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非日常は敵ですか?  作者: TS
第一部
2/40

第一話 狂妹

「ねぇ、三月みつき。君が好きだったのは七月ななつきだ。そして七月は……三月の大好きな七月は、君の目の前で―――


ジリリリリリリリッ!!目覚まし時計がけたたましく鳴る音。

僕はそれに対して音の鳴る方を全く見ず手刀を繰り出す。

何かが壊れる音。


―――時計は哀れにも残骸となり、ご臨終なさった。



あぁ……この痛ましくも悲しい事件は僕の心深く永遠に刻まれるだろう。




……まぁ、永遠に思い出すこともないだろうが。



などと寝惚けた頭でつらつらと考えながら、上体をゆっくりと引き起こす。



「ふむ……とても心地のいい目覚めだ。これでは心地よさの余り、そのまま破壊衝動に目覚めてしまいそうだ」


既に破壊行為に及んだことはそのあたりに放っておくとして、僕は先程まで見ていた夢の続きが大変気になっていた。

あの流れから行くと確実に七月とやらは見るも無残で哀れな格好で不思議な踊りでも踊らされたのだろう。

その大変面白おかしいシーンを8倍ズームのスーパースローカメラで拝みたかったのだが……


「残念だ」


正直どうでもいい。




「おはよー、お兄ちゃん!……ところで、何が残念なの?」


どこからか声が聞こえる。

首をめぐらせ声のした方を見ると、妹がベットの下から顔だけを出し不気味に笑っていた。

妹は鍵の掛ったこの部屋に、おそらく僕の目が覚める前からずっとそこにいたのだろう。



………将来が危ぶまれる。




「……あぁ、おはよう。一応言っておくがピッキングと盗み聞きと不法侵入は感心できないから止めておけ」


残念なのはお前の頭だ、とは流石に言わなかった僕を褒めてやりたい。



「えぇ〜自分の部屋に鍵掛けてるお兄ちゃんが悪いんだよぉ。大体備え付けの鍵だけじゃなくて、南京錠や

ダイアル式ロックを何個もつけられたら私もピッキングの腕を上げるしかないんだもん」


可愛らしく訳の分からない理屈をのたまうのは僕の妹の、春野はるの さくら


腰まで伸びた日の光の如く燦然と輝く金の髪。

雲ひとつない青空のように澄み切った青い瞳。

これこそが黄金律であると言わんばかりの見る者を魅了するスタイル。


そんな妹のご尊顔は一体どこの天界から降りていらっしゃった天使なんだよと言わざる得ない程であり、

街を歩けば、年齢問わず男はもちろんのこと、女性でさえも嫉妬することさえ叶わず見惚れてしまう。

妹が歩く道の両脇には頭を垂れた人々が列を成し傅き、中には涙を流しながら神の奇跡に更なる信仰を深める者や、

妹さんのおかげでこれまで散々だった人生に希望が持てました。(38歳・無職男性)といった意見も寄せられている。



……まぁ、一部誇張表現も混じっているが概ね事実であることをここに明言しておく。



―――だが、神とは残酷なものだ。その中身は見た目に反して歪みきっている。



みんなも天使が不気味な笑顔を浮かべながら、蛇のようにベットの下から這いずり出る光景を見れば分かってもらえると思う。

または、深夜にブリッジをした天使に階下から狂ったように笑いながら追いかけられれば、嫌でも分かってもらえるだろう。

顔面鼻血まみれの天使がホウキに跨り空から登場し、

匍匐前進(50mを6秒ジャスト)で町内を追いかけ回された僕としては、

どうしてこんな事になってしまったのだろう……?と、世界の理不尽さにいつも頭を悩まされるばかりだ。


なんて哀れな僕。



……まぁ、妹の事は一先ず置いておこう。

僕はこれから学校に行かなければならず、あまりのんびりしてもいられない。


妹に関わると無駄に時間を浪費してしまうと悟っている僕は、

窓を開け放ち妹の大好物、ビーフジャーキーをベランダから放り投げる。


ベランダからダイブする妹。


ここは2階だがあの妹なのでほぼ確実に無傷どころか地面に大打撃を加えているだろう。

妹はビーフジャーキーを食べる44秒間はその場から動かない。

だから、僕は妹が戻るその前に光速で着替えを済まし、リビングを目指し1階へと降りていく。



しかし、あと一段といったところで僕はそいつに出会ってしまった……






なんじゃこりゃ

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