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非日常は敵ですか?  作者: TS
第一部
19/40

第十四話 運命に抗う者達(後編)

 「せんぱいっ!」


身体が引き上げられる感覚。


先程までの夢の光景は消え去り、僕の目の前には泣きそうな依緒の姿。


苦笑が漏れる。守ると決意しておいて結局守られていたのは僕の方だった。


「…心配掛けてごめん…依緒。頼りない先輩でごめんな…」

僕の言葉に必死に首を振り否定する依緒。


「そ、そんなことありません!…先輩がいたから私も行こうって…そう思えたんです…


一人だったらとっくに逃げ出してました…私が頑張れてるとしたら、それは先輩のおかげなんです…」


…本当に情けないなぁ僕は。

自分を否定するってことは僕を信じてくれた依緒を裏切る行為だ。


そんな簡単なことにも気付けないなんて先輩失格だな。


「…僕が依緒の助けになれたのなら嬉しいよ。でもね依緒、僕も依緒に助けられたんだ。


偽りに捕らわれて、そのまま苦しみから逃げようとしていた僕を呼んでくれたよね。ありがとう依緒。


おかげで気付くことが出来たよ。僕は僕なんだって」



僕は僕自身の罪を贖うために一人で全てを解決しようとしていた。


だから、今まで僕は弱い自分を必要無いと切り捨てて考えていた。


必要なのは一人で生きていける強さだと考えていた。



でも、そんな弱い僕が依緒の支えになっていた。


知らないうちに依緒の救いになっていた。


偽りの世界にいる時に、僕は繋がった依緒のそんな想いを知り現実に戻りたいと思ったんだ。



弱くてもいいんだ。人は一人では生きてはいけないから。


必ずどこかで繋がっている。


僕の願いも、僕だけのものじゃない。



本当は不安だったのかもしれない。


願いが叶えばきっと、今の非日常は終わる。


僕はいつの間にか敵だと思っていた非日常が悪くないと思ってたんだ


このままいけばおそらく、非日常が終わると同時に多くのものを失ってしまう。



きっと僕だけじゃ、その結末は変わらない。変えられない。


そう、僕一人じゃ。



だから、話してみようと思った。


こんな僕を自分の世界の中に入れてくれた大切な人たちに。


拒絶されるかもしれない。


繋がっているなんて僕の勘違いかもしれない。


でも、何もしなければ変わらない。


今の願い以上の、最高のハッピーエンドを僕が望むのならば、


僕は一歩踏み出す必要があるんだ。





そのためには僕の想いを伝える必要がある。


まずは、僕を心配し助けてくれたかわいい後輩に伝えることから始めよう。



「…依緒。僕はね、とても傲慢で我が儘なんだ。だから、僕は絶対に自分の望みを叶えたい。


でも、その望みは僕一人じゃ叶えることが出来ないんだ。もっと多くの人達の力が必要なんだ。


だから、無茶を承知で言わせてもらう



…僕に力を貸してくれないか?依緒」


自分で言うのも何だが本当に無茶苦茶だな。


依緒も僕の言葉に呆れた顔をしている。



「…先輩。今更何を言ってるんですか?」


やっぱり呆れて



「先輩に力を貸すなんて当然じゃないですか。


それが先輩の望みだって言うのなら、断られたとしても力を貸しますよ。


まぁ、私の力なんて微々たるものですが…」



「そんなことない!僕を救ってくれたのは依緒なんだ!


依緒が力を貸してくれたら百人力どころか百万人力だよ!」


そうだ、僕は沢山の心強い人たちに支えられている。


きっと一人だったら非日常な毎日に押し潰されていた。


それが、どれほどの救いだったのかを依緒に伝えたい。



「そ、そうですか…なんだか今日の先輩は素直で戸惑っちゃいます…。


…でも先輩のお墨付きなら一安心です。私も、私を信じることにしてみます。


だから、先輩も自分を卑下しちゃ嫌ですよ?」


…どうやら僕の考えていることはお見通しだったようだ。


本当にこの後輩には敵う気がしない。


本当に、頼もしいかぎりだ。



そんな僕たちの後ろから何か重いものを引き摺るような音がした。


先程までは何も無かった空間に扉があった。


しかも、その扉は徐々に開いていっている。


扉の向こうに見えるのは、どうやら扉に入る前の場所のようだ。



「これは、外に出ろということなんですかね?


…結局何で開いたのかも分かりませんでしたね。先輩」

納得がいかず不満そうに言う依緒



「願いを叶える為じゃないか?」

それに対し僕は確信を持って言う。



「?」


「僕の願いは叶ったから」


今までの僕の願いは、責任から逃れるため願いにかこつけた、ただの言い訳だった。


でも、ここに来てそれを本当の願いに変えたくなった。



そのためにどうしても必要なものがあった。


僕が欲しかったのは、


ほんの少しの勇気。


大切な人たちに、本当の自分を曝け出す勇気が欲しかったんだ。



ここで、それを手に入れたうえ、大切な人と分かり合うことが出来た。


それはきっと願いが叶ったと言っても過言じゃない。


そのために、この扉は開かれたのだろう。


…少し自分に都合の良すぎる解釈かも。



これで終わった訳じゃないけれど


これからが大変なんだろうけれど


それでも心が浮き立つのを抑えきれない。



だからもう逃げたりはしない。




「行こう、依緒!」 「はいっ!先輩!」


互いに手を取り扉の外に足を踏み出す。



繋いだ手から温もりが伝わる。


その温かさは、ひだまりにいるようで


太陽みたいに僕の心も温めてくれる。


僕に大切なことを思い出させてくれる。


絶対に忘れちゃならない大切なことを。



僕が一人じゃないってことを。



僕にはそれだけで十分なんだ。それだけで。
















この小説の総表示回数が30000を超えました。・・・なんだか狐に化かされてるんじゃないかと不安になります。

ネガティブですいません。本当は滅茶苦茶嬉しいです。

正直ラブコメと聞いて来た人には大変申し訳ないです。次もシリアスっぽくなりそうなんでなんとかラブとコメを捻じり込みたいとは思っているんですが、如何せん第二話あたりで最後に訳の分らんことを書いたため、方向修正もままなりません。

なんとか、ラブコメを書いていきたいので、読んで下さる方々の期待に応えられるよう頑張っていきます。


長々とすいませんでした。

読者の皆々様ありがとうございます。

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