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非日常は敵ですか?  作者: TS
第一部
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第四話 小さな癒し

二時間目も終わり、今は休み時間である。

授業をまるまる寝て過ごして体力回復に努めていた三月はそろそろ起きだしてくるだろう。

滅茶苦茶面倒くさい。いっその事土葬にでもしてやろうか。

しかし、心優しい僕はもちろん、そんな恐ろしいことを出来る筈がない。

そんな僕の優しさは学校中に響き渡り、大変好評を博している。


例えば、授業中だというのに僕から離れようせず、皆の勉学を妨げる三月を屋上から逆さに吊るしたり、

休み時間にいきなり奇声を発しながら抱きついてくる三月をダストシュートに優しく入れてあげたり、

昼休みに「弁当はこの私だ。味わって食べてくれよ」と言って半裸で迫る三月を縄で縛った後、

パンくずや生肉を乗せて外に放置。そうすることで、この学校に住まう鳥(雀から鷹までいる)や

野生動物(狸や猪、熊もいる)に餌やりをしているのだ。

更に、地球温暖化の原因となるであろう三月(僕による独自の脳内調査結果に基づく)を燃やさずに

処理することで環境にも配慮している。地球にさえ優しいのだ僕は。

三月に関する出来事だけでこれほどまでに優しいのだ。時々自分が恐ろしくなる。

そんなことを考えながら三月の入った焼却炉に火を放つ。燃えるゴミは燃やす。これは常識だ。

さっきの話と矛盾している気もしないでもないが、まずは三月を処分することが環境改善の第一歩なのである。


「相変わらず容赦がないね。五月君」


晴々とした気分で教室に戻る僕に幼い声がかかる。


声のした方を見る。



………いない?


視線を下に下げてみる。



……いた。僕に声をかけた彼女は 三上みかみ ゆい

この僕の周囲でかなりまともな部類に入る稀有な人だ。


特筆して秀でている所はないが、小学生のようなあどけない笑顔や

120cmという小さな身体をちょこちょこ動かしている姿は小動物を見ているようで、とても癒される。

また、ぬいぐるみを集めるのが好きというのも可愛らしくポイントが高い。

クラスでもマスコットキャラクターのような扱いを受けている。



「僕の辞書に容赦の二文字はないんだよ。三月を全力で仕留めるのは最早礼儀であると言っても過言じゃない」


彼女を見下ろし、口に自然と笑みが浮かんだ僕は結に優しく話しかける。



「もうっ、三月ちゃんは女の子なんだからあんまり酷いことしちゃだめだよ」


結は子供のように頬を膨らませ注意する。そんな幼い仕草に全く違和感を感じない。



「むぅ、中々の無理難題だが、結が言うのなら僕の出来る範囲で善処しよう」


かなり不本意だが、結がそう望むのなら頑張ってみようという気にもなる。



「それ前にも言ってたよね……。まぁ二人からしたらそれが普通のコミュニケーションなんだろうね。


なんだか止めちゃいけないような二人だけの世界って感じだし」


大変失礼なことを言い放つ。結、そんな世界は嫌だぞ。



「どちらかと言えば止めるべきは三月の方だろう。まったくあいつもいい加減懲りればいいものを……」


普通あれだけされたら二度と関わりたくなくなると思うのだが。というかとっくに死んでいてもおかしくないのだが。

そんな僕の言葉に、結は何かを考えるかのように難しい顔をした。




「……きっとさ、三月ちゃんはどうしようもないくらい五月君のことが好きなんじゃないかな?」


……ずいぶんと歪んだ愛情だな。


「好きで好きでたまらなくて、それを素直に全身で表している三月ちゃんはいつも幸せそうで……。私ね、


三月ちゃんが羨ましいんだ。三月ちゃんを見てると、私ももっと自分に素直になれたらなって、そう思っちゃうくらいに……」


そう言っていつもよりどこか大人びた表情で僕をじっと見つめる結。

潤んだ瞳で僕を見る結が何を伝えたいのかはわからないけれど、いつもとは違う姿にどこか落ち着かない。

そんな互いに見つめ合いどうしたらいいものかと迷っている時、チャイムが鳴った。



「って、急いでいかないと授業が始まっちゃうよ。五月君は先に行ってていいから!」


そう言うや否や結は僕の視界から姿を消す。

結は先に行っていいと言ったが、二階の階段の踊り場で上ってくるのを待つことにする。


……んっ?なぜ一緒に話していたのに違う階にいるのかって?


僕は二階、結は一階の外。

別に大声で話していたわけでもない。



……あぁ、言い忘れていたが結は若干僕と体のつくりが違う。


結の首は130cmある。

つまり結の全長は250cmだ。


見つめ合っていた時は、なぜか更に長くなっていた。

見下ろされて落ち着かない僕。

結は今が成長期なんだろうか……?とか考えていたが結局何だったのだろう?


まぁ、いい癒しの時間になったので気にしないでおこう。



その後、余りにも遅いので様子を見に行った僕が見たものは、いつもと違う首の長さに感覚を狂わされたのだろうか、

おそらく天井に頭をぶつけ、目を回し気絶している結だった。





追記:結の頭を地面に付けないよう保健室に運ぶのに物凄く苦労した







またもやまともなヒロイン登場です。

もう少しぶっ飛んだヒロインが書きたいです。

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