死してなおクズな男
想像以上に精神異常な感じに
シリアスメインにはしないつもりなのに。
好きな作品、アーティストをジャンル無差別に3つ挙げよ。
恐らく私は少し迷って、人間失格、school d○ys、EMI○○Mの3つを選ぶのだろう。
葉三は女に流された受動的なクズだし、誠は能動的なクズだとも言えるだろう。例のアーティストは、クズに対してとっても優しい世界を創造してくれているような気がする。そんな人たちが大好きなのだ。
私? 私は粉うことなきクズだ。
本命の女の子なんか作らずに、適当に話しかけまくる。男友達なんかそっちのけで女友達ばかり構う。しまいには嫌われ、軽薄なイメージから女の子にまで嫌われる。
人が陰口言ってる時には、黙ってるくせに、自分がイヤなことがあったときには平気な顔して言いふらす。罪悪感なんかこれっぽちも感じない。自分のポジション確立のために、そいつだけいない状況でハブるように仕向ける。無意識に。
高校時代はやりたい部活のために私立高校に通わしてもらっていて、すぐに部活を辞めてしまう。寮も寮監督の暴力に耐えきれず辞めた。一人暮らししながら塾にも通ったのに前期で落ちて、後期は大学にすら行かなかった。
高いお金を出してもらって、監獄みたいな予備校寮に入ったけど、他の人との価値観の相違でぶつかり、孤立。惰性で通う授業では、何も身に付かなかったらしく、現役とほとんど同じ結果のまま、三流大学に入る。
意思が弱い。そのくせ、原因を自分以外に責任転嫁しようとしている。
部活の先輩が……、顧問が……、寮監督が……、講師が……、あの人があんな事を言わなければ……
所詮、原因は全て自分にあると考えろ、なんて綺麗事吐けるのは、勝手に何もかも上手くいった人だけなんだよ。そうとすら思ってしまう。困難を乗り越えられなかった自分を見てみぬフリをして。
そんなクズだから、最近嫌気が差してきてたんだ。
人は変われないのか。
自分は一生このままなのか。
結局は何者にもなれずに死んでいくのか。
こんな人生なんて、生きながらにして……
強迫観念。自己嫌悪。
どうか神様。何でもいい、私の人生に、価値を与え給え……
笑ってしまうよな、こんなありきたりな人生なんて。
だけど神様は、最後の最後で私に微笑んでくれたらしい。
親に買ってもらったロードバイクに乗りながら、タバコを吸う。パトカーの呼び止めを無視したのは一週間ほど前だったか。左車線を走るなか、前方には信号が見える。赤に変わりそうだったので、スピードを上げたが、間に合わなさそうだ。制動距離を稼ごうと、青になった右折方向に向きを変える。
一瞬、虫の知らせというべきか。ふと今しがた走ってきた道を見る。
トラックが猛スピードで迫ってきていた。
何の事はない。ちょっと前方に進めばいい。
そう確認して、止めた。
視界の端に、トラックの前に躍り出ようとする少女の姿が見えたからだ。
美しい少女だった。人を愛して、人に愛されてきたのだろう。かつて私が望んだ生き方を彼女はしているのだろう。そう感じさせられる少女だった。
私はトラックの方に向き、ロードバイクのフレームを右足で蹴った。
少女の方に跳んだ私は、彼女の肩を精一杯突き飛ばした。後ろに人はいたし、怪我はしないだろう。
浮き上がったままの私の体は、トラックのボレーシュートをきめられる。
まあ、痛さも苦しさも、もうどうでも良かった。飛んでいくクズの肉塊は、英雄の肉塊で。
それすらも、どうでもよくて。
あの美しい少女が、度々私の事を想いながら苦しみ、私の一部になっていくことを考えると、愉悦で顔が歪むのを抑えきれなかったのだ。
がんばろ