルフは隣にいるトクメを見るが、我関せずと優雅にパスタを食べている。

 聞いたら答えてくれるが、こちらから聞かない限り答えるつもりはないらしい。


「ねえ、ちょっといいかしら」

「っ、何か?」

「あ、貴方じゃないの。そっちの、黒い髪の人なんだけど」

「…………」


 声をかけてきたのは三十代ぐらいの茶色い髪を引っ詰めた女性だった。

 シスは何も言わず無表情で黙ったまま女性を見ている。


「さっきから見ていたけど、全然野菜を食べようとしていないでしょ。好き嫌いはダメよ、ちゃんと栄養バランスを考えて野菜も食べなきゃ」

「好き嫌いしているワケじゃない、食べる必要がないだけだ」


 キラリと、女性のかけている眼鏡が光った気がした。


「そんな事言っていたら病気になるわ。実は私、好き嫌いをなくす為の開発をしていてね。例えばコレ、見た感じただの粉だけど野菜を粉にしたものなの。勿論栄養はそのままで野菜特有の嫌な苦味や食感がないし、他に美味しく感じる成分も混ぜているからお肉や料理にかければ更に美味しくなるの。しかも大量の持ち運びが出来るから健康重視の冒険者や子持ちの主婦に今人気の商品よ。ベジタウダーって聞いた事ない?」


 女性はそう言って様々な種類の袋をテーブルの上に並べていく。

 ルシアやイリスは興味深そうに見ているが、シスは完全に警戒している。


「興味がない。さっきも言ったが野菜はわざわざ食べる必要が無いんだ。分かったらさっさと他所に行け」

「そう言わずに一度試してみて。私もさっき言ったけど野菜の味も何も感じないから、ほら」

「しつこい、余計な事をするなっ」


 ステーキの皿に粉をかけられそうになったシスは慌てて皿を持ち上げ先程よりきつく睨むと、流石に女性もそれ以上無理矢理しようとはせず大人しく手を引いた。


「そんなムキになる事ないのに。まあいいわ、試供品としてコレは置いておくから是非試してね。もし買いたくなったら私の所へ来て、サービスするわ。それじゃあね」


 女性は軽くウインクをするとそのまま去って行き、テーブルには試供品として置いていかれたベジタウダーが残された。


「えーと。ルシア、これ試してみる? 少しは食べやすくなるかもしれないわ」

「いえ、元々味は良いので……この粉をかけたところでイワシと目が合わなくなるワケではありませんし……」

「そうよね……」


 ベジタウダーは店員に渡された。

注文したもの

トクメ、カルボナーラ

ムメイ、グラタン

シス、ステーキ(付け合わせ野菜、ソース無し)

イリス、キッシュ

ウィルフ、ハンバーグ

ルシア、スターゲイジーパイ

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