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非日常は敵ですか?  作者: TS
第一部
23/40

第十八話 道化達の茶番

 今、僕は三月と二人で屋上にいる。

三月の提案に乗った僕だが、

なぜ三月はここに人が来ないことを知っているのだろう?



「七月が屋上をよく利用しているのを知っていたからな。


私はここの利用者に女がいないか調べていたんだ。七月に変な虫が付くと困るからな。


利用する内の一人は女だったが、知った時にはその娘は七月と仲良くなっていたし、


まぁ悪い娘でもなさそうだったから、特に何もしなかったがな」


千早がいい子で良かった。悪い奴だったらどうなってたんだろう…?



そして、僕はそんな話を聞いて自分が恥ずかしくなった。


僕は一人で全て背負った気になって、三月を蔑ろにしていた。


何も知らないくせに、そんな風に思って。



僕はずっと自分のことを道化だと思っていた。

偽りの人物に成り済まし、誰もそのことに気が付かない。


そんな茶番を演じる道化師なのだと。


でも本当は違った。


三月は初めから気付いていた。

道化に気付かない振りをして茶番を共に演じてくれていた。


けれど三月は僕が道化であることには気付いていたが、

何故道化を演じているかについては知らないはずだ。

知っているのは僕を含め四人だけ。


だから、三月はどうして僕がそうしているのかも知らないまま演じ続けていた。


それはきっと辛いことだったはずだ。



僕は三月のためにも知る必要がある。


そして三月に話さなければならないことがある。



「三月は…どうして何も僕に聞かなかったんだ…?」

そう、それが僕の一番の謎だった。


「七月がそう望んでいたからだ」

僕が…?



「七月は、誰にも知られることなく果たしたい何かが有ったのだろう?


だから私は、七月が話してもいいと思うまでは何も聞かないことにしたんだ」


驚きで言葉を失う。そこまで気付いていたことにもそうだが、

どうして、そこまで出来るのだろう?


そんな疑問が顔に出ていたのか三月は話し始めた

「なぜそうしたのか、簡単に言えば先程言ったこと。


つまり、君が好きだから。


もっと言えば好きな人を困らせたくないから、


信じていたいから、といったところかな」


誇るように言う三月に僕の顔の温度が上昇する。


「で、でも三月はよく五月と話してたし


すごく楽しそうだったし…」


僕はでも、それが信じられなくて反論をする



「五月と話してたのは七月の事を相談するため。


楽しそうに見えたのは…私も女の子なんだ。


大好きな七月といれば緊張ぐらいする。


本当はドキドキして、うまく笑えなかったんだ。」


頬を少し赤く染め照れたように言う三月。


まさか、そんな返しをされるとは思っていなかった僕は、顔だけでなく身体まで熱くなる。


ちょ、直球すぎるよ三月…



深呼吸をし心を落ち着ける。


ようやく、動悸が治まってきた僕は少し気になっていたことも聞いてみた。


つまりは


「あのさ、三月って途中からどんどん変になって行ったよね?


あれは、その、演技…なの?」


ということだ。今の三月と話しているとあの変態性はなりを潜め、面影もない。


だとすればあれが演技と言う事になる、というよりは僕としてはそう有ってほしい。



ただその場合、僕は三月にどれほど謝り倒しても足りないだろう。


火葬、土葬、水葬、鳥葬、果ては死体遺棄、と様々な葬儀を執り行ってきた僕。


よく考えなくても僕は一体何をしているんだろう…



「…あれは…その、私も女の子だしな、


好きな人といれば暴走くらいする」


三月はもじもじと恥ずかしそうに言う。


…つまりはあれが地ということですか?



「いや、誤解して欲しくはないが、いつもあんなことを考えている訳じゃないぞ。


七月といる時だけだから安心してくれ」


親指を立て太鼓判を押す三月。


って安心出来ねぇぇぇ!


なんだか質問して損した気分だ。知りたく無かったよ。


昔の少し意地悪だけど可愛らしい、あの三月ちゃんはどこに行ってしまったんだろう…?



「そうは言うが、七月の普段の私の扱いには疑問を覚えるのだが…」


やばい、そっちは何の弁解も出来ない。何とか話を逸らせないものか…



「縄で縛るまではすぐに許容出来たが、泉に沈められたり、


燃やされたりは慣れるまでが大変だったんだぞ」


少し怒った様に言う三月。返す言葉もない。


…というか、慣れるものなんだ。


「まったく、縄で縛った上、目隠しでアイアンメイデンの中に入れ、


泉に沈めるとは想像もしなかったよ。なんなのだ、あの快感は!」



……ん?



「だが、野外に放置され動物たちと戯れるのも中々良かった!


特に熊に噛みつかれた時と言ったらそれはもう!」



…やっぱり、僕のした事は間違ってなかった。変態にはお仕置きが必要だ。



「三月ちゃんの変態…」


呆れた目で三月を見ながら言ってやる。


「うぅっ!どうして、そんな時に限って昔の様に呼ぶんだ…


そんな風に言われたら傷つくじゃないか…」


傷付いた割には顔がちょっと嬉しそうだな。


呼び方に喜んでいるならいいけど・・・ひょっとして


今度は冷めた目でじっと見る。



「うぅ、いいじゃないかちょっとぐらい変態でも…」


どこが、ちょっとなんだよ。



「……てたくせに」


三月が小さく何かを言う。

しかし、その口調は普段と違っていた。

顔も俯いていてよく見えない


一体何だ?



「その変態に触られて」


???


「大っきくなってたくせに」


!!!な、なななななにをですか三月さん!?


「それはもちろん「わー!わー!」


なんとか三月の言葉に被せることに成功した。

何て事を言い出すんだ。まったく。


……そりゃあ、あれだけ密着してたら気付くよね。



「ふぅ。七月に復讐も済んだし、そろそろ本題に入らないか?」


そうだ、すっかり忘れてたけどそのためにここに来たんだ。


熱くなっていた顔が冷め、真剣な顔を作る。


「さて、話してもらおうか。


なぜ七月が五月の振りをしていたのかを」



僕が自分の口からこの事について話すのは三月で二人目だ。


僕は語る。


何故僕が五月になったのか。



その全ての始まりの話を。









またもや長くなりそうだったので途中での投稿です。すいません。

最近書いていて読者様がこの訳の分らない展開について来ているのかが不安です。

いきなり、伏線らしい伏線無しで「五月じゃない」発言。

・・・なんじゃそりゃ、ですね。


精進します・・・読者様、ありがとうございます。

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