1,プロローグ
初投稿です。
血と硝煙の臭いが立ちこめる空間、そこは多くの死体、もとは異形の怪物だったものが肉塊と化していた。またその最奥では、かなりの強度を誇るものが激しく打ち合う音、そして多くの発砲音が響いていた。
「ク”ッ”、まだ私はやられるわけにはいかないのだ! 全てはあのお方のために、イレギュラーである貴様らを必ずここで処分する!」
そこでは一人、いや一頭、一匹と数えた方が良いだろうか、辛うじて人型だと認識できるような見た目であり、鵺と呼ばれるべきである化け物が数人の男女と争っていた。
「寝言は寝て言うべきじゃないの、化け物さん! 『名取』!」
「ゴ”ホ”ッ”」
緑髪のツインテールの女性が言葉を刻むとともに、振られる刀、それに伴い生み出される衝撃波によって化け物をはじき飛ばした。
「ソーリュ! なにぼっとしてるの、そろそろ決めるよ!」
「あー、了解。ぼーとなんかしてないよ。 はい、うしろやめてー」
銀髪を後ろで結んだ女性が声を上げると後ろにいた彼女の仲間達が銃身を下げる。
「準備は、って聞かなくてもいいよね、イスズ!」
「誰に言ってるの、もちろんよ!」
「はいはーい、じゃ、ではでは〜」
『『五双龍!!!』』
その瞬間、先程会話していた2人の女性が消え、吹っ飛ばされて気を失っていたのか、ようやく立ち上がってきた化け物の前後に現れ、それと同時にふたりの蹴りが奴の腹に炸裂する。
「ゴ”ハ”ッ”」
現れては消え、現れては消え、常人では目で追えないような速度で彼女たちは舞う。拳、肘、膝、足、これでの攻撃は奴に押し込むようなカタチでの蹂躙が始まる。
その一撃、一撃ごとに化け物の体内の中から何かが砕けるような音が聞こえてくる、
頭、肩、腕、腹、足 次々と奴の部位が肉塊と姿を変えていく。
音がやみ、彼女たちが仲間のもとに足を下ろしたとき、化け物はいわゆるミンチになっていた。それに追い打ちをかけるように彼女の仲間達が発砲し、更にその残骸を破壊していった。
「おっし、おしまいかな!」
先程ソーリュと呼ばれた女性がそう言うと、
「みたいやな、いやーさすが嬢ちゃん達やわ、もうわいら、いらんかったちゃうんか〜」
と仲間である中年ほどの男性が声を上げる。
「ちょっと!ソーリュ! アナタまた2度目失敗したでしょ!何回言ったら解るの!」
「えー、イスズだって一発目タイミングずれてたしー、そのせいだしー」
「なにを〜、大体あんたが、スッテプワードこんなのにしてるから・・・」
熱くなったイスズが責め立て、ソーリュがのらりくらりとおちゃらけて返す。いつも通りの口喧嘩に仲間達はいつものことと諦め、失笑しながら帰還準備を始まる。この口喧嘩はその準備が終わるまで続いた。
「だからあイスズがさ〜「お二方もう帰りますよ〜、遅れた方がきょうの分、おごりですからね〜」もうちょっと、って、え!」
「お先!きょうのおごりは頼んだよ!私特大モンブランで!」
「あ、ちょ、待ってよイスズ!今月金欠だから無理だって〜〜」
このやりとりも毎度おなじみなのだろうか、彼女の仲間達はそれを微笑ましく見守る。
ドシュ
そののほほんとした空気に場違いな音が聞こえた。
「「「ソーリュ(さん)!(嬢ちゃん!)」」」
銀髪の女性、その胸には黒い柱が刺さっていた。
その後ろには先程まで肉塊だったはずの化け物が元の姿に戻り立っていた。
「ふむ、『最強』の片割れと言っても所詮は人間、と言ったところか。脆いな。だが我らが神も捧げ物には十分だろう。よい心臓を有り難う。ソーリュとやら。」
「なぜ貴様が!」
化け物の手には彼女の心臓が握られ、彼女の胸にはぽっかりと穴が空いていた。
「あー、イスズ、が泣い、てる、、めず、らし」
「あ、あんた、こんな時になに、倒れてるのよ、しかっりしなさい、よ」
ソーリュが震える手を挙げ、イスズがそれを取る。
「・・・い、い、すず・・」
「なに、どうしたの、どうしたのよ、何か言いなさいよ」
「きょうの、ぶん、おご、て、ね」
「っ、い、いくらでもおごってあげるから、挙げるからしっかりしなさいよ、あんたがいないとわたし・・」
「やく、そく、だ、よ、い、す」
言葉を言い切る前に彼女の手から力が抜けた。彼女に意識はそこで黒く塗り潰される。
それが『最強』の片割れ、双龍あおいの最後の時だった。
次の投稿は3月27日の予定です。
次は女神様とのご対面ですね。