32 メイドちょっと本気だす
「こ……こんなに傷ついて」
俺はキュクに抱き上げられた。
キュクがギュウギュウと抱き締めてくる。
「すみません。私が手を離したばかりに……」
キュクは涙を溢した。
それが俺の体に当たり体が癒されていく。
朦朧とした意識がクリアになってくる。
「うぅ……ロプス様……」
俺は大丈夫だから……気にするな……。
俺はキュクの頭へと頭を擦りつけ無事をアピールする。
「!!……良かった……」
「GRRRRRR」
水龍は突然の乱入者に驚いたものの再び水の槍を作りだした。
「GYAOOOOO」
地底湖を埋め尽くす程に増えた水の槍が俺たちへと殺到する。
キュクは俺を抱き上げたままゆるりと振り返った。
迫る水の槍を見据えると【屍鬼の腕】を出し薙ぐようにして振るった。
ドォンと槍の中で爆発が起こったかのようにして水の槍が爆発を起こした。
「無駄です」
キュクは指を水龍へと向け高らかに宣言する。
「これから始まるのは貴方の処刑ショーです」
水龍は怒りに燃えるようにその全身の青い鱗をギラギラと輝かせキュクを睨み据える。
「覚悟しろ蛇野郎」
キュクの【屍鬼の腕】にゾブゾブと大量の眼が生まれる。
「GOOOOOOOO」
水龍はその身をうねらせ尾を俺たちへと振り下ろす。
キュクは横にステップし尾を躱すと走り出していた。
水面に僅かな波紋を残しながら……水龍へと疾駆する。
水龍の眼が煌めくと尾によって叩き上げられた水が空中で動きを止め針のようになって背後から迫って来た。
キュクの【屍鬼の腕】の眼がギロリとそちらを睨みつける。
背から生やした左の【屍鬼の腕】が後ろへと向けられる。
「狂え」
腕にある眼が紅く輝いた。
迫っていた水の針はその形を崩し出鱈目な方向へと飛んでいく。
キュクは止まらず水龍へと走る。
「GYUOOOOOO」
水龍は口に溜めた水を吐き出す。
それは宙で回転し巨大なドリルのように円錐状になり飛んで来る。
「……フッ!!」
息を吐くと同時、キュクは赤く闘気の立ち上る【甲虫の腕】を出し横へと振るった。
ザッっと音を立て水のドリルは横に真っ二つとなった。
キュクは半分になったドリルの間を走る。
頭上と足元を半分になった水のドリルが抜けて行く。
ドリルの末尾から音を立てて跳び上がる。
水龍の驚いた顔が全面に広がる。
「GAA……」
豪!と空気を置き去りにして【屍鬼の腕】が放たれる。
「GYUUUUUUN」
轟音と共に水龍の頭が地底湖の壁へと叩きつけられた。
一瞬の空白の後……意識を取り戻した水龍は眼前の俺たちへと口を開け突っ込んでくる。
「GYAOOOOOO」
殴りつけた勢いのまま落ちていたキュクは水龍へと【屍鬼の腕】を再び向ける。
「貫け」
腕の【魔王の眼】から大量の『極光』が飛んでいき水龍へとぶち当たる。
「GAAAAAAAAAA」
水龍は全身から血を吹き出し貫かれながらも飛んで来る。
そして牙をキュクの【屍鬼の腕】へと突き立てた。
「クッ…………」
そのまま水龍は俺たちに噛みついたまま地底湖の壁へと自らの頭ごと叩きつける。
ドオオオォォと音がし壁の一部が崩落する。
土煙が立ち上り視界を塞ぐ。
視界が晴れると反対の噛まれていない【屍鬼の腕】を振りかぶるキュクがいた。
「GRRRRRR」
水龍は再び俺たちを叩きつける為に頭を振り上げた。
「ハアッ!!!」
キュクは姿勢を上手く制御し水龍を横から殴りつけた。
「GUOOOOOOONN」
水龍はたまらずキュクの【屍鬼の腕】を離し横へとよろめく。
「終わりです」
キュクは背中の方に『爆炎』を使い前方には『収束』を使い水龍へと疾風のごとく跳んで行く。
ボッと風の音がしたかと思うと水龍へと【屍鬼の腕】が叩きつけられていた!!
