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VSミスリルゴーレム。からの脱出

 あの後ゼビウスの言う通り再会の抱擁を諦めようとしないダルマにヴィルモントは痺れを切らし、言葉巧みに言い包め見事有耶無耶に終わらせた現在、ムメイ達は未だ部屋の中へと進まずにいた。


「うーん、確かにここ何かいそうだよな……」

「ゼビウス?」

「戻ってもいいんだけど、正直あの奥に何があるのか気になる」

「ええ……」

「トクメは? 気になんねえ?」

「気にはなるが最初に入るのは断る」

「気にはなるんだ……」


 ムメイとシス以上に好奇心の強いゼビウスとトクメを眺めつつヴィルモントが強い視線を感じて横を見れば、ダルマがキラキラと目を輝かせていた。

 心を読めないので分からないが、ダルマも奥の部屋が気になっているらしい。もしくはヴィルモントに頼られたいのか。


「……私も気にはなるが、こればかりは一番に入る事は断る」

「ふふん、ならば妾の出番じゃな! ヴィルモントが望むならば危険を承知でこの部屋の室内へと入ろうではないか!」


 そのまま躊躇いなく部屋へと入っていき、真ん中まで進んだ所で足を止めた。


「……何もないようじゃな、特に生物の声も……ん?」


 人の姿である筈の足元の影が明らかに丸く、大きくなっている。

 それに気づいたダルマが咄嗟に後ろに飛び退いたのと、その場に大きな何かが落ちてきたのはほぼ同時だった。


「うわ、面倒くさいのが出てきた」


 見た目や額の『emeth』という文字からゴーレムなのは確かだが、その体は一般的な石や土ではなく青く銀色に光る金属ミスリルから造られている。ミスリルは強度だけでなく魔法も効きにくいのでそれがゴーレムの体に使われているだけでも厄介なのだが、ゼビウスの反応を見るにそれ以外もあるようだ。


「撤退するか。奥は気になるけどこいつの相手してまで見たくねえ」

「……仕方あるまい」

「ちょっと待ちな!!」


 トクメも相手を嫌がり戻ろうとしたところに先程の冒険者達が現れた。


「何で頭頂部だけハゲてんの……?」


 ムメイ達もこの冒険者とは遭遇しているのだが、トクメ達とのやり取りを知らない為どうしても頭に目がいってしまう。シスはワケが分からず口をポカンと開き、ヴィルモントに至っては口元を隠してはいるが完全に笑っている。


「うるせえ俺達の事はいいんだよ! それよりゴーレムの相手なら任せな! コツさえ知ってりゃこんな奴倒すの簡単なんだよ!!」

「こいつを倒した後はお前らだ! 言っとくがこの借りは高いからな!!」

「あ、こいつら完全に俺ら巻き込みやがった。シス、いやもう子供達全員集合。トクメ、俺もコレ普通に効くから後は頼むぞ」

「ああ」

「?」


 ゼビウスは子供達を集めて部屋を出て行くが冒険者達はそれに気づかずミスリルゴーレムと対峙している。


「全員念の為後ろ向いて、目も瞑っているようにな。いいって言うまで絶対に目を開けるな、死ぬぞ」

「わ、分かった」

「いいか、ゴーレムってのはあの額にある『emeth』の『e』を削るんだ。『meth』つまり『emeth』の『真実』って意味を『死』に変えりゃこいつはただのミスリルになるんだよ!」


 言われるままに全員目を瞑り冒険者達の自信満々なゴーレムの倒し方を聞いていたが、恐らく文字を削った音が聞こえると同時に何の音もしなくなった。ゴーレムが倒れる音も、冒険者達の声もないただ不自然な程の無音が続くがそれでもムメイ達はゼビウスに言われた通り目を瞑ったまま動かずにいる。


 しばらくしてトクメの「もういいぞ」という声とゼビウスに背中を撫でられ、目を開け振り向きまず目に入ったのは何故か全身から血を流し咳き込んでいるダルマ。


「え、何で」

「何が起きたの?」

 

