レイとジン
二人の子供、レイとジンは冒険者と違い吸血鬼姿を恐れるどころか空腹と知るや自分の血を飲ませ、ヴィルモントはようやく飢えを満たし髪と目の色もムメイ達が見慣れた銀と茶色に戻った。
「……助かった、礼を言うぞ」
「いえ、困った人を放ってはおけませんから」
「血はもういいんですか? あまり減った感じはしませんが……」
レイが噛まれた腕の場所をさすりながら尋ねた。
いくら二人に分けたとはいえ吸血鬼の吸血量から考えれば立ちくらみぐらいは起こしてもおかしくはない、しかしそういった症状が一切ないのが不思議で仕方ないらしい。
「完全な空腹だったわけではない。血の匂いに誘発された空腹だったからな、少量で十分だ」
「それなら良かったです」
「ところで、二人は何故ここに来たの? 冒険者って感じはしないし……」
「あ、えっと……」
「し、仕事です! その、蠢くものの毒液を採取しに……冒険者ギルドとは違う所からのい、依頼で……」
「…………」
「ねえ」
「そういえばそこのムメイが蠢くものの解毒をする為に血を流した場所がある。礼としてその部屋の場所までの地図を書いてやろう、紙とペンはあるか?」
何か隠している。それに気づいたムメイは追求しようしたが、ヴィルモントが遮るように二人へ話しかけた。
思わずそちらを見るも、ヴィルモントはわざとなのか目を合わせようとしない。
「えっ。あ、いいんですか? ジン!」
「うん! あのコレにお願いしますっ」
「いいだろう、少し待つがいい」
「……。結構時間が経っているし血も大分混ざっているけどいいの?」
「はい! 毒の成分だけを抽出……あっ、えっと、抽出する事が出来る方法があると依頼してきた人は言っていたので大丈夫です」
恐らくヴィルモントは血を分けてくれた二人への恩返しのつもりで追求しない事に決めたのだろう。ならばこちらが聞くのは野暮だとムメイも助けてくれた恩返し、程ではないが他の気になっている事を話した。
「なあ、確かその部屋って穴から降りる前の場所だったよな。魔法も使いにくいのに行けるのか?」
「はい、こういう時用に色々道具を持ってきているんです」
「……ここがどういう場所なのか詳しく知っている関係者のようだな」
「あっ……」
「えっと……」
「まあ、私には関係のない事だ。お前達の詳細を聞いてどうこうする気もない、だが隠したいのならばもう少し考えて話す事だな」
やっぱり聞くのかと思ったが、どうやらあまりにも不用心に自分達の事を話すレイとジンにヴィルモントなりの心配と注意だったらしい。
そしてヴィルモントに関係者かと聞かれた瞬間に固まり、追求されなかった事にあからさまに安心する二人はもうどう見ても研究施設の関係者であると白状したようなものである。
「……ここから出ると蠢くものが大量にいるみたいだが大丈夫か?」
シスもそれに気づいたみたいだがあえて深くは聞かない事にしたようだった。
「は、はいっ。僕達の履いている靴は特別製で蠢くものが反応しない造りになっているんです。それにここには蠢くもの以外に魔物はいませんから」
ヴィルモントが言ったそばから関係者しか知らないような事を話す二人にムメイは無言で額を押さえ、ヴィルモントも何とも言えない表情で天井を見上げている。
「……この部屋出て左には行かないようにね。他の冒険者がいるんだけど、その靴の事知ったら絶対奪おうとするだろうから」
「は、はい! あの、ありがとうございました!」
ヴィルモントから地図を受け取るとレイとジンは丁寧に頭を下げて部屋から出て行った。
「……隠す気があるのかないのかどちらだ。むしろアレはわざとだと言った方が納得出来るぞ」
「純粋な子供、って事じゃない? よくあの歳まで生きてたわね、この先も大丈夫なのかしら」
あの調子では先程の冒険者にもうっかり会いそうでそのまま靴も奪われそうだとムメイ達は心の底からあの二人を心配した。