数瞬、水龍は仰け反ったかと思うと壁を砕き叩きつけられ動かなくなった。
「やれやれ大きいだけの蛇が腹立たしいものです」
俺はキュクの腕の中で呆然としていた。
あれ?この子俺より強くない?
【地底湖の主を討伐しました。
ボーナスが付与されます。
『経験値3万』となります】
俺たちは入って来た通路へと戻った。
するとキュクが俺を置いて立ち上がった。
「ロプス様少々お待ち下さい。ちょっとあの蛇バラバラにしてきます」
キュクがいい笑顔で言った。
いや、やめて差し上げなさい。
「ですが、こんなことになったのもアレのせいです」
キュクは口を尖らせている。
俺としてはアイツが住みかを汚されて怒るのは理解出来るのでそこまでする程じゃないと思うのだ。
何かキュクの気をそらす方法は無いだろうか?
そんなことよりしばらくここで休もうと思うんだ。
「では、その間に……」
久しぶりにもっと抱き締めたりしてくれないか?
「!!!……はい、ロプス様の命とあれば」
キュクは再び俺を抱き上げると座り込み撫でたり抱き締めたりを始めた。
さて、経験値を使って進化をするかな……。
「はい……ハムハム……」
抱き締めてとは言ったが甘噛みしたりしてくれとは言ってないんだが……まぁいいか。
【経験値34564
進化→
強化→
薬効生成→
完全ランダム→】
このメニュー久しぶりに見た気がするな……。
「…………」
キュクがメニューをジッと見ていた。
どうしたんだ?
「上上下下左右左右ABAABA」
いやそんなコマンドみたいな……。
【よくぞ見破ったわね。
誉めて上げるわ】
エエエエェェェェ何か出たあぁぁ。
【うらめにゅーが解放されました】
このメニュー裏技とかあったのか……。
【経験値34564
進化→
強化→
薬効生成→
完全ランダム→
うらめにゅーよ→】
時々システムっぽくない喋りの時があるな……いや、気にするまい。
【うらめにゅー↓
・超進化解放
・異色進化解放
・自己進化爆発
・メニューを進化させる
・伝説を始める
・死ぬ】
これは凄い。なんというかヒドイ。
メニューって進化するものなのか!?
あと……死ぬって……。
死ぬほど人生は悲観してないから、まだいらないんだけど。
「さぁ伝説を始めましょう」
そんなキリッとして言ってもやらないよ?
このメニューの選択肢はいつもロクなことが無いんだから……。
とりあえずメニューを進化させる。
【メニューが進化しました。
進化選択肢が変更されました。
強化選択肢が進化により消えました。
選択肢の説明が見れるようになりました】
ちょっと待ってください。
変更?消えた?
俺は急いでメニューを見直す。
【経験値29564
進化↓
・RANDOM
・眼がRANDOM
薬効生成↓
・触手からなんか分泌
・目からなんか分泌
・体からなんか分泌
完全ランダム↓
・完全ランダム(ランダム)
うらめにゅーよ→】
ああああぁぁぁぁぁぁぁ進化って言うか退化!!
退化してるよ!!!!!
「ビクッ」
キュクがビックリして甘噛みしていた口を離した。
【退化も進化です】
何か聞いたことあるセリフーー!!
やはりメニューに少しでも期待した俺がバカだったようだ。
れ……冷静に……冷静になろう。
【バーカバーカ】
うあああぁぁぁぁぁウゼエェェェェェ!!
もう騙されねぇ……絶対だ絶対にだ!!
「フラグですね」
とりあえず残りの選択肢は見るだけ見て保留にするか?