 よく見れば冒険者達も倒れており、唯一女性だけが怯えたように震えながら座り込んでいる。


「あのゴーレムは普通のゴーレムじゃないんだよ」


 ゼビウスが言うにはゴーレムは先程の冒険者が言うように額の『m』の字を削ればいいのだが、この情報が広まりゴーレムが雑魚以下の扱いになってしまった事にブチ切れたある魔法使いが改良して出来上がったのがこの『m』を削れば即死魔法の罠が発動するタイプのゴーレムだという。


「要はわざわざ『m』を削って死を選んだのは誰だって話だな」

「それよりダルマは無事なのか?」

「不死だし大丈夫だろ、知ってると思っていたけど知らなかったんだな」


 流石に心配そうにしているヴィルモントだったが、近づこうとした瞬間にダルマの顔が輝いたのでそのまま動きを止めた。


「問題なさそうならそれでいい。それより対処法は分かっているのにミスリルゴーレムは放って行くのか?」

「mさえ削らなければいいってだけで、コア潰すの面倒くさいんだよ、ミスリル製は特に。それなら来た道戻った方が労力かかんない」

「そうか……ならば私が相手をしよう。ゴーレムのコアの場所ならば大体検討がつく」


 そう言ってヴィルモントが部屋に一歩入った瞬間、凄まじい勢いで床が凍っていきミスリルゴーレムの足元へと真っ直ぐに進んでいく。歩き出そうとして中途半端に足を上げていたゴーレムはそのままなすすべなく倒れ、体の隙間から僅かに見えた赤く光るコア目掛けてヴィルモントは鋭いツララで攻撃して破壊してしまった。


「おお、中々やるな。魔力もだけど割と体力あるんだな」

「まあな、ただ屋敷に引きこもって食べているだけの貴族ではないという事だ」


 ミスリルゴーレムは倒れた。しかしコアは砕けていても光はまだ消えていない。


 完全に崩れ落ちる直前、ゴーレムがヴィルモントに向かって腕を構えそのまま腕だけが発射された。


「ヴィルモント!」

「っ」


 予想外の動きと完全に油断して反応出来ないヴィルモントの前に、シスが素早く人の姿に変わりその腕を蹴落とした。

 しかしミスリルゴーレムは既に二発目を放っており、シスですら間に合わない。


「っ!!」


 だが今度はムメイが魔力の壁で防ぎ、ゴーレムの腕が落ちるとコアもようやく光を失い今度こそ動かなくなった。


「完全に油断していたな、礼を言うぞ」

「無事で良かった……」

「生命体ってわけでもないのにしぶとかったわね」

「しかし……私の独断と偏見だがこのゴーレムを作成したのは男と見た」

「へえ、理由は?」

「ロケットパンチはある種男のロマンと言うからな」

「ロマン? 何それ」

「男というのは時に効率よりも自分の好みを優先させる事がよくある。現に私の知り合いにも魔法が使えない代わりに銃の扱いに特化した銃好きがいてだな、奴はリロードする際に一発一発弾を込めるのが好きだからとオートマグナムではなくマグナムリボルバーを愛用している。奴も悪運が強いみたいでな、リロード中を敵に狙撃されてしまえばいいと念じているが中々叶わん」

