第九話 転校生な君
今朝は色々と有ったが無事学校に辿り着いた僕。
下駄箱で靴を履きかえ、教室を目指す。
ぼんやりと考え事をしながら階段を昇る僕の顔は、自然と俯いていく。
ふと、暗くなった気がして上を向く。
「千早…。おはよう…」
三階の廊下で待ち構えるように立っているのは千早だった。
僕が無事に登校している姿を見て、安堵したような表情を浮かべる。
千早は何も言わないがその心配そうな瞳を見るに僕の事を待っていたのだろう。
これは、大体一週程前から続いているため僕も驚いてはいない。
おそらく千早は、一週間前の出来事を気にしているのだろう。
今から丁度一週間前に僕と妹の鬼ごっこを目撃した千早は、
万策尽き、心折れそうな僕を守るように妹の前に立ちはだかった。
そのお蔭で僕は今こうしてここに立っていられるのだ。
千早には心の底からのお礼と、あの時見たことを誰にも言わないように懇願した。
千早は僕の身勝手な約束を守り、今でも誰にも話してはいないようだ。
そのかわり、毎日僕が無事に登校しているかを確認するようになった。
「千早、心配してくれるのは嬉しいが僕は大丈夫だから
そんなに気にしなくていいんだぞ?今はあの時のようなこともしてないしな」
千早を安心させようと笑顔で話しかける。
今言ったことは半分嘘であり、半分本当である。
今鬼ごっこをしていないのは本当だが、もうじき再開するだろう。
大丈夫というのは…僕に言い聞かせるためだ。
千早はおそらく、まだ納得してはいないだろうが、
僕が本当のことを言わないのを察したのだろう。
僕にしかわからないであろう、寂しそうな表情を浮かべ踵を返す。
そんな千早の背中に僕は心の中で感謝と謝罪の言葉をかけた。
教室に辿り着いた僕は真っ先に自分の席を目指す。
席についた後、僕が教室に入ってから感じていた視線の方を見る。
千早と眼が合う。色々な感情を押し込めた瞳は僕を責めているようで、
思わず僕の方から目を逸らしてしまった。
そのことに千早が傷ついているなんて知りもせずに…。
「ねぇねぇ五月君。知ってる?」
三十秒で三月処理を済ませた僕に話しかけてきたのは、うずうずした結だった。
「いきなり、知ってるかと聞かれてもな。はっ!これは知らない僕を馬鹿にして
いじめるための質問なんだな!結はなんて酷いんだ!」
「なんと!転校生が来るらしいよ!」
試しにボケてみたが完全にスルーされた。恥ずかしい…
・・・それにしても、転校生か。ひょっとして朝に合ったあいつじゃないだろうか。
お約束の展開としては使い古されているが、可能性としては無いでもない。
あの別れ方からすると、入ってきた転校生が僕を見て驚き、あっ!君は朝の!
とか言ったりする展開が予想される。問題は相手が男という点だな。
等と冗談を考えていると予鈴が鳴り、先生が入ってきた。
「あ〜、もう知っている奴もいるかもしれないが今日は転校生がいる。
それじゃあ、入ってきていいぞ」
ドアが開き現れたのはまさしく僕の冗談に当てはまる存在だった。
まさか実現するとは思わず、先生の説明も、転校生の自己紹介も耳に入ってこない。
「じゃあ、席はあそこにいる春野の隣だぞ」
転校生にざわつく教室を堂々と歩き僕の隣にやってくる。
何と言っていいかわからない僕に転校生が挨拶をする。
「ウホホ!」
転校生は完全無欠なゴリラだった。
確かに朝に出会ったけれど、何か違う気がする。
そもそも、僕とゴリラの仲はゴリニング・ゴリザード(通称G・G)をかました奴と
かまされただけの間柄だろうが。あれか、パンをくわえた少女とぶつかる的な展開だったのか?
というか僕の隣ってことはこいつ女だったのか。なら、手加減しておけば良かったな。
ん、でもヤンキー達はこいつを兄貴と呼んでた気がするんだが…気づいてないのか?
いや、それ以前に全裸はどうなんだよ。動物でも学校来るなら着衣は常識だろうが。
っておいっ!何、手で胸隠してんだよ!みてねーよ!いや、見たけど興味ないから!
何で教室の女子たちは僕を変態でも見るかのような冷たい視線を向けてんだよ!
「五月。見たいのなら私のをいくらでも見せてやるぞ?」
変態はだまってろ!教室内の僕への視線が男女共に悪化しただろうが!
「五月君は大きい方がいいの…?」
違うから!大きいの好きだけどゴリラは対象外だから!(必死)
って千早、そんな世界の終りみたいな顔で僕を見ないでくれ!変態じゃないから!
うわぁぁぁぁぁん!
視線に耐えきれず窓からダイブする僕。ってここ三階だったぁぁ!?
その後は、結の首と千早の触手で間一髪助かった僕の決死の弁解によりなんとかなった。
何で僕はゴリラよりすごい生命体達といるのにあそこまでうろたえたんだろう?
永遠の謎だな…
完
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「って、えええええええええええええぇぇぇぇぇ!?何終わらせようとしてるのさ!
ボクが一切出てないじゃないか!ってか八話のあの引きからいったら転校生はボクじゃないの!?
大体ゴリラがヒロインってなんだよ!別にボク男だしヒロインって柄じゃないけどゴリラはないよ!
それにゴリラがメスって伏線も全く無しでいきなりヒロインの座をかっ攫うのはどうかとおもうよ!?
あと、ゴリニング・ゴリザードってボクが言ったのって近かったんじゃん!やった!って喜んでる場合じゃないよ!
名前とかルビ振ってたし出すならちゃんとした役どころにしてよ!ひょっとしてって期待した人に土下座しろよ!
えっ、そんな人いない…?で、でも視点だってボクで丸々一話使ってたし、せっかく出したんなら、
使ってあげないと可哀想っていうか…。だって、だってボクも九話出れるんだってすごい楽しみだったし、
春野君になんて話しかけようとか、一緒にお弁当とか食べたりして仲良くしたかったのに…出番すらないなんて
・・・うっく、い、いっぱい・・かんがえて・・・た、たのしみで・・ひっく・・ぎたいじてだがら・・ぐすっ・・
こんだ・・ごんな・・あづかいっでじらなぐて・・・ひっく・・ボク・・ボク・・・・ふぁ・・・」
「…元気だせって。まだ、終った訳じゃないだろ?それに僕も要と仲良くしたいしさ」
「!!は、はるのぐうぅぅん!!う、う゛ん。い、いっばいながよぐじようねぇ!うわぁぁぁん
はるのぐん!はるのぐぅん!」
「……それでは十話でまたあいましょう」(どうしよう…泣きやまないどころか悪化してる…)
この小説のPV?(総表示回数?)が10000突破したみたいです。
こんな変な小説を読んでくださった読者様。本当に有難うございます。
今、同時で別の小説も投稿しているので、おそらく更新回数が一日二回程度になると思います。
出来る限り早く更新するため頑張っていきますので、今後もよろしくお願いします。