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進化先の選択肢がおかしい件  作者: 紫扇
1章 目玉と触手と狂愛のダンジョン
13/65

13 男の話

  ヌルルルルルルル


 触手がこの狂ったダンジョンを滑りながら移動していく。

 のたうつ触手は波のように流れるようにダンジョンを滑っていく。

 やがて、一つの扉を見つけ二人は止まった。

 それは、錆びた鉄の扉である。

 【霊視】で見ると扉には多くの霊が張り付き怨嗟の声を上げている。


「それでは開けてみましょうか」


 俺達は手に入れた錆びた鉄の色の鍵を鍵穴へ差し込み扉を開いた。

 扉の前の霊が一斉に流れ込み部屋の天井を旋回しながら怨嗟の声を上げ続けていた。


『やぁ始めまして君たちならここまで来てくれると信じていたよ』


 そして、その中心に20代くらいの男がいた。

 男は透けており実体のない霊体であった。


「何者ですか?」


 キュクは警戒したまま話しかけた。


『しいて言うならば……このダンジョンに詳しい者かな』


 俺はこのダンジョンに入り始めてまともに話すことの出来る他人に出会い驚いていた。


『君たちにお願いがあるんだ』


 いきなり要求とは不躾な奴だ。


『おっと、勿論僕の願いを叶えてくれればお礼はするよ。それに今君たちが聞きたい事も答えよう』


 怪しい男だ。だが話くらいは聞くか。それに……。


『その顔はお願いを聞いてくれると取っていいね?』

「いいでしょう。一応、話を聞きましょう」

『ありがとう』


 叶えられるかは別だがな。


『僕の願いは彼女を……このダンジョンのダンジョンマスターを殺して欲しい』

「…………」

『簡単にはいかないだろう……だけど僕は彼女を止めなくちゃいけない』

「私達が来ることを知っていたと言いましたね」

『ああ、このダンジョンのことは何となく分かる』

「それならば私達にダンジョンマスターを倒す力が無いことは分かるのではないですか?」

『今は倒せないだけだろう?もし、お願いを聞いてくれるなら僕の生前貯めた経験値を君たちにわたそう』


 持ち逃げするとは思わないのか?

「私達が約束を守るとは限りませんが?」

『いいや、守るさ君たちも気づいているだろう?』


 ああ、薄々感じていた。

『「ここは中の者を出さないように作られている」』


 男はわかっているじゃないかと呟き肩を竦めた。

 そう、このダンジョンは始めからおかしかったのだ。

 入り口は通路と同じような模様で作られており、中の扉と部屋はランダムで入れ替わる。

 経験値を稼げないような作りのわりにオーク程度のモンスターが徘徊している。

 罠は奥に行くほど安全になり入り口に近い方が殺意に満ちている。奥にあるのは主に行動不能にするものばかりだ。

 入り口に近い所に強いものを持って行き奥に侵入させないものかと思ったが違う、それならば奥に行く度に罠が安全になるわけが無い。

 極めつけは小部屋だ。

 小部屋の道の分岐は入り口側に沢山あり奥に向かう道は1つか2つだ。

 つまり……。


「奥に居る者を出さないような作りになっている」

『正解』


 男は寂しそうな悲しそうな表情を浮かべていた。


『入り口の処理場は侵入者が最初と最後に辿りつく場所だ。そして、多くの部屋は……』

「牢獄」

『そのとおりさ。あれは彼女が許さなかった者の末路だ』


『君たちには聞く権利がある。ここで何があったのかを……ね』


 そして、男は語りだした。



 ここには昔ダンジョンがあった。

 それはどこにでもある普通のダンジョンだった。

 オークだけじゃないスライムやトロル、スケルトンにジャイアントバットなんて定番のモンスターがいるダンジョンだった。

 ある時1つのパーティがこのダンジョンへと挑んだ。

 パーティは少しは名の知れた冒険者達だった。

 パーティの者達は力を合わせダンジョンの猛攻を掻い潜り奥へと進んでいった。

 ダンジョンは予想以上に手強く深部へと近づくにつれモンスターは徐々に強くなっていった。

 だが、パーティのリーダーの男は力があった。

 それは、転生によるユニークスキルだった。


 そして、パーティは最深部へと辿りついた。

 そこには一人の女とこれまでのどのモンスターよりも強いモンスターで溢れていた。

 だが男と仲間達は女を倒した。

 女は死ぬという段階で言った。


「死にたくない。生まれ変わったのに良いことなんてなかった」


 そう言って泣いたのだ。

 その時男は理解した。

 この女は自分と同じ転生者であると。

 そして、男は女と話をした。

 仲間達はどうするのかと言ったが男には女を殺せなかった。

 男は仲間を説得し見逃してもらい自分は女の側に残った。

 男にはこの世界で一人ぼっちの女を見捨てられなかった。

 やがて女が恋に落ちるのは自然だったのだろう。

 穏やかな日が続いたある日、女は男へと自らの思いを打ち明けた。

 だが、男には既に心に決めた人……婚約者がいた。

 女はその事実を知り壊れた(・・・)。


 始めに男の婚約者をモンスターに拐わせた。

 男は何も知らないまま気が付いた時にはもう手遅れだった。

 その日の晩餐は男のよく知った肉だった。

 男は気づき激昂したがもう彼女は止まらなかった。

 元々男一人で彼女に勝ったわけではない。容易く女に捕まり部屋へと繋がれた。

 そのころ、男の婚約者が消えたことを知った仲間達は男の元へと急いだ。

 そして、男が不在のパーティーは徐々に疲弊しやがて死んでいった。

 男はそれを見ているだけで何も出来なかった。何も…出来なかったんだ。

 女はそれから男を逃がさないようダンジョンを変えていった。


 男は絶望し女の隙をつき死を選んだ。

 だが女は許さなかった。

 男の魂を縛り付け誰もダンジョン内から出られなくした。

 やがて女は侵入者にも憎悪を向けるようになった。

 中の良い男女を見つけては仲を引き裂き殺すようになった。もし恋仲でなくても強制的に距離を縮める仕掛けを施してまでね。


 男は全てを話終えるとこちらを見て言った。


『僕の願いを聞いてくれないか?』


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