第二十九話 電波悪魔
ここから二部のスタートです。
僕の名前は 春野 七月。
神王高校に通うごく一般的な生徒だ。
そんな僕は今、学校を目指し一人で歩いている。
幼い時は兄や妹と一緒に学校に行っていたが、二人とも部活の朝練があるので別行動だ。
妹はバスケ部、兄は美少女同好会の名誉会長だ。名誉でも何でもない。恥を知れ。
大体、昔は爽やかで凛凛しかったのに今は何だよ。
美少女と聞くと目の色を変えるし、何だか鼻息は荒いし、動作が不審だし、
いるだけでウザいし、大気中の酸素を浪費するし、二酸化炭素を増加させるし、
身体から発する加齢臭は公害の一つに数えられ、
光化学スモッグを排出しながら水銀を吐きだすその姿はまさに――――
とそんな風に兄を心の中で思いつく限り罵倒していると、遠くの人影が目に映った。
近づくにつれはっきりとしてきたが人影は小柄な少女だった。
少女は僕に気付くと嬉しそうな表情になり駆け寄ってくる。
僕と同じ銀色の髪が揺れて光を反射し、何の変哲もない通学路が少し幻想的にすら感じられた。
少女の見た目は、さながらファンタジー世界の妖精のように可愛らしい。
少女は僕の顔ぎりぎりまで近付き、にっこりと笑った。
「ふふっ、おはようございます七月様」
やけに丁寧に僕に挨拶をする彼女は、柊 華憐
二週間程前に僕のクラスに転校してきた華憐は、こうして毎日僕と一緒に登校している。
しかし、知り合って二週間しか経っていない華憐と、なぜ一緒に登校することになったのか?
それは―――
「それでは七月様………願い事はお決まりになりましたか?」
そう、これを聞くためだ。
転校初日の日に、可愛らしい華憐は変な男たちに絡まれてしまった。
そこに偶然通りかかった僕は、もちろんそのまま華憐を助け出した。
結果、華憐はそんな僕に大層感謝し、とある提案をした。
それは <僕の願いを一つ何でも叶える> というもの。
僕は別に願いなんて無かったので遠慮したのだが、華憐は諦めなかった。
終いにはこうして一緒に登校するまでになってしまった。
困った僕は一度適当な願いを言ってみたのだが、
「それは七月様の心から望む願いではありません」
と言われ却下された。
今では可愛い華憐と一緒に登校するのも悪い気分じゃないので諦めている。
……別に僕は美少女同好会に属している訳ではない。
華憐は中々面白い女の子なので仲良くしているだけだ。
華憐が物凄く可愛いのは一切関係が無い。
………たぶん。
それに華憐は基本的に人当たりも良く、穏やかな性格をしている。
ただ、あまり人が華憐に近寄ろうとはしない。
それは華憐の転校初日の自己紹介に端を発する。
華憐は事もあろうにクラスメイト四十人の前で、こうのたまったのだ
「……やぁ、初めまして。一応、自己紹介をしておきましょう。
―――私は前世が悪魔です」
―――瞬間教室が凍りついた。
今でもあの教室中の冷たい空気は記憶に新しい。
可愛らしい少女が突然電波を受信したのだ。しかも真面目な表情で言うものだから余計危機感を煽った。
もちろんクラスメイトはどん引き、一人空気の読めない馬鹿は大爆笑していた。
……しかし一緒にいる内に、華憐は少し変わっているだけのいいこだと分かった。
会話に関しても、突然電波を受信することなんて無い。
「七月様」
「ん、何?」
そうだ、彼女は少し変わったところはあるけれど優しい普通の―――
「私も元悪魔ですから、ちょっとくらい悪い願い事でも大丈夫です。
例えば―――世界征服とか!どうです、やってみませんか?」
両手を胸の前に持って来て、わくわくと期待した目で僕を見る華憐。
そうだ、会話に関しても、突然電波を受信することなんて無い。
―――華憐は、いつでも電波受信中だ。
唐突に始まりました。一応、第二部です。
ここからはシリアスはもうないです。らぶとこめだけです。多分。
七月のハーレム?はこれから更に拡大していきます。
とりあえず終わりは考えてないので気長な気持ちで読んで頂けると嬉しいです。
それでは、またよろしくお願いします。
そして、ありがとうございます。