第三話 痴情の戦女神
先月二年生になった僕は三階の教室を目指し、一人寂しく階段を上っていた。
べ、別に寂しくなんてないんだからな!と僕の脳内ツンデレと戯れる内に目的地に到着したようだ。
教室に入ってみると人はほとんどおらず、僕は誰にも挨拶することなく窓際にある自分の席へと向かう。
僕は何をするでもなく、ぼんやりと外を眺めていた。
こうやって一人で窓の外を眺めている時間は僕のガラスのように繊細なハートを癒すのにうってつけの時間であり
外の雀を眺めては僕も飛べたら楽に逃げられるのに、とか
登校する先生を見て、いつか僕もあの先生の頭のようにストレスで禿げ散らかさないだろうか、とか
あそこまで禿げてんだったらもういっそ全部剃れよ、とか
お前が剃らないんなら、僕がお前の頭に引導を渡してやろうか等とほのぼのと色々考えていた。
そんな僕の思考を遮る声。
「おはよう、愛しの五月。君の可愛らしさは最早神の領域だな」
聴くものを魅了するような深く澄み切った声に、僕はゆっくりと首を動かし声がした方を向いた。
そこにいたのは単純に美しいといった言葉では形容しきれない少女 叶野 三月だった。
妹が天使ならば、三月は女神と言っても差し支えない。
ただ、三月は女神は女神だが、どちらかといえば戦女神という表現が最も適しているだろう。
鋭く吊り上がった双眸は見る者に畏怖を抱かせるだけでなく、高貴な者の気高ささえ感じさせる。
一つに束ねられた長く美しい黒髪は、三月が歩くたびに揺れ、値を付けることさえ憚られるような芸術性すら秘めている。
そして豊満な胸は長身と相まり、この存在こそが最強の証であるということを誇示している。
他にも容姿についてどれほどの美辞麗句を重ねても三月を表現し得ないだろう。
三月こそまさしく神の作り給うた芸術であり、人間の享受出来る美を超越した存在である。
とは叶野三月親衛隊の言だ。
そして、そんな神の奇跡とも言える三月に愛を囁かれる僕は当然の如く三月を愛して……いない。
理由はとても簡単だ。女神の微笑を浮かべた三月の手は今にも僕の股間に触れようとしている。
―――つまり
――――――――――――この線の下は読み飛ばしていただいて結構です。――――――――――――――――――
「五月、済まないが手を放してくれないか?これでは愛しい五月の下半身を露出させることが出来ないぞ」
「……何で露出させる必要があるんだ?」
「もちろん、私が興奮するからだ!まぁ、何れお世話になるんだし、早いに越したことはないだろう。うん」
「いや、何れどころか一生お世話にならないと思うぞ……ところで、お前は何故スカートを脱ごうとしているんだ?」
「名を名乗る時は自ら名乗る。下半身を露出するときは自ら露出する。私は、そんな礼儀すら忘れていた。
恥ずかしい限りだな。んっ!?だから、五月は止めようとしたのだな。流石は我が夫だ。……うむぅ、五月手を放してくれないか?
スカートが脱げないではないか。はっ!?そうか、こんな人の多い所で脱いでは私のあられもない姿が晒されてしまう。
それを案じてくれていたのか!?―――あぁっ!!こんな素晴らしい夫を持った私はなんて幸せ者なんだ!今日という日を
祝して、祝いの席を設けよう!会場はもちろん私の家だ。ついでに両親にも紹介が出来るし、これを機に籍も入れてしまえばいい。
そして、結婚した二人の最初の共同作業は文字通り二人が一つとなり激しく愛し合うのだよ。たまらんなこれは。ぐへへ……おっと涎が垂れて……ん?五月よ、その荒縄は何だ?……なるほど、五月はそういった行為を御所望か。五月が望むのなら私はどんなことでも―――
ふむ、五月よ幾ら待てないからといって皆の前で亀甲縛りとは……余程我慢をしていたのだな?よし、いいだろう。その迸る劣情を私にぶちまけるがいい!!全て受け止めて―――
ふふっ。五月、目隠しまでするとは徹底的だな。成程この全く見えない状態で、五月が私に何をしているか、何をしようとしているのかを私に想像させることでより興奮状態にさせるということだな。あぁっ、確かにこれはかなり興奮するな!!期待と不安の中で愛する五月を受け止める覚悟をする私。そして、無抵抗で愛する者受け入れようとする妻に更なる愛情を感じた
五月は、遂に自らの衝動を抑えきれず私にぃぃっ!!……なんっという展開!なんという状況っ!さぁっ!来るのだ五月!私の脳内は桃色夢で覆い尽くされている!!
これ以上待たされたら、狂ってしまいそうだよ!!さーつーき!さーつーき!さー
ゲシッ! ボッチャーン!
さつがぶぉgぶぉぶ…ぶくぶく………
…………
―――――――――――ここの線の上は読み飛ばしていただいて結構です。―――――――――――――――――――
……ド変態ということだ。まぁその変態もたった今泉へと封印された。
残念ながらこの封印も永遠ではない。おそらく1時間が限界だろう。
というか、亀甲縛りの目隠し状態で百キロの重しを足枷にして沈めたのにどうやって浮かんでこれるのか不思議でならない。
今度からは二百キロにしてみよう。そう決意し教室に戻ることにした。
その後僕は1時間目の休み時間に満身創痍ながらも教室に戻る三月を目撃した。
次は沈めた後、泉を埋めよう……
二人目のヒロイン登場です。
一応ヒロインの中ではまともな部類です。