第七話 桜
掃除も終わり帰りの準備をする僕。
帰宅部に所属している僕にとっては帰ることこそが部活動なのだ。
「五月君はもう帰るの?」
そう僕に話しかける結はバスケ部所属だ。
結は以前に、長いのが首じゃなくて、手だったら良かったのにね。と笑っていた。
…少し返答に困った初対面の僕。
僕は校門を目指し歩いていた。歩く僕は当然一人。友達がいないとかじゃない。断じて否である。本当だ。
これから僕が赴く場所に他人を巻き込む訳にはいかない。それは、義務でありルールでもある。
僅かに緊張している自分を自覚し校門の目前で足を止め目を瞑る。気を静めなければならない。
一瞬の気の緩みがこの先の出来事を左右するかもしれないからだ。深呼吸をする。
よし、もう大丈夫だ。そう自分に言い聞かせ目を開ける。
視線を上にやる。門柱の上に佇み僕を見下ろし不敵に笑う妹が目に入る。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。ワタクシ、お兄ちゃんの妹こと桜は寂しく一人大変お待ちしておりました。
ありがとうっ来てくれて嬉しいよお兄ちゃんあははははははははははははは」
長い鬼ごっこが始まる
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妹との鬼ごっこも終わり命辛々自宅に着いた僕。
今回ばかりはかなり危なかったがなんとか乗り切ることが出来た。
今日の日のおかげで少なくとも一週間は妹は大人しくなるだろう。
僕はすぐさま自室へと向かい体を休めることにした。
部屋に入るや否や疲労困憊の体をベットに投げ出す。目を瞑り考えるのは妹の事。
おそらく今日の妹があそこまで荒れたのは僕のあの質問のせいだろう。
以前にも似たようなことがあったが、あの時は七月が原因だったな。
あの時は確か妹を見た七月が
「おぉ〜い、五月のだぁいすきなお兄ちゃんがかえってきたぞぉ〜」
ものすごくイラっときた。考え事をしている時に七月の声を聞くと張り倒したくなる。
「もしかして、寝てんのかぁ〜?お帰りのハグがないぞ〜」
元からねーよ。お前は大人しく風呂場の垢でも舐めてろ。と思ったが
よくよく考えると風呂に入れなくなるので、小豆でも洗ってろよ。
「ん〜、寝ちゃってるのかぁ、でも、起きてるかもしれないし確認のため部屋に入んなきゃな〜
別に疾しい気持ちはないけど、もし寝てたら寂しいだろうし添い寝でもしちゃおっかなぁ」
大きな声で言い訳をしながら僕の部屋に来ようとしている七月。
馬鹿が。鍵を掛けてるに決まってるだろうが。諦めてプリンでも食ってろ。
「ぬわぁぁ!鍵掛ってるよ!くそっ、五月の可愛い寝顔を見て、
あわよくば添い寝とかしちゃったり、悪戯し放題だったのにぃぃ!」
…本音がだだ漏れすぎだろう。とっとと部屋に帰って一人七並べでもやってろよ…。
まだ鍵をガチャガチャやってる。しぶといな、そんなに僕の部屋に入りたいなら
この部屋に一人で閉じ込めてやろうか。
「う〜ん開かないなぁ…なんでだろ えっ?
何故か七月の声が驚きで強張る。まるで見てはいけないものでも見てしまったかのように…
っつ!まさか!あり得ない。だって
「な……なんでここに
僕の予想が当たってるとしたらかなり不味い。急いで鍵を開け扉を開け放つ。
「七月っ!!」
僕の眼に入り込んできたのは
「ただいま、お兄ちゃん」
そう言って無邪気に笑う桜と、廊下の隅で頭を抱え震えている七月の姿だった…
1日中勢いだけで話を書いていると自分が何書いているのか訳が分からなくなりますね。
途中の部分は一応書いたんですが、書いてしまうと展開がラブコメじゃなくなりそうなので省略しました。
いつか手直しして公開したいです。