説明が見れるようになったのだけは進化と言えるだろうしな。
【・超進化解放
ありえないぐらい進化する。原型を留めるかは不明。
・異色進化解放
本来の生態系に無い進化をする。
・自己進化爆発
自己進化能力が爆発を起こし劇的に進化し始める。
・伝説を始める
伝説が今始まる。
・死ぬ
死ね】
ちょっ、最後、最後何だよ!!
説明じゃねぇ!
はぁはぁ……異色進化はアリかもしれないが……他は危険そうだな。
変わった選択肢も一応見とくか。
【進化↓
・RANDOM
ランダムデース イデンシトカ カナリイロイロアリマース】
何でこう、人の神経を逆撫でするようなさ……。
【完全ランダム
・完全ランダム(ランダム)
上のランダムよりもランダム性が高くレア度の高い進化先なども同じくらいの確率で含まれている。
ただし、現在体に無い器官なども含まれる為注意】
こっちはメッチャ丁寧だー!!
つまりRANDOMは今までの奴をまとめた進化先の選択で完全ランダムは謎の器官もある進化か……。
RANDOMから選んでみるか……。
【進化:獣セットを得ました。
進化:屍鬼セットを得ました。
進化:野菜セットを得ました。】
部位じゃなくセットになったのか……。
本当に全部あるんだな……腕、足、頭、胴体、目、あと尻尾か……。
獣があるからこれで普通っぽい生き物になれるな……屍鬼は今まで使っていて使いがても良かったし大当たりだろう。
あと、野菜……野菜か……俺食材になるルートでもあるのかな?
【経験値14564
進化→
強化→
薬効生成→
完全ランダム→】
一回5000とかセットだからか?
あとは目でいいか……いいのが来ますように。
【目:氷結の魔眼を得ました。
下位進化だったため統合されました。
目:光の魔眼を得ました。
下位進化だったため統合されました。
目:湾曲の魔眼を得ました。
下位進化だったため統合されました。】
全部意味がない……だと……。
【経験値8564】
あとは完全ランダムで……。
【ランダム:フェロモン発生器官を得ました。
ランダム:パラメーター閲覧(自分)を得ました】
思わず2、3度見直してしまった。
パラメーター閲覧ですよ?
やっと自分のスキルとか見れるのか……。
鑑定眼が欲しい欲しいと言いながら手に入らずここまで来たんだよな。
じゃあステータス閲覧!
【ロプス
目玉のん~?よくわかんない
生命力60000
魔力50000
状態:ドライアドの呪い
進化状態:
【甲虫の腕】【人の腕】【魚類の腕】【幽鬼の腕】【悪魔の腕】【亡者の腕】
【両生類の足】【魚類の足】【節足】
【超直感】【暗視】【魔力関知】【聴覚】【透視】
【スライムボディ】
【甲虫の頭】
【狂魔の眼】【魔王の眼】【時計仕掛けの眼】【理を解く眼】【異常の魔眼】【呪眼】
【獣セット】【屍鬼セット】【野菜セット】
【フェロモン発生器官】
部位増加:腕、足、目、
薬効生成
目:回復薬、麻薬、幻覚薬、
体:出汁、ヌルヌル、ヌメヌメ、ヌトヌト、
触手進化状態
部位:腕、足、感覚器官、
分泌物:媚薬(常時)、毒、劇毒、麻痺毒、酸、強酸、超媚薬、
メイドLVMax(10)分離、限界突破
称号
『ヌルヌル大好き』『魔眼コレクター』『ダンジョン踏破者』『ダンジョンの謎を追う者』『変態軌道』『生命の出汁』】
ん?スキルとかは?
パラメーターってこうSTRとかじゃないのか?
【すてあー:弱い
う゛ぁいたる:しぶとい
でっくす:手もないのに……
あじりてー:おそい
いんてり:アホ】
バカにしてんのか!!
【めんたる:つおい】
もうヤダ。
「アグアグ……ペロペロ……ムニムニ……」
俺はしばらくキュクに弄られながら休憩した。
強化した能力は隠しパラメーター等の扱いで存在しています。