「ああ、うん……」


 急に早口になったヴィルモントに相手を心配しているのか本気で言っているのか判断に迷い、ムメイは相槌を打ちながら視線を彷徨わせた。


「ヴィルモント! 怪我はないかえ!」

「見ての通りだ。私の心配よりも自分のをしたらどうだ」

「妾も見ての通り無事じゃ! 心配か? 心配してくれておるのか?」

「シス、ムメイ。ミスリルゴーレムの腕はお前達の物だ、自由にしていいぞ」

「え、いいの?」

「ミスリルゴーレムを倒したのはヴィルモントだろう?」


 明らかに無理矢理な話題変えにムメイとシスは戸惑いながらも遠慮するが、ヴィルモントは構わず進めてくる。


「確かにコアを破壊したのは私だ。だから本体部分は貰うが腕を止めたのはお前達だ、私ではない。だから所有権はそちらにある」

「そういう事なら……」


 それならばとムメイも自空間にしまい、自空間を持っていないシスは少し迷ってゼビウスに預けた。


「ミスリルの腕だけ持ってても使い道ないしこっちで換金しとこうか?」

「いいのか?」

「それぐらいならいいよ、ムメイちゃんはどうする? 同じ腕だし価格も一緒だろうからやっとくよ」

「それなら……お願いするわ」


 素直にゼビウスに渡すムメイに、今まで黙って事の成り行きを眺めていたトクメが不満気に目を細めた。


「換金ならば私だって出来るのに何故こちらを頼らない。ゼビウスより高く売る事だって出来るぞ」

「お前から言わないからだよ。それより奥の部屋確認する?」


 ミスリルゴーレムが倒れた事で奥の部屋のドアが開いている事に気づき、ゼビウスが指を向けた。


「……行こう」

「ま、待って!」


 トクメ達が部屋へ向かおうとするのを唯一生き残った女性が引き止めた。腰が抜けたのか今も立ちあがろうとしていない。


「お願い、私も連れて行って。仲間が皆死んで、こんな所に私一人じゃ生きて出られない」

「断る。お前は敵だ、俺だけでなく子供にまで危害を加えようとしておいて助けるわけがないだろう」

「むしろ命を奪われないだけマシではないのか?」

「何ぞ、生かしておくのか? 妾がトドメをさしてもよいのじゃぞ」

「俺の仕事を増やすな。シス、おいで」

「あ、ああ……」

「ムメイも、早く行くぞ」

「うん……」


 ムメイとシスが少し気にかけていたが、トクメとゼビウスが有無を言わさず部屋へと向かったので慌てて後を追った。


******


 部屋の中にあったのは大量のモニターと謎の機械。しかしあちこちの線は絡まり千切れ、機械もバチバチと危ない音を立てている。


「こっちの大きいのは転送装置っぽいな、出口近くまで送る感じか?」

「そのようだな、それにこちらの小さな方は……ふむ、これが私達が魔法を使うのを邪魔していた原因か」

「うげ、魔法とかじゃなくて開発されたやつ? そこまで技術あがってんのかよ」


 トクメは人の姿になると問題の小型装置を慣れた手つきでいじり始め、ゼビウスは少し距離を取った。


「まさか直す気か?」

「直すとこの機械は完全に起動して一切魔法が使えなくなるからこちらは放置だな。本当は持っていきたいところだが、私の自空間にも影響が出るならばこの状態でこのまま置いておくのが最善だろう」


 どうやら絡まっていた線を解いていたらしく、それが終わると今度は転送装置の前で何かゴソゴソと始めた。


「……ねえ、ゼビウス。そのまま放置するのに何であの線解いたの?」

「んー、あいつ変なところで几帳面というか細かいところも拘りたがる性格というか……絡まった線とか、きっちり揃えていないと気が済まないんだよ」

「ああ……」


 心当たりがあるのかムメイは何も言わずトクメの背中を眺めた。


「わざわざ転送装置を直す理由は? 場所さえ分かればゼビウスでなくとも私やムメイでも充分魔力は足りるだろう」

「ここ直しといたらさっきの女が無い気力振り絞ってここに来た場合生きて地上まで戻れるだろ?」

「あ……」

「ゼビウス……」

「シスとムメイちゃんが気にしてたから特別。でも俺達からすれば敵だから誘導まではしない」

「ああ、それでいい……その、ありがとう」


 シスのお礼の言葉にゼビウスは嬉しそうな笑みを浮かべた。


「ムメイちゃんも後でお礼言っときな、アレ俺じゃ直せないから」

「……頑張る」

「おう、頑張れ」


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