第十六話 決意
今、僕は保健室のベッドで横になっている。
別に皆にボコボコにされ保健室送りにされたわけでなく、現在進行形で逃亡中だ。
その僕が何故保健室で悠々、楽にしているかと言うと、
現在は、保健医である 大塚 良恵(30代独身)が保健室にいない上に、内側から鍵を掛けているからだ。
十分程前、逃走中の僕が保健室の扉にかかった
(現在、留守にしております。帰りは遅くなるので、怪我人、病人は家に帰りましょう)
という腐れた札に気を惹かれ扉に手を掛けたところ、なんとなんの反発もなく扉が開いた。
どうやら鍵を掛けずに出かけたようだ。しめしめと中に入り鍵を掛ける僕。
年中飲んだくれてへべれけな行き遅れにしてはやるじゃないかと
心の中で称賛を送り安息の地を手に入れた僕。
今はとっくに予鈴も鳴り授業も始まっている時間だ。
真面目な剣野は皆をサボらせる訳が無いから今頃は教室にいるだろう。
そして、不真面目な僕はサボりを満喫しているという訳だ。
久しぶりの平穏を満喫していると、
外から扉が揺れるような音がした。
誰かが利用したいのだろうか?
ひょっとしたら急病人かもしれない。
先生はいないが休むくらいならできるだろう。
そう思った僕は扉の鍵を開け
そのまま扉が開いた
「やはり、ここにいたのか五月」
なんと、入ってきたのは三月だった。
「な、なんで三月がここに!?」
あの剣野がサボりを許容するはずが無いから鍵を開けたのに
今僕の目の前には三月がいる。
「ふふっ、不思議そうだな五月。だが簡単なことだ。
委員長はサボりは許さない、つまりサボりでなければ良いわけだ」
!そうか、仮病か!でもあの剣野が仮病を見抜けない筈が…
「何、ちょっとお腹に衝撃を加え吐血を演出したまでだ。大した事じゃない」
…十分大したことだろうが。
僕が呆れていると何故か距離を詰めてくる三月。
まさか…
「五月、二人っきりだな。そして保健室と言う場所。これがどういう事か分かるか?」
分かりたくは無いがこれまでの経験から三月がどういう行動に出るのか察した僕は、
武力行使に出ることに…
…でも、それでいいのか?
今は三月の言うような意味ではないが二人っきりだ。
そして、誰も来ないのであれば絶好の機会と言える。
そう、僕が今まで吐いていた嘘を三月に話す絶好の機会。
本当の事を打ち明けるチャンスなのだ。
もし今を逃せば、僕は話すことに二の足を踏んでしまうかもしれない。
…よし、決めた。
「ああ、分かったよ三月。…ねぇ三月、僕は君に聞いて欲しい大切なことが有るんだ」
真剣な表情を作り、声が震えてしまわないように気を付ける。
「…どうやら、茶化せる雰囲気ではないようだな」
三月も僕の真剣さを察し真面目に向き合う。
「僕は今までずっと三月に嘘を吐いていたんだ。三月は本当のことを知ったら僕を軽蔑するかもしれない…
でも、聞いて欲しいんだ」
どうしても言い訳がましくなりそうな僕を、心の中で叱責しながら言葉を紡いでいく。
…正直言うと怖くて堪らない。
ほんの少し前まではこの事は三月に言わず墓場まで持って行くつもりだったから。
本当の僕を知って、嫌われてしまうのが怖い。
でも、言わずになんていられない。
これまで、僕と言う存在を支えていた大切な人に嘘を吐きたくないから。
だから、言おう。
「三月僕は本当は」
声が震える。でも言葉を止めはしない。
君に真実を伝えるんだ。
またもや、長くなりそうだったので途中で投稿することにしました。なので少し短いです。
次の話は驚愕の真実と言うよりは、なんでそうなるのか分からないこじつけ臭い話になると思います。
伏線とか張れないので唐突です。言い訳です。すいません。
シリアスが続きそうなので読者様には面白くないかもしれませんが、一応読んでいただけると助かります。
これからも、よろしくお願いします。