表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
非日常は敵ですか?  作者: TS
第一部
6/40

第五話 僕を捕える君


今回は表現がアレな感じです。ご注意ください。

 今は昼休み。僕は一人屋上にいる。別に飛び降りたいとか、ハブられてる訳ではない。

ここには何か悪いものでもあるのか、というくらい全く人が寄り付かないからだ。

そのため、ゆっくり昼食を楽しみたい時に僕は一人でここにくるのである。

僕はのんびりと、家から持ってきたパンを頬張り食べ始めた。

平穏な時間、まさに至福の一時である。こんな時には三月等が乱入してきそうなものだが今まで

一度も訪れたことがない。いろいろと察しているのだろうか?だったら普段からそうしてもらいたいものだ。


そうやって、貴重な時間をまったりとしていた時、屋上の扉が開いた。

まぁ、鍵が掛っている訳でもないし誰が来ても不思議ではないのだが、ここを利用するのは

僕と後もう一人だけ…


「千早。お前もここで昼食か?」

そう、 磯木いそぎ 千早ちはや 僕のクラスメイトの一人だ。

肩口まであるさらさらした黒髪とほとんど動くことのない整った顔が印象的だ。

一年の頃から屋上をちょくちょく利用していた僕はそこで千早とよく出会う事になった。

千早は余り喋らないため、一緒に昼食を取るのも吝かではない。

ただ、初めは喋らない上に、ノーリアクションだった千早に色々と苦心した。


「ほら、そんなところに突っ立ってないでこっち来て座ったらどうだ?」

頷いたかどうかも疑わしいような微かな揺れと共にこちらに寄ってくる千早。

分かりづらいがこれでも、大分仲は良くなった方なのだ。

千早は僕のすぐ隣で止まると、じっと僕の食べているパンを見つめる。

「ん?このパンに興味があるのか?これはウグイスパンっていうパンだ。っていっても、

鳥の鶯が入ってる訳じゃないぞ。エンドウを使った餡、鴬餡を使ってるからそう名付けられたそうだ。

何なら一口食べてみるか?」

パンを差し出すとそっと身体を動かしパンを啄む千早。子に餌を与える親鳥の気分はこんな感じなんだろうか。


そんな千早を微笑ましく見守っていると、パンを食べ終えた千早の口が僕の指を吸い始める。

くちゅくちゅと液体固有の音を出しながら僕の指を根元から丹念にねぶる千早。

千早の口内は暖かく、僕の指を柔らかい肉の感触が優しく締め付けている。


初め千早の口は刺激を与えるのを楽しんでいるかのように、強く吸い上げていたが、徐々に

口を離していきそっと愛撫するかのように口唇で指を撫でつける行為に夢中になっていった。

口からは千早の分泌する液体が零れ落ち、千早の液体が僕の指を余すところなく濡らしていく。


そんな千早は頬を薄く桜色に染め、蕩けるような瞳で僕を見る。どこか興奮したようなその面持ちを見て

僕の背筋に、全身を思わず震わせてしまうような刺激が走る。

このままでは不味いと判断した僕は指に少し力を入れ抵抗する。

それに気付いた千早は最後だからというようにゆっくりと指を舐め付けながら引き抜き、千早は残念そうに口を離した。

僕の指と千早の口の間に架かる濡れた橋は途切れ地面を濡らしていく。


「ふぅ、千早はそんなにお腹がすいていたのか?僕の指なんて美味しくないだろうに」

そう言って全身を弛緩させた時に初めて自分がとてつもなく緊張していたことに気付いた。

何でもない顔をしているが、僕の心臓の鼓動は明らかに早くなっている。

あのまま続けていたらどうなっていたのだろうか?そんな好奇心が少し疼いていた。


「お腹空いてるの我慢出来ないなら、ここに来る前に何か持ってくればいいのに。

それとも、僕に会うのが待ちきれなくて急いで来てるとか?」

なんて冗談を言ってみると、千早は顔を俯かせてしまった。怒らせてしまったのだろうか?


千早は僕のことなんて知らない、というようにくるりと背を向け

お腹が空いているのか昼食のハトを捕縛した。



へっ?どうやってかって?それは簡単。自分の触手をむにょーんと伸ばして…ん?


あぁ、どうやら言い忘れていた事が有ったみたいだ。

千早は基本無口だが奇麗な顔立ちをしており、どこか和風人形のような雰囲気を漂わせている。

でも千早一番の特徴は上に着ているセーラー服の裾から飛び出している

それぞれ自由に動かせる十本の長く太い触手だろう。

その触手を器用に動かして生活している千早にとって屋上の手すりに止まったハトを捕まえることなんて

造作もないことだ。捕まえ、そのまま触手の先端にある口に放り込む。


触手にハトが呑まれる光景を見て、先程の触手に指を呑まれていた時の事を思い出す。僕があのまま

止めなければ、哀れなハトと同じ運命を辿っていたのだろうか……。

基本的には千早を信頼しているが時々不安になってしまう僕は友達として情けないなと思う。


心構えの問題であって実際に食べられたい訳ではないが

いつか、千早に呑み込まれても大丈夫なんだと思えるぐらいに仲良くなれたらいいなと、

そう思って一年が経った。最近はこのままでもいい気がしてくる。不思議だ。







作者的に一番書いていて面白いヒロインです。

いっそ主人公の台詞も消したいくらいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